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金色の瞳の剣姫は今日も世界を奔走する  作者: 世良きょう
第六章 奔走ー真実と闇の祭殿を求めて
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第 6話 種族と因縁とーエリン・ラスガレン(闇の森編

呆然と立ち尽くす私達の前を目を合わす事無く、妖精の盾(フェーシルト)は縄で両手首を縛られ歩いて行く。しかし何故、彼がこんな所に?此処は精霊も妖精も関係ない、ましてやカルメンやゼノスの姿も無い、ただのダークエルフの隠れ里だ。

通路の端々から罵倒が飛び交っている、拷問にかけて情報を吐かせろや直ぐにでも始末すべきだとか徐々にそれは苛烈になって行くようだ。


「シツ・・・心配ないから」


助けるべきか如何すべきかと迷いつつ拳を握りしめ、立ち上がろうとする腕をフェリクスさんが掴む。囁かれた言葉を頭の中で浮かべると、ハッとする様な大きな声が廊下へと響く。


「賊が入ったって言うのは本当のようだな」


ゆっくりと廊下を歩き、奥の部屋から現れたのは、船の中で私達にとんでもない密約を交わさせた張本人、イシルウェその人だった。


「イシルウェ団長・・・!はっ、此れから情報を吐かせようとしていた所でした」


「此処では所長と呼べと言ってるだろ?ふむ・・・人間か」


イシルウェは気だるげな表情を浮かべ妖精の盾を見たかと思うと、その視線は私達へと向けられる。

私達が仕組んだと思われたか?イシルウェの此方の反応を探るような視線が絡みつく。

場が静まり、同時に妙な空気が暫し漂うが、其れは彼の笑い声で掻き消えた。

一頻(ひとしきり)り笑うと、私達と妖精の盾を交互に見てニタリと口角を上げた。


「術で物を吐かせる事は容易だが、面白い事を思いついた。お前達、パーティを組め。使える駒は一つでも多いい方が良い」


「見逃してやるから手を汚せと言う事か?」


捕らえられているにも関わらず、妖精の盾は取り乱すどころか、冷静に淡々とイシルウェに尋ねた。


「・・・ふん、自分には加担する道理は無いと言いたげだな。無いのなら作れば良いだけの話だろ?」


イシルウェは懐から札を出し、妖精の盾の首を掴む様に其れを押し付け、聞き取れないような小さな声で短く何かを呟く。すると、札は融ける様に吸収され、代わりに赤紫色の痣が不気味な文様を(えが)き首に浮かあがった。


「此れは・・・呪符か?」


妖精の盾は顔色を一つ変えず、文様をなぞる様に触れ、イシルウェに尋ねる。

その様子を見てイシルウェはつまらなそうに眉を(しか)めると、妖精の盾の顔を自分に向ける様に部下に命じる。


執行人の紋(エクスキューショナー)・・・従わなければ如何なるか解るな?」


イシルウェは強引に顔を挙げさせられた妖精の盾を鼻で笑い、恐怖を煽る様に己の首元に手をあてがい、刃物に見立てて横へ引く。妖精の盾は仮面のせいで表情は読めないが、脅える様子は無い。

なるほど、フェリクスさんが心配無いと言ったのは確かなようだ。それにしても何故、心配無いと解ったのだろうか?


「つまり、胴体と頭がおさらばと言う訳か。なるほどな・・・良いだろう手を貸そう」


その澄ました様子に苛立ったのか舌打ちをすると、私達を睨みつけた。


「フン・・・其処の二人も自分の置かれている立場を忘れるな。今後も傍観して済ませようなんて甘い考えは塵溜(ごみた)めにでも捨てるんだな」


私達へ八つ当たりの様に吐き捨てると、イシルウェは背を向け、部下を連れて廊下を歩き出した。

私は沸き上がる感情を堪え、彼の背中が小さくなっていくのを見送る。

妖精の盾は強引に立たされ、手首に結ばれた縄を引かれ歩くがよろけてしまう。

精霊も妖精も関係ないこの場所へ、しかも単独で危険を冒してまで潜入するのか訊きたくなった。


「如何して此処に・・・」


「ああ、怖かったー!」


メルロスの場違いな声が響く。しかし直後、周囲から刺さる視線にハッとした様子で慌てて両手で口を覆う。端々から、「此れだから若輩者は・・」「問題児が」等と言う言葉が周囲から飛び交う。其れに対して彼女は卑屈になる所か、不満げに頬を膨らませながら周囲を睨んでいる。

しかし其れに気を取られ過ぎた為、妖精の盾に疑問の答えを訊く機会を逃してしまった。


「まあ・・・・良いか」


どうせパーティを組まされる事になるし。後で、ダークエルフ達の目が離れた時にでも訊いてみようかな。


「良くは無いわ」


聞き覚えの有る鋭い声が辺りに響く。すると途端に辺りが静まり返り、メルロスも顔に緊張の色を見せた。姿を現したのは、ご立腹の様子のサエルミアだ。

私達を一睨みすると、サエルミアはメルロスに詰め寄り、胸倉を掴みあげた。


「何をしている、イシルウェ団長がお怒りよ。さっさと人間を連れて行きなさい、これ以上の情けを掛ける事はできないわ。良いわね?」


「副団長・・・」


すっかり脅え切ったメルロスの瞳は絶望の色を見せ、その足元は震えあがっていた。

其れにも限らずサエルミアはメルロスを壁に叩き付ける様に、突き飛ばす。幾ら何でも酷い仕打ちだ。

私は咄嗟に駆け出したが、其れより早くフェリクスさんがメルロスの体を抱き留めた。


「其処で止めてやってくれないか」


「人間に庇われるなんて情けない・・・」


フェリクスさんに庇われたメルロスを見てサエルミアは大きく目を開くと、俯き片手で頭を抑えた。


「私が待って欲しいと頼んだだけです。直ぐに向かいますから、彼女を許してあげてください」


「其れが事実だとしたら、尚更ね」


サエルミアは軽蔑の目線をメルロスに送ると、自分が案内すると言い、私達に付いて来るようにと命令する。私達が連れられる姿を見た周囲から、同様の言葉が囁かれていた。

やはりエルフと友好関係の有る人を・・・と言うより()()()に対する憎しみの闇は深いようだ。



***********************************



案内された場所は会議室の様な場所では無く、雑然と机と椅子が並べられた集会場の様な場所だった。

壁には様々な魔物の解剖図を記した張り紙が張られ、資料棚らしき場所の上には何かの標本の様な物が飾られている。如何にも研究施設と言った所だが、私は正直いって気味の悪さを感じていた。


「さあ、此処に座りなさい」


サエルミアに座る様に指示されたのは椅子では無く、ただの木箱だった。本来は道具入れなどに使用されている物だろうか?此処まで扱いが雑だとは・・・

隣に座る妖精の盾の拘束は解かれていたが、此方に関心を持つわけでも無く腕を組み、仏頂面を浮かべ前方を見つめていた。

場が整うのを待ちつつ考え込んでいると、メルロスが私とフェリクスさんの前にしゃがみ込んだ。


「こんなとこ見られるとまた怒られるけど・・・さっきは庇ってくれてありがとね!」


メルロスはそれだけ(つぶ)くと何事も無かった様に、平然と近くの椅子に座り、小さく欠伸をした。結構ずぶといと言うか、肝が据わっている様だ。

そんな時だった、正面の壇上にイシルウェが立った。部下に命令をすると、目の前の机に布が掛かった何かを机に置かせ、その布を取り払う。現れたのは一番最初に入った部屋にも置かれていた、赤黒い物体が浮く円筒状の硝子だった。しかも別室に飾られていた物より大きく、植物の根の様な物が複数伸びている。


「此れは閑古鳥の心臓(ククルス)、悲願を成す(いしずえ)となる物、いわゆる合成獣の核だ」


「核・・・何でそんな重要機密と言える物を私達に?」


部外者に、しかもエルフと関わりの有る私達に見せるだけでは無く、礎であり核であると知らせるとは狙いは何だろう。信頼は当たり前に無い、知らせても外部に漏らさせない自信があると言う事か。


「此の度の策を成功させれば、この程度の事なら漏洩(ろうえい)しようと問題無い。例え、資料や現物を入手した所で容易く扱える代物でないのでな」


イシルウェは如何にも目当てのものを見抜いたと言いたげに、妖精の盾へと余裕の笑みを浮かべる。

成程、相当な自信を持っているらしい。

この、まるで生きている様に(うごめ)く物体の製造方法を知っても、私は真似して作ろうなんて気は更々ない。ただ、気になるのはセレスの居場所と、無害とは言えない此れの原料とその使用目的だ。


「・・・呪いを掛けられてまで、自慢話を聞くつもりは無いんだが?」


仮面で表情は読めないので何とも言えないが、妖精の盾は動揺する様子を見せる事無く淡々と答える。この開き直りと取れる発言に、イシルウェは苦虫を潰した様な表情を浮かべ黙り込む。此れには私達は苦笑いを浮かべるしかない。


「其れより、話を進めないか?策の内容とククルスって言う物の使用法を先に知りたいし・・・なっ?」


フェリクスさんのお蔭で、(ようや)真面(まとも)に話が進み出す。軌道修正に成功し安心した。ともあれ妖精の盾の潜入理由は不明、合成獣の事でないとすると何だろうか?

(ようや)く始まった会議は順調に進み、様々な情報が私達の前で(つまび)らかになって行く。

古びた地図を広げ、指をさした先はエルフの国との境の森林。彼らの言う悲願が、エルフとの遺恨が繋がる説が濃厚となった。

目的はあくまで採取らしい、私達が標的は世界樹のマナを与えられた特殊な魔物で、ダークエルフ達の侵入を阻害しているらしい。作戦の手順は対象外の私達が標的の命の源を大樹からククルスを使用し移し替え、後はダークエルフ達で殲滅(せんめつ)し魔結晶を入手すると言う戦略だそうだ。


「うーん、植物系で大樹を命の根源にする魔物と言えば・・・ドライアド?」


次の日に備えて一応は部屋が用意され、監視付きだが敷地内を歩く事が許された。その監視は楽し気にフェリクスさんと雑談をしている。監視役とは・・・?

首を捻ると、中庭に差し掛かった所で妖精の盾が壁にもたれ掛り、此方を見ているのに気が付いた。監視役をまいたのかな・・・

私はメルロスに庭に行く事を告げてから近寄ると、妖精の盾の方から声を掛けてきた。


「俺なりに役目を果たしたつもりだが・・・お前は未だに精霊王の力を完全に御せていないのか」


「え・・・?」


妖精の盾は一言だけ告げると溜息をつき、困惑する私を背に立ち去る。

その意味を考え見上げる空は、妖精の瞳の様に銀色に染まり、不思議な光を宿し輝く。

此れは真実を知る為の切っ掛け、何故かそんな予感をさせる敵地で過ごす夜だった。

本年も当作品を読んで頂き、真にありがとうございました。

色々と拙いところが有ると思いますが、宜しければ来年もお付き合い頂ければ幸いに存じます。

それでは皆さん、良いお年をお迎えください。


**************************


思わず種族間の争いに加わる事になった、アメリアとフェリクス。

突然現れた、妖精の盾と共に巻き込まれた、争いの嵐は二種族の行方を何処に行きつくのだろうか。

そして、アメリアに告げられた意味深な言葉の意味とは何か?

*次回へ続きます*

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