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気がつくと、そこは真っ暗な闇の中だった。私、今どこにいるの?


暗い闇の中に、一筋の光が見えた。


導かれるように光の方へ行くと、薄暗い寝室に小さな灯りが見えた。そこにはアロマキャンドルが1つ、枕元に置いてあった。


このアロマキャンドル、何だか見覚えがある。隼人の誕生日に私がプレゼントした物と似てる……。


そんな事を考えていると、その薄暗い寝室に、1人の男の人の姿がある事に気がついた。


その灯りに照らされながら、その人は力無く床に座り、ベッドを背に寄りかかっていた。何だか、ひどく疲れている様子に見えた。


しばらくすると、男の人は項垂れていた頭をあげて、ベッドに頭を乗せると、目をこすりながら天井仰いだ。


その顔を見ると、すぐに誰だかわかった。その痩せた女顔…………


「隼人…………?」


私が声をかけると、隼人は慌てて頬の涙を拭って、周りを見回した。


「誰? 」


その声で確信に変わった。やっぱり隼人だ。

「うわぁ~隼人、久しぶりだね~!」

「…………梨理?本当に……梨理?」


そっか。私、梨理って名前だっけ。そんな事も忘れてた。

「ねぇ、隼人…………隼人はどうして泣いてたの?」

「それは…………梨理が…………」

「私が?」


その後、隼人は何も言わなかった。何も言わず、部屋を出て行ってしまった。


結局その時は、その涙の理由は教えてもらえなかった。


隼人、どこへ行ったんだろう?隼人が隣の部屋へ行くと、部屋の明かりがついた。照明に照されて現れた部屋はとても殺風景な部屋だった。部屋の真ん中には一組のテーブルと椅子。その向こうには小さなシンクと、IHコンロのある狭いキッチン。


でも、隼人の姿はそこにはなかった。


あれ?


私が隼人の姿を探そうとすると、すぐに水の流れる音が聞こえてきた。洗面所かな?ジャバジャバ顔を洗う音がして、しばらくして水が止まった。私が音の方へ行くと、洗面所で隼人がタオルで顔を拭いていた。


隼人の姿を見て思った。もしかして、隼人なら冗談で私の事リリーとか言うかな?でも、悲しいけど…………今までの経験上、隼人は私にそんな事を今まで言った試しがない。正直、隼人から甘い言葉が出る気が全然しない。


『梨理は食べてる時が一番幸せそうだね。』とは言われた事はあるけど、花のようだねと言われた事は一度もない。


『いい匂いがするね。』と言われた事はあるけど、その後すぐに『いい匂い、あ、ナポリタンの匂いだ!』と言って落とされる。


『梨理のクッキーは固くて甘くないから犬のおやつにちょうどいいね。』とか…………ダメだ。これ以上思いだし始めたら止まらなくなりそう。


隼人の暴言…………天然語録で本一冊書けそうなくらいある。その1つ1つが、隼人との大切な思い出だった。それを思い出すと、この10年の記憶が甦って来るようだった。


そう思うと…………隼人が泣いているのはただ事じゃない。


この年になって涙といえば…………失恋!?失恋なら詳しく知りたい!!誰の事が好きだったのか、誰にどんな理由でフラれたのか。


ねぇ、隼人、その涙の理由を教えてよ。


だって私、ずっとずっと、隼人の事が好きだったんだもん。今だって…………


今でも本当に好きかどうか、よくはわからないけど…………多分きっと、私10年前の夏から、今でも変わらず隼人の事が好きなんだと思う。


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