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幽霊




外に出て、一旦冷静になった。


鞄を無くしたなら、交番に届いてないか聞いてみよう。確か駅前に交番があったはず……。


外に出ると、春の風が気持ちいい。昼前の日差しが強くて、少し汗ばむ陽気だ。


こんな事なら半袖を着て来れば良かった。ちらほら半袖の人も見かけてそう思った。


歩きながら、少し不思議な気分になった。この辺は初めてなのに、初めてな気がしない。多分この街並みが、どこか懐かしい感じなのかもしれない。


もっと不思議だったのは…………桜はすっかり花を落としていて、青々とした葉がついていた。昨日はあんなに満開だったのに、1日でこんなに緑になる……?まるで浦島太郎な気分。


昨日のあれはやっぱり星だったのかな?


交番の前に着くと、戸は閉まっていた。交番の中を覗くと、誰もいなかった。仕方がない。また来よう。


結局無駄足になってしまった。


私はブラブラ歩いて元来た道を戻り始めた。ちょうど交差点に差し掛かった時に、赤信号で止まった。


信号待ちをしている最中に、ふと横を見ると…………座り込んで電柱に寄りかかっている人がいた。具合が悪いのかな?行きにこんな人いたっけ?


ショートヘアの…………恐らく歳上の、女の人?


「大丈夫ですか?」


私は少し遠くから声をかけた。すると、大きな声で怒鳴られた。


「大丈夫かって?見ればわかるでしょ!?大丈夫じゃないに決まってるでしょ!?」


こ、怖…………。


昼間なのに……酔っぱらい?どこかでお花見でもして、友達とはぐれたのかな?


すると、座り込んだその人が頭をあげると、ふと目があってしまった。


あ、ヤバ……目が合っちゃった。私は少し微笑んで誤魔化した。


赤信号が青に変わると、信号待ちをしていた人達が一斉に歩き出した。私も歩き出そうとすると、突然引き止められた。


「待って!ちょっと待ってください!」

振り返ると、さっき目の合った人が私を呼んでいた。


「あ、あの…………ちょっと…………」

「あなた、私の事見えますよね?声が聞こえますよね?」

「え?は、はぁ?!」


この人は何言ってるんだろう?私、目悪くないから普通に見えるけど?やっぱり、酔っぱらってるのかな?


関わっちゃいけない、放って置いて行こう。

「あの、私、行く所があるんで……。」


本当は行く所なんて無いけど、青信号がチカチカしていた。

「待って!私、ここでずっと待ってたんです!私が見える人はたまにいるんです。でも、話は聞いてくれない。私に微笑みかけてくれたのは、あなただけなんです!……あなた……だけ……」


そう言って、その人は泣き出してしまった。私は捕まれた腕を振り払えず、立ち尽くしてしまった。


そんなやり取りをしていたら、点滅していた青信号が、完全に赤信号に変わってしまった。


「お願いします!私の話を聞いてください!」


この人泣き上戸?そりゃ、酔っぱらいの話聞くなんて、そんな暇な人いないでしょ?


私はため息をついて言った。

「じゃあ、思い出してみて。最後はどこで飲んでたの?」

「いえ、私は飲んでませんよ!飲んで運転なんてしません!」

「運転…………?」


確かに、この人からお酒の匂いはしない。

「運転していて、事故を起こした所までは覚えているんです。」


え……?事故…………?


それで、私の事が見えますよね……?それって…………


「もしかして幽霊?あ、でも私、霊感とかないから。他の人が見えないものが、特別に見えたりとかしないから。」

昔から心霊現象の類とは、からっきし縁がなかった。縁もなければ興味もない。


そうは言っても…………この人、全然幽霊に見えない。だって、顔色もいいし、足もちゃんとある。


「私なんかより、有能な霊能力者を探した方がいいよ。じゃあね!」

赤信号が青に変わると、私は幽霊を置いて横断歩道を渡った。


幽霊なら尚更私には何もできない。


「だから待ってくださいよ~!」

うわっ…………ついて来た!幽霊は私の後をずっとついて来た。


「ちょっと!取りつかないでもらえる?」

「取りついてないですよ!キングボンビー扱い止めてください!」

「してないから!キングボンビーって何?」


横断歩道を渡っていると、幽霊が喚きながらついて来た。


「知らないんですか?桃鉄ですよ!桃鉄!!」

いや、だから、それも知らないし。


「さっきからあなた、私の事、酔っぱらいだの、幽霊だの、キングボンビーだの、金魚のふんだの、失礼ですよ!」

後半ほとんどでっち上げ。


「能力者なのに、どうして無視するんですか!?」

能力者!?って……何?それ、私の事?


「だって、私が幽霊なら、私が見えるんですよ?隠れ霊能力者じゃないんですか?」

「隠れてもないし、霊能力者でもない。ついて来ないで。」

ただでさえ記憶が無くて混乱してるのに、これ以上の厄介事はマジで拒否。


何だか、変な人につきまとわれちゃったなぁ……。これじゃ隼人の部屋に戻れない。あ、そっか!隼人の部屋に戻るなら…………


名案を思い付いた。


「私、これから彼氏の所に帰るから!じゃ!」


一度でいいからこの台詞言って見たかった~!!


まぁ、いくら強引な幽霊でも、これならついて来ないよね?


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