後悔
13
私はしばらく、自分の遺影を眺めて、呆然とした。
だから隼人は…………会いに行っちゃいけないって言ってたんだ。隼人の体で、礼於の前に現れてはいけない。それは、私が死んだはずの人間だから。
それに、私には今さら礼於に会う資格なんかない。
礼於に最後に会った時…………隼人の事が原因で、喧嘩別れした事を思い出した。
礼於は一足先に大学院を卒業して、就職した。礼於が社会人になったからと言って、私達の関係がどうなる事はなく、やがて私も卒業して、就職した。
その後、28歳の誕生日にプロポーズされた。
この先の未来が永遠に、光輝く事が約束されたみたいだった。ありきたりに『結婚しよう。』その言葉が、それくらい嬉しかった。
お互い忙しい時間を過ごしても、すれ違っても、お互いを想い合う事は変わらなかった。
その8年もの時間が、私の心ない一言で、突然陰りを見せた。
その日は久しぶり時間が空いた礼於と、カフェで会った。
「そうだ、真理ちゃんの入学祝い何がいいと思う?」
「真理?もう1人妹いたっけ?」
「隼人の妹。」
隼人の名前を出すと、礼於は少し嫌な顔をした。隼人の事は、珍しく嫉妬してくれる。それが嬉しくて、意地悪く私は続けた。
「ニャニャンのキーホルダーくれた子だよ?」
「聞いた。」
「私の宝物だったのにな~ 誰かさんになくされちゃったんだよね~」
礼於は素知らぬ顔でコーヒーを飲んでいた。
「いつの話だよ?」
冗談のつもりだった。
「私、真理ちゃんと本当の姉妹になるって約束したのにな~」
いつの間にか、こんな風に他の人と結婚するとは思ってもみなかった。
そう思っていたら…………
「そいつの事…………まだ、好き?昔、諦められないって言ってたよな?」
「あはははは!いつの話?」
でも、それが私の正直な答えだった。
「隼人の事は一生諦められないんだと思う。」
わかってくれてると思ってた。
「あ、隼人……。」
一瞬、カフェの外に隼人の姿が見えて私は外の方を見た。
「話をすればなんとやら~かもね~」
礼於は、不安になったりなんかしない。そう、思ってた。
「まぁ、こんな所で偶然会えたら奇跡感じちゃうよね~」
「悪かったな。俺は奇跡とかじゃなくて。」
礼於は急に立ち上がって、コーヒーの紙カップをぐしゃぐしゃにして、ゴミ箱に捨ててそのまま外に出て行ってしまった。
「あ!ちょっと待って!」
私は慌てて礼於を追いかけた。
「ごめん!ごめんって!冗談だって!!」
ちょっと、挑発し過ぎちゃった?
その時は、それぐらいにしか思っていなかった。
でも今なら、何となくわかる。好きな人が誰を想っているのか、それが自分なのか自分じゃないのか……。
礼於はきっと、相手に…………私に自分が隼人より想われているのか、不安だったんだ……。
それは、その不安は……隼人を好きになって、嫌というほどその気持ちを感じてた。なのに、どうしていつの間に忘れてたんだろう?
どうして私は…………礼於の気持ちに、気がつかなかったんだろう?
その後ろ姿が、礼於を最後に見た姿だった。
どうして…………どうして涙が溢れるんだろう。
自分の遺影の前で泣き崩れた。
遺影の前には、小さなダイヤのついた指輪が、箱に収まって寂しく置かれていた。
ねぇ…………礼於、この涙の理由を教えて。
これは、後悔?




