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幽霊の幽子には、記憶が無いみたい。名前すら覚えてないみたいだから、とりあえず幽子とあだ名をつけた。

「ユーコ?なんか、しっくり来るね~!」

本人はそのあだ名が気に入ったらしい。


私いつの間に幽霊が見えるようになったんだろう?いやいや、あり得ない!あり得ないから!!


あり得ないと言えば…………あり得ない男に、鍵を持ち逃げされた時の事をまた思い出した。


辺りはもう暗くて、車のブレーキランプが忙しく並んでいるのが見えた。


大きな通りの赤信号が青に変わると、男は私を置いて歩き始めた。


道路に一斉に人が流れ込んだ。たくさんの人がこっちの方に向かって歩いて来た。人の流れをかき分けながら、男の後ろ姿に叫んだ。


「ちょっと待って!ねぇ、私みたいな人って言うけど、私の何を知ってるの?」


すると、男は足を止めて言った。


「知らない。」

「はぁ?知らないのに、決めつけたの?そんなのおかしいでしょ?」


その鍵だって、自分の物だって決めつけるのも早すぎない?


男はそのまま、一度も振り返る事無く、歩き続けた。


そもそも、あの一瞬で本当に自分の物かどうかわかったの?私は正直、全然わからなかった。今でも自信がない。


それでも、あの男を追う足が止まる事はなかった。


結局、私は男の部屋の前までついて来てしまった。


「本当にしつこいな。ストーカーにでもなるつもりかよ?」

「ここで、本当にその鍵が私の物じゃない事を確認させてもらう。」

別に、この鍵が自分の物だって言い張るために、ここまでついて来た訳じゃない。


ただ、この頭のオカシイ男に納得がいかなかった。


「OK!じゃあ、it's showtime!と行きますか?」


男が鍵穴に鍵をしっかり差し込むと、ガチャリと鍵を回した。


本当に…………開いた。


当然と言えば、至極当然の事だと思う。自分の鍵かどうか判断するのに、私はキーホルダーしか見ていなかった。よく見たら、鍵の形が全然違う。


私の顔を見て、あいつは鼻で笑った。ムカつく!!非常識な事しといて、他人の事を笑うなんて!


「いいね~!その顔。」

「はぁ?」

私の悔しがる顔を見て、男は嬉しそうな顔をしていた。性格悪っ!


「まぁ、立ち話も何だし、中でお茶でもどう?」

ドアを全開に開けると、男は中に入るように促した。


ここで入るほど私はバカじゃない。それを察した男はドアを閉めて言った。

「はい、じゃあ、イタズラはここでおしまい。これでやっとスカッとした!」

「スカッとした!?」

それってもしかして、意図的に嫌がらせしてたって事?

「どうして?そんな事される理由なんてない!!」


男は少しイラついて反論した。

「じゃあ言うけど、何も知らないのに、先に決めつけたのはそっちの方。」

「はぁ?」


今日が初対面なのに、こっちが決めつけたってどうゆう事?


「覚えがない?まぁ、覚えて無いからここまで来たんだろうね。ちゃんと理由が知りたかったら、ま、中でゆっくりしてってよ。」


これは…………罠だ。絶対に中に入ってはいけない。そう思っていたのに……。


「安心してよ。あんたみたいな人、好みじゃないから。」


それで安心できたら警察いらない。でも、そう言われると何だか悔しい。


こうゆう時に、頭に血が上るクセが、自分の悪い所だってわかってる。挑発に乗っちゃいけない。冷静になろう。冷静に。冷静に…………


男は腕を組んで、ドアに寄りかかってため息をついた。

「まぁ、じゃあここでいいや。あんた、俺の鞄にぶつかって、俺みたいな人は全然気にしないでしょ。そう言ったんだ。」


そんな事を言った覚えが全然ない。


「いつ?どこで?」

「多分入学してすぐの学食。俺だって普通の人間だし、普通の男だし、まぁ、もう子供じゃないから、別に根に持ってる訳じゃないけど…………」

「はぁ?どこが子供じゃないの?こんな子供じみた事やっといて、これで復讐のつもり?」


私が声をあげると、男は慌てて私に落ちつくように言った。

「声が大きい。だから復讐なんてそんな大したものじゃないって。ちょっとしたイタズラだよ。本物の鍵だってほら…………」

そう言って男はポケットに手を入れた。


なんだ……。良かった!やっぱりあの鍵は私の鍵だったんだ!


「…………あれ?」

「え?ちょっと待って?まさか……」

男はポケットに手を入れたまま、固まってしまった。男はあちこち探して、薄ら笑いでこっちを見た。


男の様子があきらかにおかしい。嫌な予感…………


「ごめん……。マジで落とした。」

「はぁ!?どうすんの!?私、どこ行けばいいの!?管理人さんが次に来るのは火曜なのに!」


最っ悪!!


「実家は?実家は遠い?」

「バカじゃないの!?鍵を落としたなんて事がパパに知られたら、即、強制送還だよ!!」

「密入国者かよ!」


最っ低!!


最低なのは私だ。その罠に、まんまとかかって、中に入ってしまったんだから。


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