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金色の瞳の剣姫は今日も世界を奔走する  作者: 世良きょう
第一章 光の国 カーライル
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第9話 王都エーリュシオン -中編ー

その後もその男性は諦める事無く絡んでくるので正直、ウンザリしていた。

しかも、いつの間にか近くに来て私の隣の席に座っている。

「・・・・・・・」

怪訝な表情で彼を見るが、一切通じていないみたい。

ジッと私の瞳を見つめると、泣き黒子(ぼくろ)のある片方の目でウィンクをしてきた。

正直、どこかに行ってほしい。

その時、バックヤードからクリスティアナさんが出てきた。

「まったく・・・・相変わらずですね。シーラン様」

ナンパ男もとい、シーランさんをクリスティアナさんは眼鏡の下から冷たい目線を送り、見下ろした。

「誤解しないでくれよクリスティアナちゃん。この子達がギルドマスターの事を話しているから、少しだけ話を聞こうとしただけだって」

「どうでしょうね・・・」

「もしかして妬いちゃった?」

それに対しクリスティアナさんは答える事は無く、私達に謝罪の言葉と「もう少々お待ちください」とだけ言い残し、先程からカウンターに並んでいたパーティーの下に向かった。

残されたシーランさんはと言うと捨てられた子犬のような目でその後姿を見ている。

ああ言う大人にはなりたくないなと思った。

「じいちゃんの弟子にギルドマスターがいるなんて思わなかったわ」

「だよなー」

ダリルと一緒にランドルさんを待っていると・・・

「へぇ、つまりはアメリアちゃんの兄妹弟子か」

シーランさんが落ち込んでいたのが嘘のようにひょっこりと私とダリルの間に入ってきた。

「・・・・・立ち直り早いですね」

「そう言えば名前を名乗っていなかったね。フェリクス・シーランだよ。気軽にフェリクスお兄さんと呼んで良いからね!」

「お断りします・・・」

横を見るとダリルが「相手にすんなよ」と目配せをし、うったえて来ている。

答えてしまったんだから仕方ないじゃない。



****************************************



ギルドのバックヤード方から扉が開く音がしたかと思うと、栗色の髪に穏やかな顔をした壮年の男性が現れた。

「またせて悪かったね。アメリアさんとダリル君だね?初めまして、ランドル・サザランドだ」

ランドルさんは私達に向かって微笑むと、拍手を求めてきた。

「初めまして、アメリア・クロックウェルです。お会いできて光栄です」

「・・・ダリル・ヴィンセントです」

「久しぶりだな、ランドル」

それまで、壁際で私達のやり取りを静観していたウォルフガングさんが(ようや)く口を開いた。

何故、フェリクスさんに何も言ってくれなかったんだろうと思っていると、私の顔を見てニヤリと笑った。

そう言えばこう言う人だったなと馬車の野営地での事を思い出した。

「よお、ウォルフガング。息災そうでなによりだな」

二人は向き合うと腕を組みあってニカッと白い歯を見せて笑う。

「アメリアさん、師匠からの手紙は読ませてもらったよ。事情は把握した、ダリル君と一緒に祝福の儀が終わるまで私の屋敷に泊まるとよいよ」

それに驚いたのは私よりダリルだった。

「へっ?師匠は?」

「オレは村に帰る連中の馬車の護衛をしなきゃならないんだ。すまないな」

「そうか・・・」

「なんだ?不安か?」

そのウォルフガングさんの言葉に「んな訳ないだろ」とダリルが拳を突きつける、それに呼応するようにウォルフガングさんが拳を突き出した。本当に師弟の絆って本当に良いものね。

その後、話はトントン拍子で進んでいった。

ギルドではゆっくりと話していられない為、つもる話は屋敷でしようと言う事になり、夕方に使いの人が迎えに来るまで自由時間と言う事になった。

ウォルフガングさんとは馬車の出発時間の関連で早々に別れの挨拶を済ます事になってしまった。

短期間とはいえ、一緒に旅をした仲だもの、帰りの馬車で再開はできるとは言っていたけども少し寂しくなってくる。

しかし予想外の事が起きてしまった。

「シーランさん、本当に宜しいのですか?アメリアさん達を王都を案内する役をかって頂けるなんて」

「勿論だよ。丁度、暇を持て余していたところだからね。それに子猫ちゃんの案内なら何時でも歓迎さ」

ランドルさんがフェリクスさんに王都の案内を依頼してしまったのだ。

「そんな顔をしないでも大丈夫だよ、こう見えても身元がしっかりしている御人だ。安心して王都を散策して来ると良いよ」

ランドルさんの笑顔は何故か穏やかなのに妙な、有無を言わせない圧力のような物を感じる。

さっきから私達相手に騒いでいるフェリクスさんを厄介払いしたいとか、そんな訳じゃないよね。

気のせいか私達を送るギルド職員の皆さんの顔に安堵の色が見えた気がした。



****************************************


ギルドを出てからはやたらとフェリクスさんは機嫌が良いようで鼻歌交じりに私の隣を歩いている。

それと打って変わってダリルは仏頂面をしながら黙っている。

人混みの中に一瞬、見覚えのある白銀の髪を見たような気がしたけど、アールブヘイムでの一件を思い出し、慌てて二人の後を追った。

先ず案内されたのは商店街、武器や防具は勿論、魔結晶を売る魔法使い(ウィザード)が営む店にヒポグリフ等の騎乗可能な魔法生物等を販売や貸し出す店などがある。

そこで、ふとケイティーの顔が浮かぶ。

ジェニーさんの弟子になると言ってヒポグリフの足に掴まれながら飛んで行ったから、私達より先に王都に来ているはず。

「あの、ストライドって言う苗字聞いた事ありますか?」

「ん?何だい子猫ちゃん」

「子猫ちゃんは止めてください」

この人は何でこんなに私の事を気に入っているんだろう・・・

「良いから答えてやれよ」

ダリルの足がフェリクスさんの背中に減り込む。

隙を突いた一撃にフェリクスさんはよろめきながら背中をさすり、商店の方を指さす。

その先に在ったのはスパイスの香りがするキツネ色に焼かれた鶏肉を売る屋台だった、鶏肉を貫く鉄串に美味しそうな油が滴っている。

「・・・・・其処じゃないよアメリアちゃん。その奥の壁を見てごらん。後、口の周りも拭いた方が良いよ」

フェリクスさんは私の視線の先が違う事に気が付いたのか、少し困り顔をしながら私にハンカチを差し出す。

「う・・・何時の間に!」

口の端からキラキラと一筋の滴が垂れていた。

店の奥の壁を見ると一枚の張り紙があり、「御用があればストライド商会までご連絡ください」と書かれた張り紙があった。

「王都でも一二を争う大商人の家の苗字さ。何か用事があるなら案内するよ?」

「いえ、その・・・義妹が其処のジェニーさんと言う方にお世話になっているんですよ」

「へえ・・・あの変わり者のお嬢様の知り合いだったのか」

「「お嬢様?!」」

王都で一二を争う商会の関係者だと言うだけでも驚いたのに、まさかの従業員ではなくお嬢様だったとは思わなかったな。

「ん?義妹(いもうと)ちゃんに会いたい?」

フェリクスさんが優しく問いかけてくる。

「そうですね・・・」

返事をしようとした途端、グウウウウとお腹の虫が鳴く。

それを聞いてフェリクスさんはお腹を抱えて笑い出す。ダリルにいたっては顔に「またかよ」と書いてある。

は・・・恥ずかしい恥ずかしくて死ねる!

「そう言う素の部分が見れるようになったって事はオレに気を許してくれた証拠かな?」

「いや、その・・・さっきのローストレッグ買ってきますね!」

恥ずかしさの余りにいたたまれず、先程の店へ駆け出す。

しかし財布を出そうとするけど鞄の中を幾ら探してもお財布が見つからない。

青褪(あおざ)める私を見て、店員さんが(いぶ)しげに見てくる。

「どうしたんだ?」

頭を抱えながら振り返ると、ダリルとフェリクスさんが後ろからやってきた。

事情を話すと二人も首を(かしげ)げる。

落ち着いたところで話そうと言う事となり、商店街とアカデミーのある学生街の境目の広場に移動する事になった。ありがたい事にローストレッグはフェリクスさんが(おご)ってくれた。


**************************************


パリパリと裂ける鳥皮と溢れるスパイスと鳥の肉汁を堪能しつつ、王都についてからの事をダリルと一緒に思い出していた。

「どうだ思い当たるふしはあるかい?」

「俺はねえな」

「思い当たるふし・・・・・・あ!」

ふと馬車の停留所での事を思い浮かんだ。

「馬車の停留所で帽子を被った紫の髪の男の子にぶつかったんですけど・・・・まさか」

それを聞いてフェリクスさんは顎に手を当てて考え込みだした。

「あそこは旅行者を目当にする奴が居るんだよな・・・。その特徴からするともしかしたら、犯人は()()()()()()()の孤児かもしれないな」

「魔族?!」

まさかフェリクスさんの言葉にただただ、私とダリルは困惑の色を隠せなかった。

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