理由
12
隼人のあの様子、嫉妬?あの隼人が嫉妬!?いやいや、そんな訳がない。
それは、私が服を探して部屋をうろうろしていると、隼人が訊いてきた。
「どうしたの?」
「昨日の服は?」
「…………洗濯……!洗濯機に入れちゃったよ。」
そっか…………それじゃ仕方がない。
「なーんだ。礼於に会いに行くのに昨日の服、また借りようと思ってたのに。」
「あの服は…………似合わないよ。」
「そっか…………じゃ、別の服借りて来てよ。」
私がそう言っても、隼人はいいよ。とは言ってくれなかった。だったらこのままでいい。このままでも会いに行く!!
「どこ行くの?」
私が玄関を出ようとすると、隼人に止められた。
「礼於に会いに行く。」
礼於に会いに行って確かめたかった。今、私の事をどう思っているのか…………
「ダメだよ!!」
「どうして?」
「どうしても!!…………とにかく、今日は休もう。」
そう言って、隼人は1つしかないベッドで眠った。どうしたんだろう?いつもは大きな声なんか出したりしないのに。大丈夫かな?隼人、何だか疲れてるみたいだけど…………
でも、隼人の事は心配だけど、だけど…………
礼於に逢いたい……。
「それでも行くんだ……。」
私が着替えていると、幽子がそう言って雑誌を閉じた。
結局、クローゼットの中にあった隼人の服を借りた。ボーイッシュな格好だけど、実家に行って瑠璃に服を借りればいいよね。
私が鏡で全身のチェックをしていたら、幽子がそれを見て言った。
「梨理はニブいの?良く考えてもみなよ。もし、自分の彼氏が元カノに会いに行くって言い出したらどう?」
「それは嫌!!里梨凜にまた会いたいなんて言われたらムカつくもん!!」
「それが元カノ?まぁいいや、そうでしょ?ムカつくでしょ?」
それは…………そうだけど…………
え!?でもそれって…………隼人は私の事が……好きって事!?いやいや、あり得ない!!マジ!?マジなの!?
「実はさ、隼人は彼氏じゃないんだよね。」
「え?そうなの?」
そう、私が好きなのは礼於。
「これから本当に好きな人に会いに行くの。そっちが彼氏。」
「そうなんだ。え?じゃあ、どうして彼氏の方にとりつかなかったの?」
そう言った瞬間、しまった!という顔をして、幽子はすぐに自分の口を手でふさいだ。
どうして、彼氏にとりつかなかった?…………とりつく?
とりつくって…………幽霊がする事だよね?
私は急いで隼人の部屋を出た。
嫌な予感がした。
心臓がバクバクいってる。いや、これはきっと、走ったから。走ったから!!
電車に乗って、急いでたどり着いた先は…………自分の実家。
確かめなきゃ…………違和感の理由を、ちゃんと受け止めなきゃ……。
この、残酷な現実を。
駅から実家まで歩いていると、途中でふと、花屋のガラス戸に映った自分の姿を見た。
やっぱり…………。
私は実家の目の前に着くと、深く深呼吸をして、震えた手で、インターホンを押した。
「はい。」
お母さんが出た。お母さんの声を聞いたら、涙が出そうだった。
「あの…………」
「隼人君?ちょっと待っててね。」
しばらく玄関で待っていると、お母さんがドアを開けて、中に案内してくれた。お母さん、変わらない。……そんな事ない。よく見ると白髪が目立つようになってる。
「いつも梨理に会いに来てくれてありがとうね。」
そう言って、仏壇のある部屋に通された。
自分の遺影を見るのは…………やっぱり…………
かなり衝撃的だった。
ねぇ、隼人…………
隼人の涙の理由は、これだよね?
『それは…………梨理が…………』
私が…………死んだから。だよね?




