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金色の瞳の剣姫は今日も世界を奔走する  作者: 世良きょう
第六章 奔走ー真実と闇の祭殿を求めて
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第 4話 密約ー?????????編

頭は未だに重く、体は鉛の様に重い。ただ、体に当たる感触は確かに固く平坦な物だった。しかし、妙な感覚がする。ふわふわと何かに浮かんでいる様な・・・浮遊感と言う感覚が当てはまる。

軽い眩暈(めまい)を感じつつ足を動かすと、突っ張るような感覚と共にガキンと金属音が響く。ゆっくりと瞼を開けると、ぼやけた視界に入ったのは木の床と片足に()められた足枷。床が揺れたかと思うのと同時に潮の香りが鼻を(くすぐ)った。


「船か・・・死なずに済んだのは良かったけれど」


牢の中へと視線を泳がす、一緒に魔物に呑まれたフェリクスさんの姿は無い。勿論、素材として狙われていたセレスの姿も無い。彼女を魔物として見ているダークエルフ達に、気付かずに魔結晶を取り除こうとされていたら・・・

故郷への連絡も無いまま連れ回している事への罪悪感もあるが、何より友人の一人を命の危機に晒している事に居ても立ってもいられず足枷を引きずり、鉄格子に手を伸ばす。


「・・・止めておいた方が良いよ。奴等はかなり耳が良いみたいだからね」


聞き覚えがある声を耳にした直後、蜥蜴男(リザードマン)の体に鮫の頭がついた魔物が突進してきた。

ガシャンと金属が(きし)む音が響き、生臭い臭気を吐きかけられる、その表情はいっさい窺えない。

其れは暫く私を凝視すると、脱獄の意思が無いと悟ったのか、のろのろと鉄格子から離れていった。


「これは・・・キメラ・・・じゃなく合成獣(シンセシスビースト)でしたっけ?」


その私の問いかけに隣の牢から大きなため息が漏れた。


「・・・その通りだよ。しっかし!はあ、こー言う時の第一声は「私、一人だけだと思って心細かったんですー」でしょぉ?!」


危機的な状況にも関わらず嘆く声に私は確信した。ああ、隣は間違いなくフェリクスさんだ。

何となく、ダリルが怒る気持ちが解ってしまいそうな気がした。


「あはは・・・一人だけでも無事を確認できたのは安心しましたよ」


「一人だけ・・・っと言う事は、やはりセレスは別の場所か。オレもアメリアちゃんより、一日早かっただけだしな・・・」


「武器や防具一式、盗られているうえにこの状態じゃ・・・しかも、此処は船の中の様ですし」


「よし!お兄さんに任せなさい!」


壁越しで顔が見えなくとも、フェリクスさんが可笑しなことを考えて目を輝かせているのが何故か容易に想像できてしまう。

如何なるものかと考えていると、あの魔物の声だろうか?牢の通路の先から奇妙な声がしたかと思うと、扉が開く音と共に靴音が響いた。


「あら・・・目が覚めているなら都合が良いわね」


私達の前に現れたのは、私達を誘拐した張本人、サエルミアだった。外套は羽織っておらず、銀色の髪に褐色の肌、釣り上がった青緑の瞳は光の加減で紫がかって見える。

すると(おもむろ)に腰のベルトから鍵束を取り出し、驚いた事に私達の牢の扉を開け始めた。


「如何言う事・・・?」


脱獄が可能な状況に在るにも関わらず、不思議な事に先程の合成獣が襲ってくる気配が無い。此れは罠?サエルミアは杖を取り出すと、其れを私達へと向けた。


「其は戒め 咎人と罪を繋ぎ蝕む物 許されざる者に刹那の許しを与えん【釈放(リリース)】」


杖先から閃光が放たれたかと思うと、足枷の輪がボロボロと腐食し崩れ落ちて行く。其れは輪から鎖へ、そして重りへと広がり朽ちて行った。


「オレ達を逃がすつもり何て・・・事は無いよな?」


フェリクスさんがそう尋ねると、サエルミアは呆れ果てた様な表情を浮かべ失笑した。


「別に構わないけど・・・此処は海上よ、何処に逃げるつもりなのかしら?」


やはり、船の中か。私達を牢から出す理由は何か。狙いは私達から得られる情報だろう。必要する可能性が有る物は十中八九、セレスの事に違いない。


「・・・要件は何なの教えてください」


「ふふ、勘が良い子。よく現状を自覚しなさい、自分達が捕らわれの身である事を。さあ命令よ、逆らわずに大人しく付いて来なさい」


私達は(ひるがえ)る銀糸の髪を眺め、その後を付いて行く。この先で待っている物は何か、私達は不安を呑み込み船内を進むのだった。



*********************************



サエルミアの後を追い、揺れる船内を歩くと、所々に禍々(まがまが)しい術具の様な物が飾られているのを見かけた。呪術は闇魔法に属すると村で習った事がある。推測でしかないが、カルメン達と何らかの関連性があるのだろうか?

私が足を止めると、サエルミアは立ち止まり此方へ振り向いた。


「闇も世界を構成する元素の一つ、其れが故に信じ求める存在も必要不可欠な物、さして珍しいものでは無いでしょ?さあ、良いから早く付いて来なさい!」


サエルミアは少し苛立ったような表情を浮かべると、カツンと靴を鳴らし(きびす)を返す。如何やら、あまり触れられたくなかった部分の様だ。

暫く進むと、船長室らしき場所へ招かれた。複数の護衛に囲まれ、中央の机に肘をつき、豪華な赤いソファに腰を掛けた男性が、見下すような目で此方を見て不敵な笑みを浮かべる。


「遅くなり大変申し訳ございません、イシルウェ様の御命令通り人間を連れてきました」


サエルミアはしゃがみ膝をつくと、(うやうや)しく(こうべ)を垂れる。イシルウェと呼ばれた男性はサエルミアに下がるように命じると、視線を私達へと移した。


「其処に腰を掛けるがいい」


彼が指をさす先には二脚の木製の椅子が並べられており、私達は肩を掴まれると強引に座るように促された。


「・・・私達に何か様ですか?」


「くくく・・・そう焦るものでは無い。俺の部下の手違いで、君達と御友人を攫ってしまった事を謝罪したくてね。人型を取れてはいないとはいえ、亜人と魔物を見間違うとは申し訳ない」


銀髪に褐色の肌、何処か怪しい光が灯る赤紫の瞳。其れは(かつて)て、邪神の許に下った者の特徴を感じさせた。何方にしても、決して友好的な相手ではないのは確かだ。

恐らく、牢から出したのは謝罪の為だけではないだろう。


「そう言う事なら、オレ達三人をフォンドールへ帰して貰えないだろうか?仲間が心配しているんでね」


フェリクスさんは眉をやや(ひそ)め、出方を探る様な視線を相手に送る。其れに対し、イシルウェは目を細め睨みつけると、もたれ掛かっていたソファの背凭(せもたれ)れから体を起こすと、ドカッと片腕を机に突きたてる。


「やれやれ・・・お前達は何も解っていない様だ。俺達には成し遂げねばならない悲願がある、その(くわだて)ての一部が知られたとなりゃ、おいそれ逃がす訳ないだろう?」


つまり謝罪は、本題の為の前座に過ぎないと言う事か。そうなると、セレスを私達から引き剥がした理由は明白だ。


「つまり、セレスは人質・・・・。私達に何をさせようと言うんですか?」


「ほう、話が早くて助かるな。国に戻ったら、魔獣使い(テイマー)のお前には合成獣の魔物(ざいりょう)を二人で集め借りを手伝って貰う。手懐ける事が出来るなら、容易だろう?」


魔獣使い・・・其処の誤解は未だに解けていないらしい。いや、逆に此れは幸運なのかも知れない、魔物を狩ると言う事は見張りはつけど、拘束されずに動けると言う事だ。先ずは機を見て探りを入れてみよう・・・

私はフェリクスさんの脇を肘で突くと、口裏を合わせる様に(ささや)き頷き合う。私はイシルウェが怪訝そうな視線を送るのを感じ、視線を正面に戻した。


「その件、お引き受けさせて頂きます」


(よどみ)みなくハッキリと承諾の意を告げると、イシルウェは腹の内を探る様にねっとりと私達を見つめ鼻で笑い、腕を組むと再び背凭(せもたれ)れにもたれ掛る。


「そうか、それでは都に着き次第、追って詳細を話す。サエルミア、彼女達を空き部屋に案内しろ、見張りに合成獣を付けておけ」


「はっ、承知いたしました」


サエルミアは深々とイシルウェに頭を下げると、私達の世話を任された事が不服だったらしく、首領に背を向けると不機嫌そうに顔を(しか)め睨みつけてきた。

其れでも根は真面目なのか、私達をぞんざいに扱う事は無く、船の隅の小さな二つの部屋へと案内してくれた。


「・・・ありがとうございます」


「・・・礼など必要ないわ、私はイシルウェ様の命に従ったのみよ。それと言っておくわ、ダークエルフ(わたしたち)は他種族となれ合うつもりは無い。人間もドワーフも獣人も、特にエルフなんかと行動している連中とはね」


エルフに何の恨みが有るのか不明だが、ケレブリエルさんと一緒に居た事が引っ掛かったらしい。革袋から召喚石を取り出し使用すると、出てきた合成獣に見張りをする様にと命じ、私達に到着するまで部屋で待機する様に言い付けた。


「セレスは無事なんだろ?会う事はできないのか?」


「・・・応える義務はない。自分で考えればいいわ」


去り際にフェリクスさんが尋ねると、サエルミアは振り返る事無く一言だけ残すとその場を去って行った。


「・・・ある程度、制限があるとはいえ多少は自由が利く様になりましたね」


「・・・そうだね、取り敢えず今後の事を話さないといけないな」


「其れなら私の部屋へ来ませんか?今後の事を話し合いたいですし」


そう言うとフェリクスさんは何故か目を丸くする。如何したのだろうかと私が顔を覗き込むと、目を逸らし溜息をつくと顔を両手で覆った。


「・・・余計な事を考えてずに真剣に話し合おうね」


「え?ええ?はい、勿論」


確かに真剣に考えなくてはならない、セレスの事に合成獣の秘密と彼らの悲願とは何か?

私達は皆の許へ戻り、最後の祭殿である闇の祭殿を探しあてる旅にどうやって戻ればいいのか。割り当てられた部屋に風が吹き荒んだ。

本日も当作品を最後まで読んで頂き真に有難うございます。

今後も良い作品を書く為に日々、努力していく所存ですので此れからも何卒宜しくお願い致します!


****************************


巨大生物に呑まれ、あわや絶体絶命と思いきや、目覚めたのは敵陣の船の中。

行違いと不運に巻き込まれる中、何やら憎悪と因縁が渦巻く。エルフを含む他種族への憎しみは何処から来るものなのか?結晶獣と合成獣の関係とは?

次回へ続く・・・

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