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星に願いを、運命に反逆を  作者: イスナ
魔を穿つもの
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冒険者 レーヴァ=トーラス








「おいおい、魔力無しの冒険者様じゃねぇか。今日はどんな依頼を受けに来たんだ?薬草採取ですか~?ハハハハッ!」


「ここは王都の中でも精鋭の冒険者が集まるギルド【白銀の槍】だってわかってんのかぁ?お前がいると俺らの評判まで下がるんだよ、さっさと辞めてくんねぇかなぁ!」


ギャハハハ、と品のない笑い声が聞こえてくる。

ギルド【白銀の槍】のエントランス。エントランスといっても受付の他にも食事ができるテーブルが幾つも並んでいて、昼間だというのに顔が赤くなり、呂律が回らなくなるまで酒を浴びている者たちが多く見受けられる。


カウンターへと、周りからの罵声などまるで気にせずに向かう三十歳前後男性は、布で包まれた長物を背負い、腰には二本の、それぞれ長さの違う刀を携えている。


「こんにちは、レーヴァさん。今日は依頼を?」


「あぁ、いや、今日は別の用事で来たんだ。ノエルさんに会いに来たんだけど……いるかな?」


レーヴァと呼ばれた男性は、そう答えながらポーチの中をゴソゴソと漁ると、一枚の銀色のカードを受付嬢へと手渡す。

受付嬢はそれを受けとると、確かにご本人ですねと業務的な会話をしてレーヴァにカードを返す。


「マスターにですね、分かりました。多分上にいると思いますが……確認を取りますので少し待っててもらってもいいですか?」


「その必要はないよ」


カウンターの奥から現れたのは群青色の長い髪を後ろで束ね、眠そうな目を擦りながらも清潔感のある白衣を羽織った長身の女性だった。


「久しぶりだなぁレーヴァ……薬草採取でも受けにきたのか?」


「薬草採取って……ノエルが呼び出したんだろう?そんなこと言ってると帰るが?」


「ハハッ、冗談だよ冗談。全く、堅苦しいねぇレーヴァは」


「堅苦しいもくそもあるか。前から言っているだろう、昼間のギルドには来たくないんだ。さっさと要件を済ませようぜ」


「はいはい、分かっているよ……」


ノエルはそこで話を区切り、レーヴァに背を向けると再びカウンターの奥の部屋へと入っていく。

そして、半身でレーヴァへ向き直ると、顎をクイッと動かす。

口で奥へ入れと言えばいいのに……と内心思いながらもレーヴァはノエルに着いていく。


レーヴァとノルンがいなくなったエントランスでは二人の会話が気になっていたのか、聞き耳をたてていた冒険者達がまたレーヴァについての悪口を肴にしながら酒に手を伸ばしている。


「ハッ、コネしか取り柄がねぇ魔力無しが、うまく取り入りやがって」「全くだ、あれでシルバーカード……Aクラスの冒険者だろ?コネだけで階級を上げて、いい年して恥ずかしくねぇのか?ハハハハッ!」「そこらへんにいるビギナーにすら下手したら勝てねぇだろ?それなのにシルバー持ってんだもんなぁ、俺らがアイツくらいのコネがあれば即ゴールド所持者だな!」「違いねぇな!」



再び下品な笑い声で辺りは包まれる。

それを聞いていたレーヴァを対応したカウンターの受付嬢は、無表情でカウンターにおいてあるペンを逆手に持ち、カウンターから出てテーブルへと向かおうとするが、別の受付嬢に手を捕まれ止められる。



「落ち着きなってシホ、シホが怒る理由もわかるけど私たちが冒険者に手を上げるのは原則禁止行為だよ?減給されたいの?」


「先輩、でも……!」


「あんたがレーヴァさんを尊敬しているのも知ってるけど、レーヴァさん本人が事を荒げたくないって言っているのよ。私たちがどうこう言って迷惑かけたらどうするのよ」



レーヴァがギルドに訪れる度にこの手の話題は必ず上がる。当の本人であるレーヴァが無視を貫いているため注意も何もしてはいないが、レーヴァをよく知る受付嬢達はこの手の話題を全く快く思っていない。



「それに確かにこの世界で魔法を使えないって相当なハンデよ?レーヴァさんをコネしかないと言う人の気持ちもわからなくはないわ」


「そんなこと……!」


「わかってる。レーヴァさんは強い、それも物凄く。でもそれは実際に戦ってる姿を見ないとわからない強さよ。口でいくら説明したって理解なんか出来やしないし」

それに、あんな昼間から飲んだくれてる阿呆どもに理解して欲しいとも思わない、と冷たい目線で冒険者達を一瞥する。



「シホ……仕事に戻るよ、いつまでも手を止めない」


そう言うと再びカウンターへ戻り作業を始める。シホは内心先輩の方がキレてるじゃん、と感じながらも業務を再開する。



(まぁでも確かに考えようよね……"飲んだくれてるヤツら全員でレーヴァさんに挑んでもどうせ勝つのはレーヴァさんだし"…レーヴァさんの強さを知って手のひらを返すコイツらが楽しみだわ)



先程までキレかけていたシホが不気味な笑みを浮かべると、カウンターへ並んだ冒険者がその表情にドン引きしながらもカードを手渡すのであった。



この欄では補足説明をしていきます。

冒険者にはランクがあります。上からS A B Cです。その下はビギナーと呼ばれるランクになっています。

ギルドカードの色によってランクが見分けられるようになっていて、上から金銀銅グレー白という別れかたをしています。金がSで白がビギナーです。

レーヴァは銀なのでAランクということですね。ちなみに受付嬢たちがレーヴァをかなり持ち上げている通り、レーヴァはかなり強い部類の人間です。しかし、最強かと言われると現時点ではそんなことはありません。同じ人間でももっと強い人間もいますし……人間以外の存在も出てきます。

間違ってもこの作品は俺TUEEEにはなりませんので、そこだけは明言させていただきます。

長々と失礼しました。

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