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金色の瞳の剣姫は今日も世界を奔走する  作者: 世良きょう
第四章 ベアストマン帝国ー帝都レオネと地の祭殿編
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第 8話 大義名分

静寂を(たっと)ぶ場に怒りと憎しみともとれる声が響く。

ダリルの発した言葉はあまりにも突拍子もなく、長い付き合いだが耳を疑いたくなるような言葉だった。


「あんな奴となれ合ってんじゃねぇ!俺を襲ったのはファウストだ!」


ファウストさんとはあって間も無く、知人と言う程度の間だが、彼がダリルを襲う理由には皆目見当がつかない。先程まで一緒に話をしていた彼は弟思いの兄と私の目には映っていた。

怒りに拳を震わせるダリルの体には僅かだが鬱血した痛々しい痕がみられる。


「ファウストさんに襲われた?」


「口封じだ!アイツ、無関係のガキまで巻き込みやがって・・・」


ダリルは襲撃時を思い出したらしく悔し気に奥歯をギリリッと噛みしめる。

其れを見てフェリクスさんは呆れた様に小さく溜息をついた。


「何があったのか落ち着いて話せよ。幾ら賢く心の広いお兄さんでも、今のままじゃ意見を言う事も擁護する事もできないな」


「うるせぇ!お前なんかに聞いて貰・・・」


思わずフェリクスさんに反発し、大声で喚こうとしたダリルの前に杖が振り下ろされる。


「・・・此処仔が何処だと思っているの?治療室よ、下手な意地を張っていないで正直に話なさい」


ケレブリエルさんはダリルへ冷やかな視線を送ると、ダリルが口を(つぐ)んだのを見て静かに杖を降ろす。


「ちっ・・・」


流石に反論できずに苦虫を噛み潰した顔をするダリルだったが、静かに事のあらましを語りだした。

街中の騒動後、すんなりと事が治まったのを怪しみ後をつけた所、ファウストが国の兵士と合流して何やら話しあっているのを目撃してしまった。

そこから大通を人混みに流され見失うも路地裏に入るファウストを発見し、追いついた所で見境なく襲い繰る浮浪者達から孤児たちを庇ったところ、袋叩きになってしまったらしい。


「その時、奴が振り向いた。近くで怯えていた孤児(ガキ)共を庇う俺を見下すような目で見て言ったんだ「この事は忘れろ」ってな。・・・後は背後からガツンだ」


「・・・なるほど。祭殿の護衛兵が国と繋がりを隠す為に浮浪者を雇って目撃者を襲ったと・・・」


ケレブリエルさんはそう呟くと思案顔を浮かべ、顔をしかめると黙り込む。

もしその通りだとしても、あの路地を皆で調べたけれど慌てて何かを隠した形跡も何かの痕跡も見当たらなかった。

襲われた私達の(もと)へ駆けつけたのが演技だとしても、其れを行う理由が不明だ。

それに、弟を追立に来たアマデオ達と関係が有るなんて事も考えにくい。


「うーん、今ある材料で判断するのは難しいね。きちんと顔を見れたの?」


「確かにあの路地裏は薄暗かったですし、難しいかもしれません」


ソフィアは私の意見を聞くとうんうんと頷く。


「なっ、見間違いだと言うのか?!」


「まあまあ、落ち着けデコ助。誰もお前が嘘を言っているとは思っていない。要は状況証拠のみで判断するのは早計って事だ。それにな、煩くしすぎてさっきからリオネッラ嬢がお困りだ」


フェリクスさんは眉尻を下げ、困ったように苦笑いを浮かべると、忙しそうに治療室の中を歩きながら此方をチラチラと見てくる白魔術師さんを指さす。ちゃっかり名前を聞き出しているとかぬかりないな。


「ともかくダリルは大事を取って今日は休んでもらうとして、私達のみで話し合おう」


これ以上の長居は気不味い。ダリルには悪いけど、一晩だけでも教会で休んでもらおう。

まあ、すんなり休んでくれるとは思わないけどね。


「おい!俺なら大丈夫だ・・・っ痛ぇ!」


ダリルはベッドから飛び降りるが、床に足がついた途端に足を抑え(うずくま)る。

私達を見ていた白魔術師さんが小瓶を抱えて私達の許にゆっくりと歩いて来る。しゃがみ込みダリルの頭を掴み無言で薬瓶を口に突っ込んだ。困惑するダリルを見下ろすとニコリと優しく微笑む。


「此れは近くの治癒院から分けて頂いた骨再生薬なんです。とても良く効くお薬なんですが、とても苦いうえに一晩で再生させる為に足が千切れるような痛みに襲われるのが難点何ですよね」


「・・・!?」


凄みを感じる笑顔の圧力にその場に居た全員が振るいあがる。どうやら相当お怒りのようだ。

しかし、骨が折れているにも関わらずついて来ようとしたのか・・・

少し可哀想だけれどもダリルには一晩ゆっくりと休んでもらう事ににし、私達は教会を後にした。



***********************************



白い街並みを夕日が茜色に染める。宿で話し合う事を提案したものの、人気の多い場所で話した方が良いと言う周りの意見を受けて人気の無くなった高台の展望台で一息つく事とした。

周囲を見回し確認すると、フェリクスさんがゆっくりと口を開く。


「アメリアちゃん達と別れている間に聞いた話だけど、国が祭殿へとある嫌疑をかけているらしい」


「嫌疑・・・?」


「国の重要な何かを祭殿側が盗んだとか疑っているらしいわ。しかも、其れを理由に祭殿側の権限を剥奪し、国が祭殿の全権を握ろうとしているのだとか」


ケレブリエルさんは手摺に腰を掛け遠くに見える王城を見て眉を寄せる。


「・・・そうだとすると、祭殿側のファウストさんが国側と密談していたと言うダリルの話しがひっかかりますね」


「・・・そうだな。まあ、その話が持ち上がったのは新しい御妃様が輿入れした後らしい。今の所、会う度にいがみ合う程度のようだけどね」


しかし、祭殿側を攻める口実は有るのに国側は何故、強制的に権力を行使しない?

国ともあれば其れが可能なはず。仮に御妃様がカルメンだとしたら、色々と考えられるけど。

私達の話を静かに聞いていたソフィアは(うつむ)き思案して居た様子だったが、何かに気が付いたらしく顔を上げる。


「まるで・・・祭殿へ手を出す正当な口実ができるのを待っているかのようですね」


「もし、それが正しければ盗難容疑は扇動と言う事かな?」


私とソフィアの話を聞いてケレブリエルさんは「ふむ・・」と低く呟く。


「何にしても、頭に上った血が引いたデコ助も交えて調査だな。祭殿の件にしてもデコ助の件も含めて、確証を得られる情報が不足しているしね」


そう言って宙を仰ぐフェリクスさんの視線の先の空の茜色に藍色が差し、星が瞬き始めていた。

思ったより長く話し込んでしまったようだ。



***********************************



宿に戻りアルスヴィズ達に餌を与えた後、商売が捗った様子の上機嫌なライラさんに誘われて夕食を奢って貰うことに。祭殿の件にダリルの証言を裏付、どちらも手掛かりが不足していてる。

此処は足元を見られそうだが、こっそり皆と相談し、ライラさんの情報網を頼る事にした。


「ふむふむぅ、それはそれは穏やかじゃありませんねぇー。そう言う事ならぁ、一件に付き大銅貨五枚で承りますよぉ。どうしますー?」


「とりあえず、昼に教会近くの裏通りで起きた騒動について調べて下さい。お願いします!」


此処はあえて、ファウストさんの名前は伏せておく事にした。

賑やかな食事を済ませると其々、支度を済ませ就寝をする事に。よし明日こそは!

小鳥の(さえず)りも疎らな翌日の早朝、上階の私達が泊まる部屋まで階下から騒がしい話し声が響く。何の事と思ったのは私だけではないらしく、扉が開く音と抗議の声が上がる。

身支度が終わり、階下に降りた頃には仲間達もほぼ揃っていた。


「どうやら今、国が祭殿へと直接赴いたみたいよ。例の御妃様の命令らしいわ」


ケレブリエルさんは部屋の隅に私達を誘導すると、ヒソヒソと小声で話す。


「やはり、何かありますね・・・」


「しかし、フェリクスさんが居ませんね。まだお休みになられているのでしょうか?」


ソフィアさんは辺りをキョロキョロと見回した所、予想外の所に目が止まる。宿屋の入り口に寄り掛かり、フェリクスさんが私達を呼びながら手を招いていた。



************************************



人混みを掻き分け辿り着いた祭殿の前は予想以上に緊迫とした雰囲気が漂っていた。

脅しの為だろうか地面に焦げ跡が残っている。其れに向かい合うのは巫女らしき女性とファウストさんたち護衛兵。緊張しつつ隠れながら距離を詰めると、背後から肩を掴まれ声を上げそうになった所で口を押えられた。


「・・・静かにしろ」


その声に振り向くと目に入ったのはダリルの姿だった。抜け出してきたのね・・・

仲間達の呆れ顔を眺めつつ耳を澄ませると会話が聞こえて来た。


「お前達が常闇の魔導書(グリモワール)を盗み、所持している事は明らかだ。周囲で闇魔法の使用が感知された。場合によっては祭殿を強制的に引き渡して貰う」


女性兵士の声が辺りの空気を凍り付かせる。それを聞き怒りを露わにする祭殿側の兵の中、ファウストさんだけは顔を青褪め俯き、唇を震わせている。その最中、巫女の女性が前に出て兵士の腕を掴む。


「それは冤罪です。わたし達は魔導書を盗んだりしておりません!」


「無駄な事を・・・っ」


ぐらり・・・。

兵士の足元が揺らいだかと思うと、無言で仲間に剣を振り下ろす。兵士の白銀の鎧は鮮血に染り、その視線は歓喜さえ湛えながら後退(あとずさ)る地の巫女に注がれる。

突如狂った仲間、斬りつけられ地に広がる赤い水溜。しかし、其れを見た残りの兵士は口角を引きつらせながら笑う。


「ふふふ・・・闇魔法か、ついに証拠を掴んだぞ。しかも、祭殿側が手を出したと言う大義が出来た!」


言葉と裏腹に一斉に背中を見せ逃げ出す兵士達。しかし、それを追う事は叶わず、私達は地の巫女に向けられた凶刃を止めるべく駆け出した。

何時も読んで頂き有難うございます。

ブックマーク登録までして頂いて感謝感激です!

これを励みに此れからも邁進してまいります。

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