依頼
レーヴァとノエルはギルドの二階の一番奥の部屋にいた。そこはギルドマスターであるノエルの私室で、中にはたくさんの本や書物が置いてある。しかし散乱している様子はなく、きちんと整理されている。
「とりあえず座ってよ、コーヒーと紅茶どっちがいい?」
「……コーヒー」
ノエルはレーヴァに座るよう促し、コーヒーを注ぎ始める。
「こうやって面と向かって会話をするのは久しぶりだね、何か面白いことはあったかい?」
「なんだよ面白いことって……別にねーよ、それに会話をするのは久しぶりだがギルドカードを通してあれこれ命令してきたじゃねぇか」
「一方的な命令は会話とは全くの別物だからね。しかしレーヴァはいつ見ても一人でいるね……パーティー組んだりパートナーを作ったりはしないのか?」
「するしないじゃなく出来ねぇんだよ。わかってんだろ?俺が世間からなんて言われてるか。魔力なしのおっさんだのコネだけでAランクまで上がった卑怯者だの。俺はまだ三十歳だ、おっさんなんて歳じゃねえ。挙げ句にはノエルのヒモとか言われてんだぞ?そんなに悪評が多いこの街で俺とチーム組もうなんてもの好きはいねぇよ」
「まぁ確かにね……でもそれなら街を出ればいいんじゃないかな?」
ノエルは注いだコーヒーを一つレーヴァの前に差し出すとレーヴァの対面に座り、書類を一束取り出すとレーヴァへ手渡した。
「それが今日お前を呼び出した理由……国からギルドへの緊急依頼だ」
「緊急依頼だぁ?んなもん俺じゃなくてSランクを含めたパーティに行かせたほうがいいんじゃねのか?Aランクに向かわせて失敗でもしようもんならギルドの沽券にかかわるぞ?このギルドにSランクがいねぇならともかく、今の白銀の槍には三人もSランクがいるだろう?」
Sランクの冒険者は世界でも数少ない冒険者。Aランクはどのギルドにも一人は在籍していることが多いが、Sランクとなると一気に人数が減り、大きな国に五人、小さな国であれば一人いればいいほうである。今レーヴァがいるこの国"アルカス王国"では、世界最多の九人のSランクがいる。白銀の槍には三人もSランクが在籍しているという異常なギルドである。
「生憎、三人とも依頼遂行中だよ。しかも内二人はお前と同じ緊急依頼をね……」
「俺のも含めて緊急依頼が三件も……?どうなってやがる」
「今のところ関連性はなさそうだよ、一件は隣街の廃協会から魔物……それもアンデッドが大量に沸いて被害を出していてね。冒険者も複数人向かったらしいのだが消息不明だ……恐らくアンデッドを呼び出したナニかがいる」
「アンデッド……ということは向かったのは浄化の女神か?」
浄化の女神、光魔法のスペシャリストであり、光魔法の派生型でもある浄化魔法を得意とする女性の冒険者である。対アンデッドに対しては世界を探しても右に出る者はいないと言われている。
「その通りだよ。あとは"雷光"が海龍討伐に出ている……今日出たばかりだ、暫くは戻ってこない。それにお前に渡したその緊急依頼は"国がお前を指名した依頼"でもある」
「俺を指名した緊急依頼ってことは依頼人は……!?」
レーヴァは書類に目をやるとそこには依頼主"アルカス王国最高権力者 クラーク=ヴァンヘルム=アルカディアス"と金色の捺印がされていた。
「王もお前でなくては対応出来ないと踏んだんろう。その依頼はかなり特殊……迷宮攻略だ」
補足 Sランク冒険者について話が出ましたが、あくまで"冒険者"としての最高ランクがSランクです。
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