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第60話 咄咄怪事ー邪なる神の監獄編

木と紙のヒノモト式の引き戸は枠を外れ、コウギョクを巻き込みながら赤髪の半獣人の男性が吹き飛んでいく。

コウギョクはコウシドの下敷きになったが、張り付けられた紙を頭が突き破り大事には至らず。

その姿のまま、不機嫌そうに真横に倒れ込んだルドヴィーコを睨んでは癇癪を起こした。


「お主等、神の社で何事じゃ!!」


感情のままに唾をまき散らしては怒り狂うコウギョク、それを眺めては痛みに頭を摩りながらルトヴィーコは目を丸くする。

次第にコウギョクの金切り声を聞き流すようになり、その顔は真正面に向けると顔を強張らせた。

レックスが療養している部屋からゆっくりと出てきたのは、ルドヴィーコを軽蔑した目で睨みつけるチヅル。


「ルトビーコ、貴方には失望したわ。この状況下で彼を追放するなど許される訳ないでしょ?」


いったい何が起きたのか、こちらに目もくれずに言い争う二人の話に聞き入ると何となく内容が理解できて来た。


「何も命を取ろうって言う訳じゃ無いッス!団員達の為にも満月の度に邪神(ヤツ)に乗っ取られるなんて危険分子をヒノモトに置いておけないじゃないですか」


流石のコウギョクも気を削がれたようだが、全ての音や声を遮断したかのように二人の罵り合いは止まらない。

コウギョクの顔はコウシドに捕らわれたままで辟易とし、ルドヴィーコの体重で押し退けられずに終には半泣きに変わりつつある。

この混沌とした光景に思わず溜息が自然と漏れ、私も堪らず雨音をかき消すほどの声量で叫んだ。


「いい加減にしてください!」


三人の視線が一斉に私へと向く、おまけに部屋に留まっていたシルヴェーヌさんまで何事かと此方を覗き込んでくる。正直、何事か正確に訊きたいのはこっちなんだけどな。


「あ・・・これは何というか意見の相違っと言うかッスねぇ」


ルドヴィーコは我に返ると慌てながら体を半分起こし、申し訳なさそうに此方を見ては苦笑する。

チヅルはそんなルドヴィーコを睨んでいたが、ゆっくりと私の方を向き気まずげに俯いた。


「お二人ハ、レックスさんの処遇について話していたのデスヨ」


シルヴェーヌさんは眉尻を下げ、すっかり困った様子でチヅルとルドヴィーコの間で視線を落ち着きなく泳がせる。

戸惑いが広がる中で漸く、チヅルは重い溜息をついて顔を上げた。


「ルドヴィーコがレックス殿を危険視するまでは解る。わたしは奴をみすみす野放しにする事などできないと言っている」


チヅルは静かに感情を噛み殺し、怒りを抑えるように腕を組む。

レックスに対する思いはルドヴィーコと同じだが、ヤスベーさんに止められている以上、命令を反故にはできないと言う所だろう。

然し、私達どころか団長の意に背いてまでレックスを追放をしようと話を持ち掛けるとはとんでもない。


「ルドヴィーゴ、どう判断するにしても朝まで待って貰えないかな?」


今、外に追い出すなど飢えた肉食獣の群れに餌を放り込む事と同義。

仮にヒューゴーの様な団員がジンジャに抜け道を造っていたとしていても論外だ。


「了解・・・後、早計だったのは謝るッス」


ルドヴィーコは素直に反省したらしく、苦笑いをしながら肩を落としている。

何処となく生返事の様な返答だったが、今直ぐに何かをしよう等の兆しは見えない様だ。


「うん、まあ・・・ありがとう」


私が謝罪を受け入れるのをルドヴィーゴーは反応を窺いながら黙って頷いた。

この一騒動の話の区切りがついた所で、私達に対して恐々とかける声がする。


「あのー・・・コウギョクさん。そろそろ、可哀そうデース」


シルヴェーヌさんはルドヴィーコが乗ったままのコウシドを指さす。

チヅルは片手で自身の額を抑えると、慌ててコウシドから退くルドヴィーコを見下ろした。


「ルドビーコ、貴方は格子戸(コレ)を修理しながら反省しなさい」


チヅルは立掛けられたコウシドに目を向けると、指をさしては自然とルドヴィーコに修繕を押し付けた。


「何でオレが・・・まあ、了解っス」


コウシドごと自分を蹴り飛ばしたチヅルが修繕をするべきと思ったのだろう、ルドヴィーコは妙な間を開けたが渋々と言った感じで其れを承諾した。

コウシドを斜めに抱え、ルドヴィーコは此方に背を向けてトボトボと渡り廊下を歩いていく。


「麗しの妾が酷い目に遭っていると言うのに、放置するとは此の薄情者どもめっ」


漸く、コウシドから解放されたコウギョクは子供の様に頬を膨らませては愚痴をこぼしつつ、シルヴェーヌさんを盾にじっとりと私とチヅルを睨んできた。


「う、麗し?」


雨と埃で髪が乱れたままのボロボロのコウギョクを見て、チヅルは苦笑しながら小首をかしげる。


「むむっ!な・・・」


不満げに指をチヅルに突き付けたが、私はコウギョクの言葉を遮り仕切り直しを図る事にした。


「はい、そこまで!そろそろ、本題について話しませんか?」


此処に呼び出された本題、つまりレックスの容態についての話をシルヴェーヌさんから聞く事にした。


「是非、そうしまショウ!同郷のアメリアさんには是非、聞いて頂きたいと思ってたデス」


如何にか私が話を軌道修正をすると、シルヴェーヌさんは嬉しそうに両手を合わせ、部屋へと招き入れてくれた。

レックスは床に敷いた布団に寝かされており、傷もしっかりと治療されているが顔色はコカトリスの毒の影響が灰色がかって見える。

シルヴェーヌさんは先刻の大喧嘩のせいで床に散らばった薬を箱に戻し終えると、丸い陶器の小瓶を差し出した。


「この世界で施せる治療はこれが限度デスね。叶うのであれバ、教会で治療を受ければ良いのですケド・・・」


「あの、この瓶は?」


「これは石化の薬、飲ませて症状を抑えるデス」


蓋を開けると青臭い粘性がある薬が並々と瓶を満たしている。

魔法被膜に包まれた形状の薬以外を始めて見た。

物珍しさで瓶の中を眺めていると、何処からともなく落ち着いた足取りの音が聞こえてくる、それは真直ぐと部屋の前まで来た所でピタリと止まる。


「レックス殿の様子を見に来たのだが、これはいったい・・・。シルヴェーヌ殿、これは如何なされたのでござるか?」


外されたショウジドを見てヤスベーさんは戸惑うと、心配そうに顔を出して此方を覗き込んだ。

シルヴェーヌさんは私と同様の質問に困ったように眉尻を下げる。


「そ・・・それについては、チヅルさんの方が適役デス!」


「え、あ・・・はい、わたしから説明をさせて頂きますね」


ヤスベーさんに対し、改めてチヅルからルトヴィーコとの小競り合いについて説明がされる。

続いてシルヴェーヌさんからはレックスの容態まで訊き出すと、ヤスベーさんは眉間に深い皺を刻み込んだ。


「成程、確かにレックス殿に対して危険因子であると恐れている者がいる事は間違いないでござる。されど、人型に戻る事を渇望する、飢えた魔物が蔓延る現状で追放は確かに非道が過ぎる」


ヤスベーさんの意見も私と同様だったが、表情から察するに呆れや怒りに加え、新たな悩みの種が増えて胃痛がすると言ったところ。

ヤスベーさんの返答をチヅルは黙って最後まで聞いていたが、次第に目を伏せて俯き硬く唇を結んだ。


「・・・ええ、全くもってその通りだと思います」


ルドヴィーコの事を思い出し、怒りが再燃したかにも見えるが何か違う様にも見える。

チヅルとヤスベーさん達は顔合わせの話し合いを始める中で、シルヴェーヌさんは穏やかな表情を浮かべたまま、ゆっくりと挙手をした。


「私もレックスさんを怖いと思う人の気持ち解らない訳ではナイデス。どうせならレックスさんを知る我々でヒノモトを離レ、落ちてきた別の飛び地の教会みつけるデス」


要は夜が明けたら、同じような境遇の土地を見つけて必要な薬を揃えては如何かとシルヴェーヌさんは提案したいらしい。

元の世界に帰還すると言う手段もあるが先程の事といい、確実とは断言できないので此処は敢えて伏せておく事にした。


「ふむ・・・」


ヤスベーさんは興味深げにシルヴェーヌさんの話を聞くと、視線だけ私に寄越す。


「骨が折れそうですが、良い案ですね」


「デショー!」


何故か得意げな顔のシルヴェーヌさん。

それを見たヤスベーさんは口角を上げ、少し困ったように微笑んだ。


「今宵はレックス殿に交代で見張りをつけるとしよう。交代の報せが来るまで、可能であれば仮眠でも取ると良いでござるよ」


ヤスベーさんはそう言うと、カタナを抱えながらレックスの傍でドカリと胡坐をかく。


「それじゃ言葉に甘えて、妾はアゲを食すとするかのう」


コウギョクは黙って眠たそうにしていたが、話が終わった気配を感じとると好物を思い出したのか涎を垂らす。


「こんな夜更けに食べると太るわよ・・・」


「なっ・・・こ、高尚な存在の妾が肥えるわけ無かろう!」


睡眠より食欲かと呆れながらコウギョクを揶揄うと、チヅルが布団に寝かされたレックスを見ている事に気付く。


「チヅル・・・?」


暫し固まっていたが、名前を呼ぶと我に返ったのか、チヅルは慌てた様子で私に視線を向けた。


「・・・なに?」


突然、呼ばれて訳が分からないと言う様子でチヅルはぎこちなく口角を吊り上げる。

微妙な空気が流れる中、コウギョクはチヅルをじっと見るなりニヤリとほくそ笑む。


「チヅルよ、もしやレックスに慕情を・・・」


「違うわ」


チヅルは無表情のまま、コウギョクの言葉をバッサリと切り捨てる。

つまらなそうにするコウギョクをチヅルは冷淡にあしらうと、ショウジドを眺めて廊下へと歩み出た。


「ルドビーコを見てくるわ、出番が来たら呼びに来て」


そう背中越しに言い残すと、チヅルは渡り廊下を歩いていく。

ジンジャの外の喧騒が嘘の様に、静かな時が過ぎ去っていった。



*************



ホンデンの廊下をコウギョクは好物を口いっぱいに頬張り満足げに歩く。

神様への捧げ物として並べられていた品を掠め取り、食べているのだが天罰が下るのではと心配する私をよそにコウギョクは満たされた顔をしていた。


「気にするでない、狐護様はたかが御揚げ一枚ごときで怒りはせん。それよりも食さずにアオカビでも生えたら目も当て・・・ギャヒッ」


歩きながら夢中で食べていたせいか、コウギョクは舌を噛んでしまい口を押えながら悶絶する。

どうやらキツネモリと言う神様からの天罰が下されたらしい。

ヒノモトで神様と呼ばれる存在は私達の概念と違うらしく、万物に宿るものであり、此処の神様はキツネが多く生息する森と土地を護る神様なのだそうだ。

如何にか持ち直し、廊下を歩き続けるとショウジドを抱えたルドヴィーコを見つける。

目元にはやや疲れが見えるが、私達を見ると白い歯を口元からのぞかせ手を振ってくれた。


「お疲れ様っ!」


「いやー、罰とはいえ細かい作業は苦手ッス」


ルドヴィーゴは苦笑いを浮かべながら頭を空いた手で掻く。

片腕に抱えられたショウジドは元の姿と違い、何故か色とりどりの紙が貼られて実に鮮やか。


「この戯け!それは障子紙では無く、折り紙じゃ!」


「えー、マジっすか?!」


如何やら教わったにも拘らず貼る紙を間違えたらしい。

ルドヴィーコはコウギョクに叱責されたのにも拘らずお道化ていて、やはり反省しているように見えない。

うん、教わって・・・?


「ねぇ、ルドヴィーゴ。チヅルは如何したの?」


「さあ?ショウジドを直すように言われて以来、顔を合わせて無いッスよ?」


何の事か思い当たらず困惑しているらしいルドヴィーゴ。

その次に耳にしたのは爆発音、小規模なものだが灰色の煙がレックスの部屋がある棟から上がっていた。

ルドヴィーゴは私につられ煙を見上げるなり、ショウジドを抱えたまま目の色を変えて廊下を走り出す。


「ボサッとするでない・・・妾達もゆくぞ!」


「ええ、少し我慢してね」


木の廊下を駆ける慌ただしいルドヴィーゴの足音を聞きながら、コウギョクを小脇で抱えて走り出す。

大人しく私に抱えられたままのコウギョクと共に廊下を曲がると、目と鼻の先に煙の中から飛び出す複数の影とそれを追いかけるルドヴィーゴが視界に入った。

接近するにつれて濃くなる不快な薬品の臭いが濃くなる、コウギョクと共に口元を手で押さえながらルドヴィーコの行く先を確認すると、改めてレックスが寝かされていた部屋を覗く。

薄れゆく煙の中、またもや薬品が散らばる床の上で気持ち良そうにシルヴェーヌさんが眠っている姿が確認できた。


「これは・・・見事に出し抜かれたのう」


コウギョクは私の腕から擦り抜けると、扇で口元を隠し顔を顰めながら部屋を見渡す。

ルドヴィーコが慌てて放り投げたであろう障子戸が倒れており、部屋に僅かに漂う煙にあてられると頭が少しぼんやりとしてくる。如何やら、眠剤を撒かれたらしい。

そして、何よりレックスの姿は何処にも見当たらなかった。

私達は互いに顔を合わせると、雨に打たれることを恐れずに建物を後にし、ケイダイヘと飛び出す。

見渡せば巡回をする他の団員達も酷く慌てている様子、濡れた砂利を踏みしめながら追跡し続けると進行方向を指し示すように団員達が点々と倒れていた。

無我夢中で走る雨の中、見覚えのある二つの影が私の前に飛び出してくる。


「おい、事態は解っているのか?」


ヒューゴーは雨粒を鬱陶しそうにしながら手で遮り、私を見上げるなり状況確認する。

追走するザイラさんも此方の反応を待ちながら視線を向けてきた。


「レックスが連れ去られた事は把握している・・・やはり反対派の仕業なの?」


「ああ、そう・・・だな。反対派で間違いねぇよ」


ヒューゴーは視線を逸らすと、歯切れ悪く私の質問に答えた。

あからさまな態度に何か引っかかる物を感じる。

ヒューゴーの脳天を見下ろしていると、今度は溜息交じりにザイラさんから答えが返ってきた。


「主犯格はチヅルだよ。お人好しのヤスベーの奴と交代した途端にシルヴェーヌから薬奪って、配下に手伝わせて連れ去りだってよ」


ザイラさんは苦々しい表情を浮かべ、口の端から整った鋭い牙を覘かせる。

チヅルはルドヴィーコを力で制してまで止めたと言うのに何故?主犯格と聞いて頭が混乱した。

泥が跳ねる音に、ヒューゴーの諦めたような溜息が混じる。


「はあ、もう良いか。噂だとアイツ、俺達が留守の間に邪神の奴に間接的に妹を殺されてんだってよ」


レックスが寝かされていた部屋で見たチヅルの挙動は自制しているように見えたが、復讐に起因するのだとは気づかなかった。


「加担した奴等は恐らく、邪神に憑かれたアイツが結界を解き、魔族共を招き入れる所を見たんだろうさ」


ザイラさんは顔を顰めると、正面に見えるトリイを見据えながら大槌を握る手に力を籠めた。

トリイの前に、ヤスベーさんとルドヴィーゴと向かい合いながら数名の団員が睨み合っているのが見える。

トウロウの灯りに照らされる複数の人物、ヤスベーさんと対峙するのはチヅルと二人の団員。

チヅルはトリイを背にレックスを抱え、その喉元に短剣を突き付けながら睨み合っていた。


「チヅル、俺がソイツを如何にかするって言ったら阻止したのに如何してそんな・・・」


「如何してですって?!ルドビーコ、あんたも見ていたからコイツを追放しようとしていたんでしょ?」


チヅルはレックスを抱き留める腕に力を籠め、同志である筈のルドヴィーコに噛みつくように喚き立てる。それに対し、ルドヴィーコは眉を(ひそ)めた。


「だからこそッス・・・俺がソコに立つべきだった」


「ルドビーコの癖に恰好つけないでくれる?此れはわたしの復讐なのよ!」


二人の団員を挟みながらいがみ合う二人、ヤスベーさんはカタナに手も添えずに傍観しているだけに見える。


「チヅル殿、苦無(クナイ)を下ろすでござるよ・・・」


ヤスベーさんは慎重に歩を進め、チヅルとの距離を詰めるが彼女に賛同する団員達もクナイと言う短剣を構えて行く手を阻んだ。


「血の一滴でも垂れれば穢れで結界が解かれるでしょうね。だからこそ、今からわたしがする事を止めないで頂けるかしら」


チヅルはヤスベーさんが自分に接近できないと確信すると、レックスをトリイへと引き摺っていく。

結界の向こうに見えるのはジンジャを囲むように(ひし)めく魔物の群れ。

驚くヤスベーさんを尻目に、私はザイラさんと共にチヅルを護る二人の団員を蹴り飛ばす。

一人は地面を滑りながら転がり、ザイラさんに蹴られた団員は砂利の上を跳ねながら転がっていった。


「・・・近づかないでっ!!」


チヅルは今にも泣きそうな表情を浮かべては必死に叫ぶと、レックスをトリイの方向へと突き飛ばした。

身動きもせずにトリイにより隔たれた結界の外へ倒れ行く体、ヤスベーさんはチヅルを突き飛ばすと腕を伸ばし、レックスの肩を引き寄せる。

如何にかレックスは魔物の餌に成らずに済んだ、ヤスベーさんはそれを確認すると、濡れた砂利を踏みしめながら苦笑いを浮かべていた。

突き飛ばされてからチヅルがやけに静かだ、視線を逸らすとヤスベーさんの後ろでゆらりと体をふら付かせながら立ち上がり、覚束ない足取りでトリイへと近づいていく。


「チヅル!?」


復讐を果たせずに正気を失ったチヅルの細い体は傾き、トリイの先へと身を投げ出そうとしている様に見えた。驚くと同時に足が勝手に動く。

正直、何も彼女と付き合いも無ければ何も知らないけど命が何もせず散るのを見逃せない。


「百花・・・」


今にも消え去りそうなチヅルの声で誰かの名前が呼ばれる。

砂利を踏みしめる複数の足音にそれは掻き消され、チヅルの体は結界を潜った。


「ふざけるな、馬鹿かよアンタ!」


チヅルの腕を掴むとルドヴィーコは汗を滴らせ、必死の形相で引き寄せる。

チヅルは信じられない物を見る目でルドヴィーコを見上げると呆然としたまま。


「な、なんで・・・うぐっ」


命を救われる事により震える唇で紡がれる声、それは次の瞬間に苦痛による悲鳴へと変わった。

ルドヴィーゴは結界越しに見える魔物を蹴り飛ばすと引き剥がすと、強引にチヅルを抱き寄せる。

周囲を安堵の空気が包む中、密やかにチヅルの腕から一滴の雫が滴り落ちた。

振り続ける雨に其れは滲んでは広がり、清浄なるジンジャを赤く穢す。

本日も当作品を最後まで読んで頂き誠に有難うございました。

如何にか展開を進め、更新も間に合って満身創痍です。


*今週もまたまた新しくブックマーク登録を頂きました。ありがとうございます!(ˊᗜˋ*)


他にも色々と受け付けつつ次週も必ず更新いたしますので、気長にゆっくりとお待ちください。


*************

次週も無事に投稿できれば6月2日20時に更新いたします。

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