決意
「卒業生答辞」
とアナウンスが告げられ蹴斗は壇上へと上がりこれまで散々練習してきた文章を読み上げる。そこには中学時代の振り返りと、周りへの感謝そして未来への決意が込められていた。
蹴斗は自身の中学校が大好きだった。クラスや学年のメンバーもいい奴らばっかりだったし、先生方も素敵な人ばかりであった。涙脆い方でもあったし卒業式で答辞をしたら涙が出てくるかと思っていたが不思議と悲しい感情は湧いてこなかった。理由は明確だった。蹴斗の胸の中はついに明日に控えた入寮のことでいっぱいだったのだ。
卒業式も終わりみんなが校門のあたりでわちゃわちゃして思い思いに同級生と過ごす最後の時を噛み締めている。蹴斗も流石に名残惜しく色んな友達と写真を撮ったり、思い出話に花を咲かせていた。話の途中ではあったが蹴斗は一旦みんなの元を離れた。それには理由があった。
(歩美に告白しなきゃ。)
蹴斗はクラスメイトの歩美のことが好きであった。歩美と出会ったのは中3の時。気持ちに気づいた時は歩美は受験真っ只中で邪魔をしてはいけないと思っていた。結局蹴斗は寮に入ることになり付き合うことは諦めたが最後に気持ちだけでも伝えなくてはと思っていた。しかしいざとなると声もかけられずにうじうじしていたのだ。
「蹴斗。最後にちょっと話さない?」
そんなこんなしていると歩美の方から声をかけられてしまった。近くの公園へ行くことになった。
「なんかさまだ卒業の実感わかないよね。蹴斗ともみんなとも明日から会えなくなるなんて信じれないなぁ。」
「最高の中学だったもんな。」
「まぁでも2人とも無事に第一志望に入れた事だし!未来は明るいね!蹴斗は明日からの寮生活緊張してる?」
「寮生活は緊張してるけど高校サッカーへのモチベーションはMAXでワクワクしまくってる。」
「ほんと蹴斗はサッカーのことしか考えてないよね。、」
「もちろん。3年間サッカーだけに捧げてくるから」
「蹴斗ならできる!応援してるからね!」
「任せとけ!」
「ふふっ。かっこいーじゃん。、
じゃあ私も力貸してあげる!手、だして?」
そう言って蹴斗が差し出した手のひらに手を重ねた
「はい私からのお守り!健康祈願だよ!本当怪我だけは気をつけて元気にね。無理はしないでね。あ、勝ち守りとかじゃないからサッカーは自分で頑張って笑」
「ありがとうめっちゃ嬉しい!ほんと歩美らしくて!こんなん頑張るしかないわ。むり上等だわ」
「そーゆーところが危なっかしいからお守りあげたんだよ笑笑
ところでさ、お返しにさ、その制服のボタン、、、もらってもいい?」
「え、ほんとに俺なんかのでいいの?」
「全部ついてて可愛そうだから貰ってあげるだけだから!」
「じゃあ交換って事で」
そう言って制服の第2ボタンを取り外し歩美に手渡す
「3年間でかっけー男になって帰ってくるから。」
「その頃には彼氏がいるかもね。」
「それでも振り向かせるくらいになるから。このお別れはちょっとの間だから。」
そういって2人は別れを噛みしめるように強く抱き合った。