第18話 奇襲と内乱ー邪なる神の監獄編
姑息な策を練る小鬼の目論見はガラクタ団の前に霧散する。
その末路は裏切り者と成り果て、自らガラクタ団を砦へと招くと言う自滅の道となった。
踏んだり蹴ったりな彼らを解放した後、私達はザイラさんと共に改めて木組みの砦を見上げる。
四方を護る様に櫓が建ち、それに加えて尖った丸太を交差させ組み合わせた杭が侵入者を拒む護りとなっている。
「何を見ているんだい?こんな所からじゃ、何も解らないに決まっているだろ?」
見える範囲で出来得る限りの情報を得ようと砦を凝視していると突然、ザイラさんに肩を掴まれた。
最初こそ何を見ているのかと怪訝そうな顔で砦の中央を共に見るが、言い争う二人を確認するなり、何でこんな所でと呆れられてしまう。
「接近しようにも、見張りがいるもので」
如何にかそれを取り繕う様に櫓を指さすと、漸く納得したらしいが心の内を探る様にじっとりとした視線が突き刺さった。
「ふぅん、それじゃあ現時点で解っている事は何だい?」
「推測にすぎませんが中央の二人の内、男性はウドブリムの領主かと。そして女性は外見からして共闘相手から派兵された者ではないかと思っています」
「ふむ、此処からそこまで理解できれば上々だね。さらに接近するとなると、四つの櫓に割り当てられている見張りをかたずけ、門と巡回の連中を潰すのが先決だね」
ザイラさんは私達の言葉に神妙な面持ちをし、声を潜めながら砦を潰す算段を企て始める。
それは今までザイラさんに抱いていた印象を覆す物で、思わずレックスと揃って呆然と見つめてしまった。
「・・・・」
「・・・・」
「何だい?二人して」
そんな私達にザイラさんは気付くと、不機嫌そうな表情を浮かべ、鋭い疑いの目で私達に探りを入れる。
沈黙は金、平静を装い口を閉ざすが横からコウギョクがニヤニヤと意地の悪い笑顔を浮かべ、私達を揶揄いだした。
「こやつらは、どーせお主が大そうな事を考えずに力おしで制圧すると思っていたんじゃろうて」
「ほう・・・」
ザイラさんの殺意が籠った拳がバキリと嫌な音を立てる、声を荒らげずに静かに滲み出る雰囲気だけでも十分、その怒りは言葉代わりにそれぞれの脳天へ降り注いだ。
「なんで・・・何で妾までぇ」
コウギョクは頭を抱えたまま、べそべそと涙を零す。
あんな言い方をしたら当然でしょうに。
その姿に呆れていると、涙ながらに抗議するコウギョクをザイラさんは鼻で笑った。
「ふんっ・・・此処が戦場だと言う事に感謝するんだね」
もし、こう言う事態で無ければ、私達はどんな目に遭わされるのだろうか。
私達は各々でそれを思い浮かべ、身震いをすると誰もが無口になった。
「ああ・・・そうだな心に留めておく」
レックスは苦笑すると、櫓の上を指をさす。
各箇所に一人ずつ、アーチャーに神術使いと接近する者がいれば逃さず各個撃破と言う布陣に、敵の隙の無さを感じた。
もう既に退却などと言う言葉は存在しない、領主の証についてザイラさんは如何考えているのだろうか?
「あの・・・ヤスベーさんが不在ですが、このまま櫓を落とした先はどう考えていますか?」
ザイラさんはヤスベーさんの名前を耳にし、眉を顰め唸り声をあげると何か割り切った様な表情で私達を見た。
「ああ、ヤスベーの事だ生きていて碌でもない事を考えているに決まっているさ。今は大将の捕縛を目標にしよう。先ずはハーフリング達に矢で櫓の上の兵を撃ってもらい、後は見張りを倒す奴を送り込むとしようかね」
取り敢えずだが、今はそれが最適かもしれない。
櫓の対策についてはコウギョク達の術は素晴らしいが、見目珍しい姿のアヤカシの容姿は嫌が応にも目立ってしまう。
隠密的に片付けるのであれば、弓矢の扱いが上手い面々の存在の方がありがたい。
その後に必要な行動となると、迅速に見張りを倒し敵陣の中央への突破口を開く、その役目を私達が買えば今後の関係も良好になるかもしれない。
「見張りを片付ける役は私に任せてください」
「ほう・・・一人でかい?」
ザイラさんは私の申し出に頷くと、意地悪そうな表情を浮かべてはレックスをちらりと見る。
レックスはそれに気づくと、少し不機嫌そうに口元を曲げ、やれやれと両手を腰に置いた。
「俺も行く、これで問題ないだろ」
「ふん・・・」
ザイラさんは小馬鹿にしたように笑うと、次はゆっくりとコウギョクに視線を向けた。
そしてコウギョクだが、やはり自分のところに来たかと露骨に嫌悪を示し、怯えた目で自慢の尾を抱きしめてはザイラさんを見上げる。
「な、なんじゃ、お目付け役を命じられておるとはいえ、獣の巣に飛び込むような事な真似は繊細な妾にはできんぞ」
明言こそしていないが、腰が引けているのは汚れ仕事を嫌っているのは明白であり、ザイラさんだけでは無く私達まで苦笑してしまった。
私達に真意を見抜かれたと気づくと、コウギョクは悔しさと恥ずかしさで赤面し、私達に猛抗議をするがザイラさんに頬捻られて如何にか鎮まる。
「無論、お前にはアヤカシのまとめ役の方が大きいから残ってもらうよ。二人には巡回兵を倒したら合図をしてもらうからね」
すると、コウギョクは途端に元気を取り戻し、私達を見てほくそ笑んだ。
現金な子だ、呆れる私達に対しザイラさんは黒く光る、手のひら程の大きさの玉を差し出す。
それが何なのか目をやると、教会の象徴がその表面に白い染料で画かれているのを見つけた。
「これは?」
「シルヴェーヌ特性、狼煙玉だ。これを地面に叩き付けるだけで良い」
薬師であるシルヴェーヌさんが作ったまでは解るが、地面に叩き付ける物に己が信仰する神の象徴を画くのは如何なのだろうか?
「え・・・大丈夫なんですかこれ?」
「はいはい、時は金なりと言うだろ」
意味合いは伝わるが、使い所は間違っていると思うも、別の手段を選ぶ間も無く追い出されるような形で潜んでいた藪を追い出されてしまった。
改めて砦を確認するが状況は変わっていない様子、ザイラさんの指示に基づきハーフリングの面々が四方に散ると、間も無くして順に兵士が倒れるのを確認。
巡回の兵士の人数と動き、門番の交代は無いかと探りをいれていると、徐々に出番が近づいてくる。
緊張で息を飲むと、背中を行き成り叩かれ、拳を握りしめ振り返るとコウギョクが両手を上に挙げ立っていた。
「ま、待てい、重要な任であるしお主等だけでは不安じゃ。二匹を連れて行ってやってくれ。あ・・・み、見張り役をサボったなど吹聴されては困るのでな」
コウギョクは一瞬、少し気まずそうに目を逸らすが直ぐに真剣な顔に戻り、フジとツガルを呼び出した。
二匹は不思議そうにコウギョクを見るとニヤリと笑い、私達に向き直ると小声で順に挨拶をする。
「よっろしくー」
「よ、宜しくお願いします」
それにより見張りを倒し、道を開く役目は二人と二匹となった。
他の団員は砦を囲むように陣形を取りつつ待機し、私達は砦へ接近する為の動線を確認し出すと、ザイラさんが背後から声を掛けて来た。
「・・・それじゃあ、引き返せないからね。確りと役に立っておくれよ!」
何が引っ掛かる言い方だが、後戻りはせず成果を出すようにと言う激励か、ただ単に念を押されたのかもしれない。
「ええ、お互いに頑張りましょう」
「ふふっ、生意気だけどその意気だよ」
ザイラさんに見送られ見張りの動きを探る中、ちゃくちゃくと砦と距離を詰めていく。
逸る気持ちに押されて進み、巡回の兵に見つかりそうになるがツガルとフジに引き戻され難を逃れた。
「ごめん、ごめん・・・」
慌てて小声で二匹に謝るが、レックスには確り睨まれてしまった。
「見張りは門番を合わせて六名。今は二人が巡回しているが、何れ交代の為に一箇所に集まる時が来る筈だ」
レックスと視線を合わせて砦の様子を眺めていると巡回中の兵士が二名、合流して立ち止まっては周囲を見渡す。
一瞬、緊張が走るも、すぐさま杭の向こう側から似たような服装の兵士が出てきて二人に手を振っていた。
「了解、本当にタイミングが良いわね・・・」
「ああ、罠じゃないかと疑うくらいにな。あの四人を始末したら、すぐさま門番だからな」
レックスは己の得物を握りしめ、横目で此方を見て念を押す。
私と使い魔の二匹は静かに頷くと、誰が合図を出す訳でもなく一斉に駆けだした。
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見張りと門番を縛り上げ、兵士を櫓の足元に押し込めて改めて、私は戸惑いながら狼煙玉を見つめた。
「火も使わずに衝撃で何て不思議な薬品か・・・って言うか、これは本当に使って良い物なの?」
私は強引にでも別の物と取り換えて貰うべきだったと軽く後悔していた。
判断に悩み戸惑っていると、掌の上の狼煙玉をツガルが不思議そうな顔で覗き込んでくる。
「・・・ああ、なるほど此れですか」
ツガルはこの薬について何やら詳しく知っている模様、それならと詳細を訊ねてみる事にした。
「実はさ・・・」
「何々?僕にも見せてー」
ツガルと私が一緒に掌を覘く姿が気になったのか、一人と一匹の間にフジが飛び込んで来た。
突然、腕に掛かる重さと衝撃、不意を突かれた事も有り、狼煙玉は呆気なく掌から転がり落ちる。
「え?あ・・・」
カツンと硬質で乾いた音が響く、一人と二匹は驚きの表情で固まり、私達の目の前で狼煙玉は砕けた。
見る間に煙が噴き出し、慌てて離れるがそれは私の背の高さまで登ると、ポスンッと音をたてて虹色の火花を咲かせ霧散する。
「これが・・・狼煙?」
位置を知らせるにも、安全を示すにもあまりに小さすぎる。
幸いな事に、ガラクタ団が潜む茂みと距離は遠くは無いのだけど。
「ショボッ!」
「で、でも、奇麗な色ですし目立ちますよ」
率直なフジに助け舟を出すツガル。
手間だが仕方ないとそんな二匹の使い魔達に知らせを頼もうとした所で茂みが揺れ、ハーフリングの面々が足早に次々と櫓に上っていく。
ザイラさんは実のところ、突撃する瞬間が待ち遠しくて仕方が無いんだろうな。
その姿を思い浮かべ苦笑すると、レックスは木の杭を支えにゆっくりと立ち上がった。
「これで一先ずは砦に接近し易くなったな」
「ええ、次は門へ行きましょ。少しでも多く情報をザイラさん達へ渡さないと」
ヤスベーさんの無事を信じ、私達だけで領土を持つ魔族の長を捕獲する。
改めて考えると危うい作戦だと思う。
然し、始めてしまったからには時は待ってはくれない、今は上手くいくか如何かじゃなくて少しでも多くの成果を得られる事を良しとしよう。
気が付けばレックスは私より先に進んでおり、門番を早々に一人で倒し私達へ手招きをしている。
臭いを嗅ぎながら進むフジとツガルの後を追い、レックスと共に私達は門の影へと身を隠す。
すると、中央で対峙する二人の声と姿がはっきりと見えて来た。
「妙だな・・・やつらは仮にも共闘していると言うのに」
レックスが訝しげに見つめる先には領主と女性兵士を中心に、ウドブリムの兵が扇状に陣取り囲んでいる。中央の女性以外に共闘側の兵士の姿が一人足りと見えないのだ。
可笑しい、あの戦場から逃げた兵士達は一体どこに行ったのだろう。
一方的に罵られたままの女性兵士は無言のまま、黒緑の長く垂れる前髪のせいで表情は窺えないが、背に隠したナイフは相手に向けられずにいる。
一方、ウドブリムの領主らしき男性は見る限り気位が高そうな人物であり、金色の髪に映える紫の瞳の顔からは相手の淡白な反応に不満気な様子が窺えるが、直ぐに表情を切り替えるとつかつかと女性兵士に歩み寄った。
「領土を異界人から奪えないどころか、奴らの首領を逃したとはどう言う事だぁ?」
ウドブリムの領主は女性を一方的に攻め立て、眼前に指を突き付けると、大袈裟な口調でテローの制圧が進まない責任を問う。
先刻の戦との立場の違い、ウドブリムが優位であるかのように領主は振舞っている。
漂う違和感、もしやこの領主は裏切られている事に気付いていないのでは?
「・・・そう、とんだ間抜けだわ」
女性は領主に詰め寄られても眉一つ動かさず、突きつけられた指を手の甲で払い除けた。
ウドブリムの領主は手を抑えると、眉を吊り上げると舌打ちをする。
「恨みには無関係かの様な態度だな、お前達が役に立たないからだろ?大した兵力を持たないお前達でも足しになるかと使ってやっているって言うのによ」
「その大した兵力を持たない私達を加えなければならない事態なうえに、たかが異界人から領主の証を奪えないのね?」
「はははっ、兵力が無いと言われて悔しいのか?事実だろう?奪えないのは俺のせいじゃない、足を引っ張るお前達のせいだ」
「お言葉を返すようですが、全ての責を押し付け、我々を貶める物言いは聞き捨てなりません」
再三たる罵倒に耐えかねたのか、レンコル兵の女性はナイフを堅く握り締め、髪を振り乱しウドブリムの領主へ切り掛かる。
然し、固く握り締められていた筈のナイフはウドブリムの領主が女性兵士を見つめた直後、指を擦り抜け滑り落ちた。
屈辱に女性の表情だけは抗おうとしている様に見えるが、その意思に反し膝と両手が地面から離れない。
「愚かな女だ、お前らの陰気な領主と言い、そうやって勝手に俺を恨んで自分を正当化か?」
領主の瞳は怪しい光を宿し、神術で抑えられ身動きが取れない女性兵士を嘲笑う。
服従を余儀なくされた女性は不甲斐なさに歯を食い縛ると、先程までの物静かな雰囲気は崩れ、憎しみに満ちた目でウドブリムの領主を睨んだ。
「エスピノサ・・・許さない」
「残念だったな、俺から証を奪い主のリエラに取り入るつもりだったか?とんだお笑い草だ、はっははは!だが、今回は使える駒の補充方法を間違えたな、此れが片付いたらレンコルを頂くとしよう」
女性兵士に絞り出すような憎しみの声で名を呼ばれ、エスピノサと呼ばれた領主は臆するどころか、ますます愉快そうに頬を緩めると跪く女性を見下ろし、地面に転がるナイフに気付き拾い上げた。
その刀身をエスピノサは眺めると、女性と向けて嘲笑いながらナイフを振り下ろす。
「幾ら何でも協力を求めておいて、その扱いは何時か寝首を掻かれても可笑しくはありませんよ」
無抵抗の相手へ振り下ろされる凶刃、私は何時の間にか握り締めていた土を手にしたまま、仲間の声を振り切りエスピノサに接近し顔面に投げつけた。
不意を突かれ目を抑え呻くエスピノサが手にするナイフを剣で弾き飛ばし、女性剣士が術から解放されたのを見て安堵する。
「誰だお前は・・・」
エスピノサは目を擦り土をを払い除けると、霞む視界の中で目を細め顔を顰める。
そこで漸く、先走ってしまった事に私は気付き、冷や汗が一筋だけ額から頬を伝って落ちた。
「人間か・・何と愚かな。お前達がテローを手に入れた異世界人ね」
女兵士は術が解けたばかりの為か、ふらつく足取りで此方に歩み寄り、魔族では無い事に気付くと足を止めた。
エスピノサは視線を移すと、物珍し気に表情で私を眺める。
「成程、なら都合がいい・・・お前がトウジュウロウ・アベか」
何処をどう見たら男性に見えるのだろうか?
「そんな訳ないでしょ・・・けれど、どのみちテローは貴方に証を渡さないわ」
正直言って、共通点は黒髪と言う所しかない。
全否定をし、己を制し平静を装いながらエスピノサと向き合っていると妙な殺気を思わぬところから向けられた。その主は咄嗟に脅威から庇い、命を助けた筈の女兵士。
領主に追い詰められ、あまつさえ命を奪われそうになったと言うのに何故?
困惑する私を見て女兵士はほくそ笑んだ。
「何でって感じね?殺されかけようと憎かろうと、エスピノサと組むのは領主様の命だ」
如何であろうとあくまで主の命令を死守、この兵士はとんだ狂人ね。
女兵士は髪をかき上げると私達を鼻で笑い、それどころかエスピノサからナイフを受け取ると息をする暇も与えずに舞う様に切り付けて来る。
一撃は思いの外、重くは無いが繰り返される連撃が厄介だ。
「くくくっ、便利だな忠誠心と言う奴わ!」
エスピノサが腰に下げた双剣を引き抜くと、それを皮切りに待機していた兵士が押し寄せてくる。
多勢に無勢、櫓を見上げようとすると急に体が動かなくなった。
「・・・しまった!?」
視界の端に不敵な笑みを浮かべるエスピノサが映る、ナイフを払い除けたが今度は私が神術に捕らわれるなんて。
指一つも動かないが口は動く、せめて助けを求めなくては。
そう思うや否や、青白い炎が私を中心に輪を描きエスピノサ達は四方に散っていく。
視界に二頭の白い狐の使い魔、フジとツガルが何処か得意げな顔で現れ、軽々と私の足元に着地をした。
その後を追う様にレックスが剣を握りしめ、仏頂面をしながら此方へ駆けきた。
「・・・こいつらに対して下手な同情はするな」
「迷惑をかけてごめん。でも・・・」
押し寄せたウドブリムの兵士は半減されているとはいえ数はそれなり。
自分が冷静さを欠いた報いが此処で来るとはね。
櫓にハーフリングの面々が控えている筈にも拘わらず音沙汰がない。
「・・・領主の居場所を吐け、そうしたら見逃してやっても良いぞ」
「そんな甘言は無駄よ」
レックス達もウドブリム兵を相手に悪戦苦闘する中、櫓を見上げようとするが、その隙をエスピノサは見逃さなかった。
女兵士は退き、そこにエスピノサの双剣による容赦ない急襲、ナイフよりも重いうえに神術の事を考えると気がきではない。
刃が噛み合えば鋭い金属音が耳を貫き、エスピノサの瞳が放つ光に慌てて距離を取ると、遮る様に眼前に矢の雨が降った。それに思わず戦慄すると聞き覚えがある声が砦に響いた。
つられて全ての視線が声がする方へ向く。
「やれやれ、やはり人任せにして楽しようなんて出来ないもんだ。後、団長じゃなくて悪かったね」
振り返るとザイラさん率いるガラクタ団が次々とウドブリムの兵士達に応戦してくれている。
何か聞き捨てならない言葉が聞こえた気がするが、これ以上に頼もしい助っ人は他に居ないだろう。
エスピノサはそれでも私達を見て嘲笑っていた。
「くくくっ、何人たりと領主の座は奪えぬわ!」
見る間にエスピノサは巨大な蜘蛛の姿へと変貌する、誰もが恐れ慄く姿に誰もが術中にはまり動きを封じられ、砦に静寂が訪れる。
エスピノサの蠢く十本足、大きな二つの牙からは涎が滴り、これから捕食されるのだと恐怖を感じさせていた。
次の瞬間、私が耳にしたのは人々の阿鼻叫喚ではなく、エスピノサの不気味な悲鳴。
何が起きたのだと自由になったばかりの頭を上げ、見上げると大蜘蛛の頭上には片刃の剣を頭上に突き立てる雄姿が目に映った。
本日も当作品を最後まで読んで頂き誠にありがとうございます。
危機的状況に一人の剣客。
不穏な共闘による牙城は崩されるのだろうか?次回へ続きます。
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次回も無事に投稿できれば7月22日20時に更新いたします。
 




