友達をつくろう
「お茶会?」
「はい。午後からソルティ公爵家で行われます。子供たちの交流が目的ですから、堅苦しいものではありませんよ」
ローザによると、そういったお茶会は以前から時々行われており、フルール家にも招待状が届いていたのだが、当主である父がベルの体調不良を理由に全て断っていたらしい。はて、自分はいつから虚弱体質になったのだろう。
「お友達がたくさんできると良いですね」
リーナは嬉しそうだが、ベルは不安の方が大きかった。
友達ってどう作るんだっけ......。
学校の授業での関わりから友達になることはあったが、一から知らない人と友達になることは幼稚園以来だ。どうやって仲良くなるかなど記憶の彼方である。
「もっちー。どうすれば行かずに済むと思う?」
「病気ニナレバ?」
仮病じゃんそれ。嘘をつくのは罪悪感がある。そもそもなんで嫌なのかともっちは聞く。
「行っタラ死ヌ?」
「そういうわけじゃないけど」
それとはまた別の、歯医者や注射のような嫌さなのだ。よく考えると大したことないけど体が拒否しているというか。
「シャーナイナー」
にょきっと土から白い手が出てきた。え?これを触って癒されろって?つまんでぷにぷにしていると何をやっているのか、と呆れたように言われた。よく見ると手の先に何か持っている。指がないのにどうやって持っているのだろう。
「種?」
小豆程の大きさの黒い粒だ。
「魔力ヲ込メルト蔓ガ飛ビ出ス。襲ワレタトキニ使ウト良イ」
「お茶会で襲われることはないかな......」
どんなバトルロワイヤル茶会だ。
初めての外出だというのに気が重い。ベルは馬車に揺られながらため息をついた。
目的地へ着くと大人は離れた場所で見守り、ベルは完全に子供たちだけの空間に放り込まれた。会場となっている庭には、たくさんのお菓子が用意されたテーブルと、座って話ができるような丸いテーブル、椅子が設置されている。普段だったら色とりどりのお菓子に目を輝かせていたが、今は全く食欲が湧かない。
落ち着けそうな場所を探して歩いていると、楽しそうに会話していた女の子たちがベルを見るなり声をひそめてた。
「ねえ、あれ......」
「うわぁ、本の通りだわ」
どこかおかしいのだろうか。服装はきっちりチェックしてもらってから来たのに。
「ねえ、何か付いてる?」
声をかけてみると、取り繕ったような笑顔で否定する。
「いいえ!なんでもありませんわ!」
ねっ!と顔を見合わせて言うが、それが逆に何かあると証明している。座ってお話ししないかと誘われたが、好奇心むき出しの笑顔に気後れしてしまい、丁寧にお断りした。
なるべく人の居ないところへ向かって歩き、端の方で腰を下ろす。シロツメクサとクローバーがたくさん生えていて、大きな木が木陰をつくっている。ふう、と息を吐いた。ジェネレーションギャップだろうか。前世の記憶のせいで馴染めていないのか。
ごめんねリーナ。私には無理だよ。
少し休んだらまた誰かに話しかけてみるから、と心の中で言い訳して、シロツメクサを抜いては特に意味もなく編む。花冠が2つできあがったとき、目の前に人が立った
「おい、お前」
顔を上げると少年がいた。深緑色の髪と黄緑の瞳で、なんだか目に優しい人だな、と思った。ぽかんと見ていると、男の子は苛立たし気に眉を寄せて言う。
「聞いてるのか?ここでなにやってるんだ?」
「花冠作ってる」
「ふうん、一人で寂しい奴だな。俺が話し相手になってやろうか」
なんだか偉そうだ。思ったことをそのまま口にしてしまう。
「あなたも友達がいないの?」
「は、はあ?そんなわけないだろ。可哀想だと思って声かけてやったんだよ」
少年が顔を赤くしてそう言ったとき、ガサガサと後ろの生垣が揺れた。何だろうと振り向こうとした瞬間、腕に痛みを感じ、ものすごい力で引きずり込まれてしまった。




