星が降る夜
初投稿です。
2月の下旬、寒空の中1つの生命が誕生しようとしていた。辺りは山に囲まれている小さな村。周りに医療施設もないこの山中では、一人の出産に村人の多くが集まり手伝いをしていた。
「くっ……うぅ……」
苦しそうな呻き声をあげる20台前半の女性。それを見ることしかできず、村の助産師に「邪魔よ!」と退かされる20台前半の男性。男性は筋骨隆々の体つきで素人目でも只者ではないことがわかる。
「お前さんは昔からこういうのは苦手だろう?確かにお前さんは冒険者としては凄腕さ。戦になれば一騎当千、迷宮に挑戦しては踏破の連続。聖戦にまでも参加し、逸話まで残した英雄さ。だからこそわかるだろう。自分が何を出来るかもわかってない新人が、やる気だけは満々で何かをしようとしていることの危険性が。ここは私たちに任せて大人しく待ってな!」
村の長である老婆に腹を小突かれ、男性はその身体に見合ず落ち込むが納得したようで、妻を心配そうな目をしながら邪魔にならない位置へ移動する。
そのやり取りを見ていた女性は「大丈夫だから…」と苦しそうにしながらも、笑みを浮かべる。
「あんたも!人に気遣ってる場合かい?今は自分と自分の子のことだけを考えな!ほら、もう頭まで見えてきたよ!」
その声を聞いて男性は「頑張れ、もう少しだから…!」と、涙目になりながら見守り、女性は必死に痛みに耐えた。そして…
「ほら、産まれたよ!男の子だ、元気な男の子だよ!ほら、げん…き…な…ッ!?」
「どうしたんですか、なにか…あったのですか…?」
女性は赤ちゃんを取り上げた老婆に尋ねるが、老婆は顔を青くした。そして、戸惑いながら、言い辛そうにしながらも女性へ伝える。
「泣いていない……息が……ない」
時が止まったように静まり返る。が、それも一瞬のことで、
「嘘だ…嘘だ!俺たちの子だぞ!?産まれてすぐに死ぬなんて、そんなことあるはずがない…!」
男性が赤ちゃんに駆け寄るが、泣いてはおらず、息もしていない。
「死なせてたまるか」と呟き、男性は赤ちゃんに手をかざし、
「慈愛の神の代行者として癒しと安らぎを求めるすべてのものに、癒しと安らぎをもたらさん。この世の全ての傷を癒し……」「なにをやっとるんじゃ馬鹿者!?」
男性が言葉を紡ぎ手に緑色の魔力を集めたところで老婆が男性から赤ちゃんを奪いとる。
「何するんだラグ婆!このままだと一つの命が、俺たちの子が死んでしまうんだぞ!?」
「何をするんだは私の台詞だ、テンパって魔法の基礎も忘れたのかい!?赤子は産まれたばかりでは魔力が身体のなかで循環しきれていない!故に生後一年は赤ん坊への魔法の行使は禁止されておる!今この子に回復魔法を、それもSクラスの魔法なんて行使しようものなら間違いなくこの子自身がお前さんの魔力に耐えきれず死んでしまうぞ!お前さんは自分の子を自分の手で殺したいのかい!」
「それじゃあ……どうすればいいんだよ!このままじゃあ……」
「……この状態からこの子を生き返らせるには時と空間を支配できるレベルの魔術師が必要さ。しかしそんなレベルの魔術師は世界を探しても数少ない。お前さんら……気の毒だが……」
最早救える手段はない。それを理解した男性と女性は嘘だ……と、認めたくないと思いながら赤ちゃんへと手を伸ばし、存在するかもわからない神へと祈りを捧げる。どうか、この子に生きて欲しいと。
その次の日、都は一つの話題で持ちきりになった。それは、昨晩、星がよく見える夜空より、一つの流れ星が幾つかに別れて地上に降り注いだという。一つは海へ、一つは離れた国へ、一つは城へ、そしてもう一つは英雄の故郷である山の村へ……
その星はまるで、意思を持っていたかのように、流れていったという。
そしてその日、山の村にて新たな生命が誕生したとの知らせが都にいる冒険者に知らせがあった。
出来る限り誤字脱字は訂正します。
1~2日で1ページ更新するようにしていけたらいいなと思っています。
未熟者ですが、よろしくお願いします。