表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガラスの中で夢をみる  作者: 七瀬優愛
第3章 私の知らない母の恋
10/34

私の知らない母の恋(2)

 その日の当番はクレアだった。でも、あの様子だと夜ご飯まで降りて来そうになかった。

 いつものように自分がやると言うリアムを差し引いて今日はノアがライラと一緒に彼女の代わりに洗い物を片付けることにした。

「お皿洗いをしてると何か思い出さない?」

 キッチンにあったという新しいクマ型のスポンジでガラスの器を洗いながらライラが言う。

「その何かのヒントはある?」

「ノアが小さい頃読んでくれた絵本」

「もうちょっと」

「ガラスの器」

「シンデレラ?」

「大正解」

 ライラは嬉しそうに言うと、洗い終わった器をふきんで拭き始めた。

 ノアも器を拭こうとふきんをとろうと手を伸ばす。

 その時、不意にホワイトボードが目に入った。明日の当番はライラになっていた。

 ライラが当番の時は、料理が下手な彼女に変わってノアが作っていることが多い。一応、当番であるライラも作るが彼女の担当は野菜を切ったり料理を盛りつけたりするといった簡単なことが多かった。

 当番制にしたとは言ってもこの城で本当の意味で食事の準備をしているのはリアムかノアの2人だけだった。

「明日の晩御飯何がいい?」

「ステーキ」

「ステーキは難しいかな。ステーキ用の牛肉がないんだ」

 ライラがステーキがそんなに好きじゃないことは知っている。それなのにステーキと答える時はいつも空想の世界にいる時だ。

 仮にステーキを作ったとしても彼女がそれを食べる気がしないから僕は肉があるかどうかを確かめもせずに話を続けた。

「じゃあ、何があるの?」

「何があるかな」

 呟くように返して、冷蔵庫を開ける。冷蔵庫には、今日の晩御飯用の冷しゃぶの材料しか入っていなかった。

 朝ごはん用の食パンとカップ麺くらいならまだある。でも、そればかり食べるのは辛い。

 今日中にアルに買い物を頼んだ方が良さそうだ。

「何かあった?」

 台所の机で脚をぶらぶらしながらライラが言う。

「アルちゃんに頼まないと何も作れないよ」

 連絡用のホワイトボードを持って彼女の向かい側に座る。

「明日何か食べたい物ある?」

「冷やし中華」

「OK」

 ノアはスマートフォンで中華料理の材料を調べた。

 スマートフォンの画面で中華料理の材料を確認しながら書いていると、前に座っていたライラが身を乗り出して言った。

「明日のお昼ごはんは何なの?」

「明日はカップ麺くらいしかないよ」

「じゃあ、何か頼んだらいいと思うよ。カップ麺は非常食として残しときたいもん」

「それもそうだね」

 晩御飯の中華料理とは別にお昼ご飯をホワイトボードに材料を書いていると後ろから誰かにトントンと肩を叩かれた。

 前に座っているライラ「あっ」という表情をする。振り向くと、そこにはあの夜に会ったきりのアルが立っていた。

 最初に会った時と同じ服装をしているが、今日はフードをかぶっていない。フードを被っていないだけで敵か味方か分からない彼女に少し親近感を感じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ