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ガラスの中で夢をみる  作者: 七瀬優愛
第2章 書きかけの未来
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書きかけの未来(3)

 次の日、キッチンに行くと冷蔵庫に昨日まではなかったホワイトボードが2枚上下に貼ってあった。

 上のホワイトボードには、黒いペンで5人それぞれの名前と曜日、お風呂掃除当番、料理当番という文字がマジックで書かれていた。

 下のホワイトボードには『連絡事項』と青字で書いてあり、そこには綺麗な字で「アルちゃん 今週中にマグネットシートを買ってきて下さい。あと、食パンとジャムとマーガリン、インスタントのコーンスープもおねがいします。」と書いてあった。

 誰が書いたのだろう、と思いながらホワイトボードをじっと見てみる。

 書き方が柔らかい感じがするけど、もしかして前に当番制にする、しないの話題を出してきたギルだろうか?ライラやリアムはあの時部屋にいなかったからまずあり得ないだろうし、クレアは反対していたからこんなことをするとは思えない。

 そう考えるとやっぱりギルしかいない。

 そんなことを考えていると、突然後ろから「おはよう」と声をかけられた。びっくりしたノアが振り返ると、リアムがいた。

「おはよう・・・ございます」

 突然のことにびっくりして敬語で挨拶を返したノアにリアムは何も言わずににっこり笑いかけてきた。まるで、「大丈夫だよ」と言っているかのように。

「このボード見てたの?」

 リアムはホワイトボードの方を見ながら言った。

「朝起きたらこれが貼ってあったからなんだろうって思って」

「あー、これ書いたのは俺だよ」

「そうだったの?」

「うん。ギルに言われてね」

 リアムは当番表を確認すると、アルにもらって他のであろうベージュのエプロンに着替えて朝ご飯の準備をはじめた。

 ノアが黙って彼が料理をする姿を見ていると、彼は卵をわりながら言った。

「そういえば、ライラちゃんはもう起きてる?」

「いや、まだ。僕と違ってライラは朝に弱いから・・・」

 ノアがそう説明すると、リアムはクスッと笑うと言った。

「俺さ、2人はよく似てるなーって思ってたんだけど違うところもあるんだね」

「似てるって僕とライラが?」

「うん、似てると思う」

 そう言って作業に戻るリアムにノアは慌てて声をかけた。

「リアム、僕とライラが似てるところって例えばどこ?」

 ノアの質問にリアムは小さな声で「そうだなー」と呟くと少し間をおいて言った。

「同じようなタイプの子だなって思った」

「同じようなタイプ?」

 ノアが聞き返すと、リアムはフライパンを箸でかちゃかちゃ音を立てながら言った。

「初めて会った時、2人が双子の兄妹かと思った。仲良いし、息ぴったりな2人って感じがしてね」

「兄妹って言ったのリアムが初めてだよ。クレアやアルちゃんは僕達のことカップルだと思ったみたいだし」

「そう言う子がいるのも分かるかも。年齢からして付き合ってる子がいてもおかしくないしね」

 そう言ってリアムはお皿にスクランブルエッグをつぎだした。美味しそうな匂いのするふわっとした卵がお皿に注がれていく。

「僕は昔からこれが当たり前で女子は恋バナが好きなんだなくらいにしか思ってなかった。高校に通ってた頃も今も」

「自分にとって当たり前のことでも他の人から見たら少し違って見えることもあるよね」

 そう言ってリアムはインスタントのコーンスープをお椀にいれた。

「うん。僕もそうだと思う」

「でも、女子が恋バナ好きって言うのは当たってると思うよ」

 リアムが苦笑しながら言った。

「そうなの?」

 それを聞いてノアは少しびっくりした。ライラは自分の空想で“王子様”という言葉こそ出てくるけど、女子がしているような所謂恋バナといった話は全然してこない。

 ライラは不登校気味だったと言うのもあって、ノア以外の異性と関わること自体少なかったからそういう話をしてこないというのもあるのかもしれない。それか全然興味はないかのどっちかだ。

「あれ?ライラちゃんはそういう話はやらないの?」

「ライラ、不登校気味だったから他の同級生とあんまり関わりがなくて」

 そう言ってから「しまった」と思う。リアムは教育学部だから「不登校」なんて知ったら嫌な顔をするかもしれない。

 でも、リアムは何かを気にする様子もなく話を続けた。そんな彼の様子を見て、ノアはほっとする。やっぱりリアムは優しい。こういう人が学校の先生に向いているんじゃないか、とノアは思った。

「普段の会話とかは?」

「お城とかお姫様とかおとぎ話みたいな空想が中心です」

「ライラちゃんは本当におとぎ話が好きなんだね」

 リアムはクスクス笑いながらお皿にスープをついだ。

「よし、できた。じゃあノアくん、これリビングに持って行って」

「分かった」

 ノアはサラダとスクランブルエッグの入ったお皿の乗ったトレーをリアムはコーンスープの入ったトレーを持ってリビングへと向かった。

 その後も淡々と飲み物を運びみんなに「いただきます」と指揮を執るリアムは学校にいる先生そのものに見えた。

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