第35話 計略に生じる歪ー邪なる神の監獄編
紫色の双眸が此方を憐れみ嘲笑しながら見下ろす。
レンコルの領主であるクリスティーナは配下も連れず、このインウィンディアの町の中でも一際、大きな建物の屋根に立ち、己が作り上げた舞台で演者である私達とオディウム兵が困惑するのを小馬鹿にしていた。
その姿はあの森でウドブリムの元領主に嘲笑されるがままにされた時とは正反対、瞳は鋭く冷たく、そして自信に満ちている。
周囲からは歩く腐肉が生み出す不気味な足音、聞こえてくるのは言葉では無く呻き声だった。
その姿にはオディウム兵だけではなくインウィンディアの領民まで混じっており、生気が無く濁った瞳と歩みから屍人と言われる操られた死体と思われる。
単体では大した事は無いものの、この数と相手が同胞と言う点で人によっては心を搔き乱され、苦戦が予測される。
包囲され、数に押され見渡せど逃げ場はない、私達と比較してオディウムの兵士達への精神的な衝撃は計り知れないだろう。
然し、流石と言うかニコラオは歯を食い縛ると凄まじい怒り見せ、鼻息を荒くし怒りで顔を赤く染めると唾を撒き散らしながら、その大きな瞳を血走らせクリスティーナへ怒鳴りつけた。
「間も無く、本陣が到着する!異界人どもと共に殲滅されたくなければ退却するが良い!」
仲間の死にも動揺を微塵も感じさせず、相手に優位を示し身を退く事を要求する隊長のニコラオ。
譲歩とは些か甘い判断なのでは、それが事実か虚勢か、インウィンディアの奪還は遠のくのを感じる。
此方は未だに援軍の気配は無く、ペトロナを信じてない訳では無いが焦りを感じていた。
クリスティーナは眉一つ動かさずニコラオが息まくのを眺めていたが、聞き終えると同時に口角を吊り上げ鼻で笑った。
「何故・・・あたしが退却しなければならないのかしら?そもそも、レンコルは関与はしていないのよ」
オディウムから証を奪った盗人を追い詰める手段と思われるが、クリスティーナからは何の動揺も引き出せない。
そして事実、その罪とオディウムから怒りや憎しみを転嫁しようとしているのだ。
然し、ニコラオは怒りこそしないが黙考すると、私達を見つつ苦笑する。
「ふん!それで罪を逃れるつもりか?そこな屍人どもを仕向け、俺達を始末すればそれこそ証拠になるではないか」
町中に蔓延る屍人となった人々、例えしらを切ったり、証言する者が居なくとも形跡が残っていれば、何れ気付く者がいる。
クリスティーナの眉間に皺が刻まれるが、怒気を飲み込むように唇を結ぶと途端に冷ややかな目でニコラオを憐みの目で見る。
「そんな事?笑ってしまうわ」
クリスティーナの瞳は光り、屍人の群れを指さし宙に円を描くと、その中心に指をさし込む。
すると、一体の屍人が仰け反り倒れると、痙攣しながら血を吐き出しその場に倒れ込んだ。
屍人にも拘わらず出血?
屍人の灰色がかった肌は青白く変化し、出る筈のない血が口から流れ出している。
「な・・・?!」
「術から解き放てばただの骸。それに術さえかけていれば、こんな事も出来るのよ」
クリスティーナは動揺する私達の反応が面白かったらしく、口元に手を当てクスクスと笑い出す。
一頻り笑い終えると、気を良くしたのか術をひけらかしてきた。
「伝令!異界人ニヨル襲撃アリ、証ヲ奪イ潜伏中。至急、応援求ム」
生者とは違い、何の感情も抑揚も無い不気味な発声。
恐らく報告に向かう兵士に手を掛けたと言いたいのだろう、先程のクリスティーナの余裕の理由が解った気がする。
此の体の偽装にオディウムが騙されない事を祈るばかりだ。
「冤罪をでっち上げた挙句、罪を擦り付けるなんて卑怯よ!」
こうしている間にも、着実に屍人達は私達を追い詰めていく。
此処で初めてクリスティーナの表情が崩れる、怒りに歪む表情、其処から発する怒りの感情がのった声が町中に響いた。
「卑怯?お前達にだけは言われたくないわ。あの森であたしから略奪した事、絶対に忘れない!許さないんだから!!」
「あの森?!まさか、ウドブリムの証の事を言っているの?」
あの時、ウドブリムの領主を倒したヤスベーさんから、証を掠め取りパヴォールに散々、痛めつけられたと言うのに其れを反省するどころか未だに恨んでいると言うの?
逆恨みも良いところじゃない。
如何やらこの憶測は間違いないらしい、戸惑いながら訊ねる私に対してクリスティーナの怒りは募るばかりの様だ。
「惚けんな!お前達さえあの時!お前達さえ来なければ、とっくに主の元に召し抱えられ、この遊戯盤の支配者として君臨できたと言うのに」
クリスティーナの欲望の実現の妨げになった異界人への恨みは被害妄想交り強くなっていく。
それ程までにウドブリムの証を欲するのなら、邪神が好む方法を取れば良いのでは?
恐らく、正気を失いかけたクリスティーナにその言葉は届かない事だろう。
思わず苦笑しつつも、彼女の怒りに呼応するように屍人達が唸り声をあげるのを耳にし、私は剣を抜いた。
ニコラオ達とは敵を同じくしても共同戦線を結んだわけでは無い、屍人とオディウム兵、どのみち油断ならない。
コウギョクにヒューゴー、そしてテオドロさえもクリスティーナを苦々しく見ながら屍人を薙ぎ払い裁く中でティトとマリルーからの矛先だけは違った。
「インウィンディアを返せ!」
「全部、あんた達のせいなんだから!」
二人は小柄な体躯を活かし、屍人の群れの合間を縫いつつ、双子ならではの息の合った見事な連携で二手に分かれると近くの建物に貼り付きながら壁を駆け上る。
ニコラオが二人を見失い困惑する姿を見下ろし、双子は宙で身を翻すと次々と短剣を振り下ろす。
ニコラオはティトの一撃を腕に受け眉間に皺を寄せると、鼻息荒く屍人を丸太の様な筋肉質な腕で持ち上げ盾にした。
マリルーはニコラオでは無く屍人を切り裂いた事に驚き、悔し気な顔で飛び跳ね後退する。
この事態に仲間割れは勘弁願いたい、しかしニコラオは笑っていた。
「故郷を滅ぼした俺達が憎いか。憎む事は良い、そうやって憎い奴をぶっ殺してぇって言う気持ちは原動力になる。だがな、それで目を曇らしちゃあお終いだ」
ニコラオは自身の流儀を説くと、背負っていた大剣をゆっくりと振り下ろし凄むと、柄を血管が浮き上がるほど強く握りしめる。
双子をゆっくりと見比べると、重量感溢れる己の得物で屍人達を一閃し、地面に積み重ねた。
「全然、冷静じゃないじゃない!」
ティトもマリルーも戦いの心得があれど直撃を逃れたが其れを維持するのも限度が有った。
私はそんな双子を見るや否や、複数の屍人の腕が伸び、悪臭を放つボロボロの歯で手足に食らいつくのを蹴り飛ばす中を時おり切り払いながら縫う様に駆け付ける。
「ったく大人気ねぇなっ!!」
「ふむ、妾も協力しよう」
背後からヒューゴーとコウギョクの声が聞こえたかと思うと、連続して火がついた三本の矢が放たれる。
進路を塞ぐ屍人の群れを先端についた炸裂玉で爆散し、その骸を乗り越えると双子の姿を見つけた。
先程の爆発により動揺は見られるも、引き続き出鱈目に振り回される大剣と私も両手で剣を確りと握りこみ受け止める。色々な意味で重い。
このまま体ごと叩き切られそうな一撃を足を踏みしめ堪えると、私は二人に逃げるように叫んだ。
「ティト、マリルー!早く逃げて!」
「・・・・・」
「は、はいぃぃ!」
その声に弾かれる様に逃げ出す双子を確認しつつ、何度も鋭い金属音と火花を撒き散らし大剣をあしらう。
マリルーは離脱したものの、ティトは振り返ると立ち止まり、腰に下げた布袋へと手を突っ込み何かをニコラオに向けて放り投げた。
それは悔しまぎれに投擲された赤い丸薬、シルヴェーヌさんが事前に配った効果不明の「皆モ危険」だった。
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丸薬は宙で弧を描く、球形の魔法被膜に包まれた赤い液体はニコラオの体に命中し破裂すると、形を維持したまま宙に留まり回転し出す。
ニコラオは漸く剣を振るう手を止めたかと思うと、襟首をポリポリと掻き拍子抜けした様子で溜息をつき、ティトを睨み付けた。
「何だこれは?」
「う・・・うるせぇ!」
ティトは小馬鹿にされて赤面する。
こうしている間にもクリスティーナが仕掛けた屍人は数を増し、二人へと迫る。
すると、テオドロは屍人を蹴り飛ばし建物に叩きつけると、ティトを庇いニコラオの前に立ちはだかり掴み掛かった。
「おい!封印を解きやがれ!」
唐突なテオドロの要求にニコラオは困惑する。
あくまで自分を優先するテオドロに行動を私は叱責した。
「そう言う事をしている場合じゃないわ。力を貸して!」
「くそっ・・・!」
テオドロは悪態をつくも動きを止めて我に返った様子、屍人を薙ぎ払いつつ二人が作り出し球を逃さず、私やヒューゴ達、そしてオディウム兵さえも屍人の群れを殲滅に取り掛かった。
ニコラオは肩を竦めると高見の見物を決め込むクリスティーナへ標的を映すと、大剣を乱暴に振り回し屍人を叩き切り道を切り開ていく。
その様は驚異的な物であったが、ふと視線は宙に浮かび火花を散らしだす赤い薬に釘付けになる。
「おい、これ・・・薬は薬だけどよ」
まじまじと其れを見つめるヒューゴーの顔色は次第に青褪めていき、それと同時に私達にはなれるように忠告した。
「え、何なの?!」
つられて赤い薬から離れると、ヒューゴーは眉間に皺を寄せ臭いを嗅ぐ。
「火薬だ!炸裂玉に使っているヤツ!何時もと色が違うが嫌な臭いがする!」
慌てる私達を追うように迫る屍人の大群、対処しつつも身動きが取りにくくなっていくのを感じていると、コウギョクが堪りかねた様子で身を翻し扇を広げた。
「もう、何をやっておるのじゃ!」
私達が退却するのを訝しむ者や嘲笑う者がいる中、コウギョクに此方の事は詳しくは伝わっていない様子だが立ち止まると振り返り、私達の後方から追尾する屍人の群れに向かい舞いを披露する。
何をするつもりか知らないが、このままでは舞が終わるまでは待てない。
少しでも時間を稼ごうと、ヒューゴーと共にやもえなく屍人に応戦すると、コウギョクの扇が火を纏うのを目にした。
「火?!ちょっと待って!」
「おいおい!冗談だろ?待てって!!」
ヒューゴーは屍人の群れを私に押し付け、目に留まらぬ速さでコウギョクの許へ駆けつける。
然し・・・
「妖艶たる舞にほころぶ曼殊沙華 咲き誇るは青き花の舞【狐火踊】!」
コウギョクの舞に合わせて舞い散る火花は屍人に触れると同時に全身を包み、蕾が綻び花開く様に炎が噴き出し広がる。
混乱は起きているも多くの屍人を片付けられたまでは良い。
その火が広がりだした所でバチバチと弾けるような音がし、幾度となく火花が散りると放射状に吹き出す。
それは何度も枝分かれし、広範囲に広がってはバチバチと弾けるような数多の小さな爆発を連続で起こした。
耳を劈くような音の中、垣間見た光景はまるで青白い火で出来た花畑の様、町中に響き渡ったそれは次第に治まり煙と共に霞んでいった。
「こ、これは確かに「皆モ危険」ね・・・」
罰当たりであるが私達は盾代わりにした屍人をゆっくりと地面に寝かせて辺りを見回す。
視界は白煙に覆われ、焼けた事により異臭に顔を顰めるが、そこに映る影に息を飲む。
足元には薬品、もとい爆薬の恐ろしさを示す焦げた屍人の山、徐々に明瞭になるのは視界に映るは絶望の光景だ。
クリスティーナは恐ろしい光景を見下ろし満悦の表情を浮かべていたが、私達の姿を見るなり意外そうな表情を浮かべた。
「あら?意外としぶといのね」
クリスティーナは自身の膝に頬杖を突きながら期待外れと言わんばかりに顔を曇らせる。
「お生憎様、自滅なんてするつもりは無いわ」
私がこう反論するが、対するクリスティーナの顔は怒りさえ見せずに気だるげな表情を浮かべるも、視線を外し遠くを眺めてると此方を再び見てニヤリと笑う。
「そう・・・少し驚いたけど如何でも良いわ。思わぬ収穫がありそうだもの」
何の事か判らず困惑していると、遠くから聞こえる声が屍人の物と気付き、それが徐々に近づくと断末魔だと気付く。
押し寄せる呻き声と足音、各々の得物を手に屍人をただの骸へと変えていく中、ペトロナを疑った事を心の中で謝罪した。
身動きが取り辛くなる程、ひしめき合う様に押し寄せていた屍人が次々と真の安息を得る。
その中でよく見知った姿を目にした。
「いやぁ、到着した途端に屍人が跋扈するわ、何処に向かえば良いか判らず苦労され申した。遅くなり忝い、拙者達が来たからには安心されよ」
ヤスベーさんは私達の姿を確認するなり頭を軽く下げると苦笑し、快活な語り口調で呼び掛けて来た。
それに安堵すると同時に、剣を握る手に力が沸き立つのを感じる。
それは私だけでは無く、ヒューゴー達も一緒だった。
着実に敵を殲滅する中、急にテオドロの動きが機敏になるのを目にし、コウギョクと共に顔を顰めつつその原因を視線で追うとウンベルトさんの姿が目に留まる。
「成程、このままでは同郷の者に顔向けできぬか。せっこい男よのう」
先程、爆発による失態に意気消沈していたコウギョクだが、事態が好転によってか何時もの語り口が戻って来た。私は思わず苦笑する。
「まあ、その程度許してあげなよ」
それにしても、あのクリスティーナの余裕は何処から来るのだろうか。
私達を囲み窮地に追いやる勢いの屍人達の姿はもはや見る影もない。
相も変わらずオディウム兵士達との間に微妙な空気が流れているが、ヤスベーさんは主犯格のクリスティーナを見つけるとわざとらしい微笑みを向ける。
「さてはて、此れや如何に。レンコルの領主殿では無いか」
「あら、久しぶりね。会ったのはあの森以来ね・・・。あの男から奪った証もウドブリムもあたしの物よ、返してもらえるかしら?」
穏やかな表情のヤスベーさんと相反してクリスティーナの声色は低くなり、ただならぬ心情を募らせている事が解る。
あの時、パヴォールに阻止されヤスベーさんに証もろとも奪われた事か、自身を嘲笑し虐げていたウドブリムの元領主への恨みか。何方にしろ、彼女は復讐の機会を待ちわびていたようだ。
周囲に点在する瓦礫が音を立てて崩れ出す、その中から白骨化しかけた屍人の手が飛び出す。
突き出した口に長い尾、ティトとマリルーの目をヒューゴーとコウギョクが塞いだ。
屍人化した爬虫類族、クリスティーナはぞんざいな扱いを受け瓦礫の下に埋められていたインウィンディアの人々を復讐の為だけに利用しようとしているのだ。
「おおおぉ!!」
張りつめた空気を打ち破る雄叫びが響く、ニコラオは仲間達の骸を眺めていた顔を上げると、目を血走らせ歯を食い縛り走り出すと巨体に似合わぬ機敏さで瓦礫を踏みしめクリスティーナを目掛けて猛進する。
憎しみ、ニコラオはまさに住まう地の名の通りの形相を浮かべていた。
「邪魔するな!」
クリスティーナは声を荒らげ、何かを握りしめニコラオに突きつける。
「証・・・っ!」
咄嗟にインウィンディアの領主の証がレンコルに奪われた事を思い出す。
もし、ニコラオがテオドロの神術を封じた術を使用とするならば・・・
ニコラオの背中を目で追いながら追跡する。
それを追い抜く様に頭上を矢が放たれ、阻害されたクリスティーナはニコラオに注視していたものの肩を射抜かれ取り乱した所で接近を許してしまう。
ニコラオは全身を振り絞る様に跳躍し、鼻息荒く屋根掛け登ると間近まで接近し、クリスティーナをその巨大な単眼で捉えた。
「・・・ふんっ」
ニコラオは鼻で笑うも、唇の際から血の混じった泡を吹き出し、背面へ倒れ込む。
クリスティーナは凄まじい形相でニコラオを睨み、その腹部へと緑に光る領主の証を突き付けていた。
「大人しく利用されていればいい物を・・・」
瓦礫に飛び乗り、崩れかけた屋根瓦を蹴り飛ばし屋根へ飛び上がる。
目の前では苛立った様子のクリスティーナが杖を投げ捨て、腰に下げた短剣を両手で握り振り上げる所だった。
重量のある体躯のニコラオが跳躍し、踏み荒らした影響もあるだろう、既に屋根は崩れかけている。
ヒューゴーの支援を受け、危険を顧みず何枚もの瓦を蹴り落としながらクリスティーナの許へ辿り着くと、その切っ先を剣で薙ぎ払った。
甲高い金属音、短剣は回転しながら弧を描くと屋根で跳ねて転がり落ちる。
クリスティーナは苦虫を噛み潰した顔をすると、証も神術も使わず短剣を手に取った。
「そうか、神術が・・・」
「くっ・・・ははっ、成功したか」
ニコラオが苦しそうな息をしつつ満足そうにクリスティーナをせせら笑う。
一息つくと、武器を失ってもなお殺意に満ちた鋭い瞳で此方を睨みつけていた。
「アメリア殿!」
ヤスベーさんは軽々と屋根に飛び乗り、私とクリスティーナが対峙するのを見てカタナを構えた。
脆い足場の上で慎重な足取りで間合いを取る、私の肩を通り越して憎しみはヤスベーさんに突き刺さるが、彼女の武器となる屍人達は術から解き放たれて地に伏す。
「策士策に溺れるってか?」
ガラクタ団とウドブリムの連合でクリスティーナが居る建物周囲を囲んでいた。
クリスティーナの体がゆらゆらと左右に揺れたかと思うと、けたたましい足音を立てニコラオが落とした大剣を恐ろしい形相で拾い上げると、ヤスベーさんに向けて形振り構わず突進していく
「証をぉぉぉ・・・・寄越せぇっ!!!」
感情の噴出により湧き上がる人体の噴出は彼女の細腕で振るわせるのか、然しその重量は彼女の体の軸を傾けさせていた。
大剣が何度か屋根の上に衝突しつつ屋根に穴を開け、クリスティーナは目前まで来ると私もろとも叩き切ろうとする。
不安定な剣筋、私は剣を両手で柄を握り直すと全力で振り上げ凶刃を跳ね除けた。
大剣はクリスティーナの手を離れていないものの、最後の悪足掻きか放り投げられヤスベーさんと向かう。
「むんっ!」
ヤスベーさんは目を見開き大剣を捉えると、耳を劈くような音を立て火花を散らしながらカタナで弾き落とす。これで一先ずインウィンディアの騒動は終息か。
先程の反動でヤスベーさんの体は後方へ反り返る、その手を素早く取り支えるとクリスティーナは黒く巨大な蝶の翅をはばたかせ、私達の目の前へ浮上する。
「許さない!許さないっ!!!」
響くクリスティーナの絶叫した直後、それを止めたのは喉笛に添えられた闇のように黒い大鎌だった。
本日も当作品を最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。
先週はお待たせしてすいません、如何にか今回は間に合う様にできましたヾ(;´▽`A``
宜しければ、これからも当作品を読んで頂ければ幸いです。
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次回も無事投稿できれば11月18日20時に更新いたします。




