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第29話 勧誘と交渉ー邪なる神の監獄編

銀色の月光がレックスの姿を追うように降り注ぎ、コウギョクはフジとツガルを伴い舞踊る。

やたら自信が有るようだったけど此れは彼女達が使用する、ヨウジュツ?それとも儀式?


「直に月夜も終わるか・・・」


神秘的で知らない文化の美しい光景なのだが、内容は明かされていない事が少し不安だ。

冷たい夜の空気は湿り気を帯び、私達とレックス否、意識と体を奪った世界の主であり、この世界に封じられた女神ウァルミナスと対を成すカーリマンは互いに様子見のまま動けずにいる。

レックスも抗っているんだ、ここは奴の言葉に惑わされている場合じゃない。


「ヤスベーさん、コウギョク達が踊りを完遂するまでどの程度、時間がかかるか御存知ですか?」


私の問いにヤスベーさんは首を捻り思案すると視線を逸らし小さく唸る。


「あればヒノモトに伝わる雨乞い・・・いわゆる雨を降らせる儀式でござるが。恐らくは半刻、長くとも一刻と言うところ。雨を引き起こす者の気分次第かと思うが」


雨を引き起こす者、つまり水の精霊の力を借りるつもりなのか。

コウギョクは奴の、カーリマンの言葉を試し雨雲を呼び出そうとしているらしい。

それは癪ではあるけど奴はあの満月を通じて此方に接触を図っているのだから、レックスから引き剥がすには有効打だと言える。

月が姿を隠すまでと言う言葉を逆手に取るのは良いが、精霊の数がどれ程かは不明で成功するかは正直、賭け事だ。

なるほど、ヤスベーさんが何処か不安気だった理由が解ってしまったわ。


「教えてくださり、ありがとうございます。では、私も自分のできる事をしてみます」


レックスの体を満月を通じて操るのは封じられているとはいえ、魂の一部を封じて顕現する厄介な存在。

この異界は女神ウァルミナスにより封じられた兄、争いやあらゆる負の感情を好む邪悪な世界の主カーリマンを封じる監獄。

その妹神、女神ウァルミナスの祝福を使用し、浄化するには接近する必要が有る。

罠か本当に戦う気が無いのか計り知れない、コウギョク達の儀式を阻害せずにレックスへを出来得る限り無傷でと言うのは難関だ。

レックスへの負担を考えると強引な手は避けたい、私はカーリマンから目を逸らさず剣を握り直す。

ヤスベーさんも私のできる事と耳にして何か勘付いたらしい。


「ふむ・・・実に天晴(あっぱれ)!この拙者、安部藤十郎!アメリア殿に是が非でも力を貸させてもらうでござるよ」


そう言うと、ヤスベーさんは私に続きカーリマンを囲む形で陣形を取る。

然し妙だ、相手から殺気も逃亡する気配すらしないのが妙だ。

そんな警戒する私達にカーリマンは憐れむような口調で語ると傲慢な振る舞いをしてきた。


「・・・先程は理解を得られなくて残念だったが、お前でも伝わるように言ってやろう、剣よ我につかぬか?」


先程の会話で私に元の世界に失望させる事が出来たと判断したのだろうか。

もし、今まで引き起こさればら撒いていた危機や現象を付箋だとして、それを目の当たりにしてきた私に

世界の崩壊を示したのなら効果的と判断したのかもしれない。

確かに、度重なる精霊王様達の危機、それによる世界の綻びの発生、そして事実であればそこから精霊の力や存在が流れ込んできていると言う事も含めて判断するにたる証拠は集まっている。

然し、その陰にあちら側の存在が多く関わっている事も事実。

何よりあの日、女神様から祝福を賜った時から誘惑を受けようと揺らぐつもりは無い。


「あ?耳腐ってんのか?こんな他の世界の力を盗んで生きている、囚人紛いに俺達は跪くほど腐っちゃいねーんだよ」


考えに耽っていた為、突然のヒューゴーの相手が誰であろうと臆さず大声で言う度胸には思わず驚かされた。もしかしたら、レックスが何者に操られているか知らないだけかもしれないけど。

口は相も変わらず悪いが聞いてて実に爽快な物言いだ。

然し、カーリマンのその瞳にはヒューゴーの存在は映らず、声すら届いていないようで眉一つ動かさずに淡々と私に返答を求めて来た。

カーリマンは胡乱な目をレックスにさせ、新たな誘い文句を掲げながら両腕を踊る様に広げる。


「・・・どうだ?此方へつけば、揺らぎもせず崩壊も無い、安定した世界に我が創り直してやるぞ」


その原因が何を言っているのやらと、私の中で怒りが込み上げてくる。

ヒューゴーもその反応と言葉に立腹し、口を開こうとするが慌てたヤスベーさんにより抑えられていた。

やはり己にとって煙たい存在を抑える為、はたまた女神様から己の世界を護る剣を奪い取ろうと言うのか。何にしろ(くど)いと思う。

その裏で鳴り響くコウギョク達の舞や演奏も佳境に入りだしていた。

私には奴が持ち上げる理想世界より、自分や出会ってきた人々が生きる世界を魅力的に感じると同時にその敵を退けたいと思っている。


「いいえ、何を言われた所で変わらないわ」


真っ直ぐとこう断言するも、カーリマンは怒るどころか淡々と確認してくる。

その表情は僅かだが、怒りの感情が滲み出ていた。


「・・・後悔するぞ」


正直、まだ言うう心算かと呆れてしまう。

そんな最中、フジとツガルによるヒノモトの楽器による演奏が止んだ。

そこで演奏を引き継ぐ様にコウギョクによる澄んだ美しい唄が、星々が瞬く闇夜に広がる。


『こい願う程に水が枯ゆく時に 雨を乞い舞を捧ぐ されど我らが神の威徳はまだ見えぬ』


舞に合わせ白い髪と尾がなびく姿は闇夜に映え、その透き通る硝子玉の様な赤い瞳が天を仰ぐと、嘲笑するように唇が弧を描く。

一瞬だけ間が空くが何も起きず、ヤスベーさんも空を見上げて肩を落とし顔を曇らせる。

しかし、コウギョク自身は諦めずに舞い続けていると言う様子に困惑していると、そんな私達にヤスベーさんはこっそりと教えてくれた。


「あれは拙者達の住まうヒノモトの雨乞いの儀式と言う物。唄を訳すならば、せっかく舞を捧げたと言うのに何も手を差し伸べない水の神、西で言う所の精霊に我儘な願いを言い怒らせ雨を降らせると言う儀式でござるよ」


幾ら待てども願い通り雨は降らず。

けれども、その儀式のおかげでカーリマンの気が一瞬だけ逸れる。

私はその一瞬を逃さなかった。


「・・・っ!」


剣を握ったまま衝動に身を任せ、思い切り力を込め地面を蹴りカーリマンの許へ駆け出す。

レックスがこの町に留まり戦った際、どの様な経緯で体を操られるとなったかは知る由が無い。

もしこうしたらと考えれば後悔は幾らでも浮かぶが、今はレックスを取り戻す事に専念しよう。

カーリマンが此方を振り向く、私が自分に刃を向けられ何を思ったのか、愉快そうにほくそ笑んだ。

何にしろ構わない、私は止まる事無くカーリマンに剣を振り下ろす。

金属同士が衝突し合うけたたましい音が町に響いた。

攻撃は防がれたけど、予定通り接近には成功したわ。

互いに視線をずらさずに押し切ろうと剣を握る手と足に力を込めて踏み込む。

火花が散らし、私は相手の喉元へ向けて切っ先をわざとずらす。

そこからは油断すれば、背後から切り掛かられる危険も有るし、そうなった時の覚悟もしている。

然し幸運な事に、カーリマンは私が仲間に堂々と剣を突き立てて来るなど想定してなかったらしく、そこに隙が生じた。


「何時までそこに居座るつもり?レックスに返してもらうわよ」


空いている片手で必死にカーリマンの、レックスの肩を掴む。

如何かレックスを解放できますようにと祈りながら。

それを如何にか引き剥がそうとする力に逆らい、更に強く願いを込め祈り肩を握りしめる。

カーリマンとしてはじっくりと私を洗脳していこうと目論んでいたようで、上手くいかず次第に呆れを口にした。


「理解し難い。月が姿を隠すまでとハッキリと言った筈なのだが・・・」


惑わされず捧げる祈りは、胸の奥に暖かな物が芽生える感覚を全身に広げていく。

胸元から全身に金の光が広がり、腕を伝わりカーリマンをも包み込んだ。

カーリマンの手から剣が滑り落ち、仮面から覗く紫の瞳も銀色に戻った事で祓う事が出来たのだと安堵しかけた時だった。

その時、鳩尾に激しい衝撃が加わる、鋭い蹴りをくらい私は呻きながらよろけて後退する。


「うぐっ・・・」


顔を顰め、細めた瞼の隙間からレックスを照らす月光が強くなるのを目にする。

歯を食い縛り如何にか踏み止まると、レックスは頭を抱えてもがき出す、前髪を抑える指の隙間からはやはり紫の瞳に見えた。

悔しいが油断していた、今宵は満月であり最もレックスへの影響が強い日だと言う事をだ。

何時の間にか頬を撫でる風は湿り気を帯び、火も消え始め町は先程より暗くなっている。

カーリマンは憐れむような顔をして私を見ると、レックスの声で此方に罵声を浴びせ掛けてきた。


「ふっ・・・くくくっ、あの女に持ち上げられた程度で逆上(のぼ)せ上ったか、だが所詮は棒切れを振り回す駒よ。お前も周りの連中もな」


これは恐らく、私の勧誘に失敗した事への当てつけだろう。

失望したと言わんばかりに大袈裟な振る舞いをするも、その口元は緩んでいた。

私には負け惜しみにしか見えないけれど・・・

そこでコウギョクが投げた小石が悦に酔うカーリマンの額に直撃する。

それを見てコウギョクはブホッと吹き出すと、そこから更に得意げに胸を張りカーリマンを嘲笑した。


「ふんっ、お主は月が出ている間と言ったな、だからお主の望通りしてやったわい。空を見よ」


冷えた夜風は徐々に生暖かさを増し、肌に纏わり付くように湿度へ至る、見る間に黒雲は体積を増し、星々が瞬く夜空を覆い隠そうとしていた。

カーリマンは勝ち誇るコウギョクを見ても小馬鹿にし鼻で笑う。

この余裕は思った成果が出ずとも、私達の心に不安の種を植えた事に基づく物だろう。

黒雲が立ち込め雨が降ろうとしている、それはこの陰鬱な邂逅を終幕に導く。

これが元の世界から精霊の力が異界に流れ込んでいると言うカーリマンの発言を証明してしまっている。

ついに黒雲が月を覆い隠そうとした時、カーリマンは私達を見ながら名残惜しそうに肩を竦めた。


「やれやれ・・・思いの外、早かったな」


空を仰ぎ諦めたのかの様な口調でそう呟くとカーリマンは苦々しい表情を浮かべる。

私は剣を収めると、ぼんやりと空を眺める奴の右腕を掴んだ。


「いいえ、此処までよ」


私は祈りながら真剣な表情で掴む手に力を込めた。

カーリマンはぼんやりと腕に視線を落とすと、金の光を目にして笑い声をあげた。


「ふっ・・・くくく、何時までその虚勢を保てるのか見もの・・・」


私達に対し嘲笑し、吐き捨てるカーリマンの言葉は月が覆われるのと同時に雨音にかき消される。

その後、町は見た事も無い雨と言う現象に騒然としていた。



*************



あれから一夜明け、テローの都アンクシュータスのあちらこちらでは修繕の音で騒がしくなっていた。

昨夜の名残である路上にできた水溜りを物珍し気に見る者や、泥濘(ぬかるみ)を踏みつけ遊ぶ子供達が居たりと一応は平和な光景が戻ってきている。

現在、ガラクタ団の強化の為に領地中の道具として魔族達に買われた人々に対し、バラハスさんの協力で招集をかけているが、なかなか其れも難航しているらしい。

前日の事もあり、私達は最も気掛かりな事に関して相談しようとシルヴェーヌさんの許を訊ねていた。


「風よ集エ!」


シルヴェーヌさんはヤスベーさんの要請に応え、自身の鞄から一振りの杖を取り出す。

説明を受けていたものの、半信半疑と言った表情を浮かべながら唱えた短い詠唱文、それにより風がふわりと髪を撫でたかと思うと杖先に小さな旋風が生じ、袖口をパタパタと靡かせたが戦いに関しては有用とは言い難い。どのみち、喜ばしい事ではない。

久しぶりに魔法を使用できた事にシルヴェーヌさんは頬が紅潮していたが、風が鎮まると長い耳と共にしょんぼりと肩を落とす。


「今これ言うトテモ不謹慎、でもワタシ少しウレシイ!」


シルヴェーヌさんはおずおずと喋り出し、はにかんだ笑みを浮かべた。

ヒューゴーは呆れ顔でそれを眺め、コウギョクは相も変わらずヤスベーさんを盾にしていたが、皆が求める答えが聞けず痺れをきらしたのか無言で服を引っ張ると見上げながら「んっ!」と話を聞くよう促してきた。口も利きたくないとか、どれだけ苦手なのよ・・・


「あの、魔法を使った感覚は如何でしたか?」


私がこう訊ねるとシルヴェーヌさんは一瞬だけ思考が止まったが、すぐさま我に返ると申し訳なさそうに頭を下げた後に喋り出した。


「確かニ残念・・・小さい精霊いル。でも精霊のチカラ、今は天候のマネできるぐらイ。然し、チリツモで不安デス」


シルヴェーヌさんなりに丁寧に説明をしてくれているが、どうも独特な言葉遣いに私達の大半の頭の上に疑問符が浮かぶ。それを見てヒューゴーは舌打ちをすると、ヤスベーさんに助けを求めた。


「おい、さっきの何を言ってるか解るか?」


ヒューゴーの問いにヤスベーさんは視線を傾け思案する素振りを見せては眉間に皺を寄せる、低い唸り声をあげる。


「ふぅむ・・・要するに今は自然に作用し天候に影響を与える程度であり、魔法が使用できる程度ではない。ただ、精霊の力が流れ込んでいるのは確実だからいずれは恐ろしい事になるのではと不安に思うと・・・言った所でござろうな」


難解な物言いを実に明快に訳すヤスベーさんに、コクコクと嬉しそうに頷くシルヴェーヌさんを除くほぼ全員が目を丸くした。

そんな事態に質問した本人は驚きの声を上げると共に自身を指さし、ヤスベーさんの耳を疑う。


「何で解んだよ!ここ大丈夫か?」


これには流石のヤスベーさんも不快に思ったらしく、怒りで眉を吊り上げヒューゴーに抗議をした。


「要求に応えたと言うのに、何と理不尽な!」


そんな二人を見てシルヴェーヌさんは居た堪れなくなったのか、自身の鞄を手で探ると何かを二人の間に押し付けた。


「喧嘩よくなイ!止めない、これ飲ますデス」


掌の上で転がる物体の見た目は唯の黒い丸薬、そう見えたのだが暫くすると三対の足を生やし、奇声を発しながら飛び跳ねて逃げて行った。

誰もが青褪め「あれは何?」と言おうと口を開きかけるが、それを口に放り込まれたらと思ったのか固く唇を結んだ。

ともかく今は話を元に戻してと・・・


「こうなれば、今は何がなんでも元の世界へ逸早く帰還しなくては成りませんね」


此方に精霊やその力が流れ込んでいるのなら今、彼方はどの様な状況なのだろうか。

精霊の力の流出口と思われる、世界の綻びを思い出すと背筋が凍る思いがする。

私の一言に皆一様に難しい表情を浮かべていた。


「まあ、言われなくても叶うなら最終目的はソレだな。そんなもんを可能にできるならって話だけどよ」


ヒューゴーは私の意見に頷くが、半ば自棄になったように溜息をつく。

そんなヒューゴーを見てコウギョクが漸く口を開いた。


「何を言っておるのじゃお主、その為に妾達はこの胸糞の悪い遊戯に身を投じているのであろう。のう、藤十郎?」


ガラクタ団のこの遊戯への参加理由が判明した事で希望が見えてくるも、ヤスベーさんの顔は晴れやかでは無い。

確認をするように見上げるコウギョクに一瞬だけ驚いた様な表情を見せると、ヤスベーさんは少し困ったように苦笑した。


「あ、ああ、もちろん此れからも変わらず尽力いたすつもりにござるよ」


その様子に少しコウギョクは訝しげにするも、それ以上は意味が無いと諦めたかのように肩を竦めた。

恐らくは、あの遊戯の主催者たる奴が素直に元の世界に帰すと言う願いを叶える筈が無いと思っての事だろう。

シルヴェーヌさんは黙って頷いていたが私達の顔を場がめて逡巡するも、手を思い切り上げて訊ねてきた。


「そう言えバ、次の戦イ。どの様ニ、戦うつもりデスカ?」


シルヴェーヌさんが質問をした事により、一気にヤスベーさんに視線が集まる。

ヤスベーさんには事前に今後の侵攻について私から提案をしていた。


「その事であるがアメリア殿の意見を採用し、レンコルよりインウィンディアを奪取するとしようと考えている」


採用された案に対し、予想外に異論は無く、周囲から感嘆の声があがる。


「ふむ、確かに今なら油断しているらしいしのう・・・具体的には如何するつもりじゃ?」


コウギョクの問いにヤスベーさんは周囲を見渡した。


「この中庭では人の目が少々気になる。この続きは移動先で話すでござるよ」


ヤスベーさんはバラハスさんの屋敷の中庭を離れ、私達に移動するように促す。

私達は中庭を出ると廊下を渡り、薄暗い地下へと続く階段へ辿り着き、私達は先導されるままに降りて行った。

こんな場所に在るとするのならば牢獄の他はあまり無いだろう。

牢獄と言えばウドブリムの兵士達はの処分は、町の修繕に労力として駆り出される事で免責となった。

そして、ヤスベーさんが移動するように命じたのは此処に投獄されているペトロナ達に会う為だからだ。

彼女達の投獄に関しては唆されたうえに故郷を失ったとはいえ、テローを混乱に貶めた事に変わりないので仕方がない。

そして私達はインウィンディアについては人づてに聞けても、彼女たちが知るような詳細な情報は手に入らないだろう。

牢の前へ辿りつくと、双子は怯えていたがペトロナは疲弊しきった様子で胡坐をかき、此方の気配を感じると顔を上げて睨んできた。


「何の用だい?私から得られるような物なんて無いよ。とっとと出ていきな!」


ペトロナは立ち上がると、鉄格子を噛みつかんばかりの勢いで掴み、私達を拒絶し怒鳴りつける。

その様子から全てを失ったと言う思いと絶望に加え、今は諦めの境地に有るのかもしれない。

私は誰よりも早く歩み寄ると、罵声を浴びせ掛けたペトロナに取引を持ち掛けた。


「ヤスベーさんが率いるガラクタ団で貴女達の故郷を取り戻す事になったの。そこで、協力して貰えないかしら?」


「・・・は?」


突拍子が無い私からの申し出にペトロナの表情が崩れる。

信用も実績も無い相手からの唐突な申し出はさぞや不可解な事だろう。

それでも互いに前に進む切っ掛けになればと、私はペトロナ達からの返答を祈る様な気持ちで待ち続けた。

本日も当作品を最後まで読んで頂き誠にありがとうございました。

何時も励みになっております。

漸く待ち受けるのではなく攻勢に出る事になりました、その結果や如何に?

それでは次回までゆっくりとお待ちください。


*********

次週も無事に投稿できれば10月7日20時に更新いたします。

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