四感
本を読むのが好きです。妄想も好きです。書いた事は初めてです。
魔女は言った。「これは流石に生きてはいないな。」
魔女は嗅いだ。「蝿も集りたがる異臭だな。」
魔女は舐めた。「材料にも出来ないな、無精な血だ。」
魔女は触れた。「痣が多いな、特に目が酷い、虐待か。」
魔女は見た。「動いた、少し動いた。この傷でまだ生きたがるか。」
魔女は聞いた。「最期になるかもしれぬ一言が『母』か。」
幼年は言った。「ここはどこ?」
幼年は嗅いだ。「いいにおい」
幼年は舐めた。「うぇっ ぺっ」
幼年は触れた。「こな、びん、なべ、ねばねば、なんだろ?」
幼年は聞いた。「おばさん、だれ?」
魔女は言った。「おばさんか、鍋より先にはらわたが煮えるぞ。」
魔女は嗅いだ。「血塗ろでも洗えばましな臭いになるな。」
魔女は舐めた。「これでよいか、ヒトでも食える味だろう。」
魔女は触れた。「目は諦めろ、深い、治らない傷だ。」
魔女は見た。「あちこち触れるな、どれも口に入ればあの世行きだぞ。」
魔女は聞いた。「名が無いか、同じだな。」
魔女は言った。「点字を振ってやる、本を読め、学べ。」
魔女は嗅いだ。「毒臭い、失敗だ、煮直せ。」
魔女は舐めた。「毒作りが趣味か?失敗だ、煮直せ。」
魔女は触れた。「粘る、喉につかえたらそれもまた毒だな、煮直せ。」
魔女は見た。「ましな色だ、色はな、まだ毒だ、煮直せ。」
魔女は聞いた。「ご褒美?よいぞ、あげよう、薬を作れたらな、毒だ、煮直せ。」
少年は言った。「僕も薬作りしてみたいです。」
少年は嗅いだ。「合ってるかな、本通りだけど、なんだけど、凄く臭い。」
少年は舐めた。「苦い、でも薬の味になって、うえぇっ」
少年は触れた。「凄く粘る、冷えたら固まる、塗り薬だったら良いのに。」
少年は聞いた。「初めての薬を作れたら、何かご褒美を貰ってもいいですか?」
魔女は言った。「約束だったな、とっておきのご褒美があるぞ。」
魔女は嗅いだ。「臭い鍋だ、嗅ぎ馴れた臭いだ。」
魔女は舐めた。「私の物とは違うな、易しい味だな。」
魔女は触れた。「痛くないか、触れてしか具合を確かめられないからな、良い形だな、きっと綺麗だ。」
魔女は聞いた。「これ以上のご褒美はあったか、まだ替えは効くぞ、きっと無いだろうが。」
青年は見た。「貴女も私と同じだったんだ。」
私は読む方が性に合うようです。