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42(最終回)

※そのうち錦糸町探偵物語編とか兵役替え玉ビジネス編とか書くかもしれませんが、

ひとまずここまでで完結とさせて頂きます。お付き合い頂きありがとうございました。

※ついでに新作始めました。詳細は本文より下のリンクにて。

 さあて楽をするために頑張るぞ!

 と、私は兜の緒を締め直して励み始めた。


 スラム街の屋敷を本格的にブックメーカーズギルドの拠点として、スラム街の風紀を取り締まり、あるいは浮浪者達への生活補助や仕事の斡旋をし、あるいは場外竜券場を作ってラングさん達やトラインさん達による競竜の再現実況を講演できる場所を確保し……。


 と、目まぐるしく動き回っていたのだが。


「アキラさん、大変なことが起きました」

「どうされました、ご主人様?」

「気付けば休みの期間も終わってて……学校サボっちゃってたんですけれど」

「……なるほど」

「履修申告も、その……忘れてて……」

「はい」

「……どうしましょう?」

「どうしましょうねぇ……」


 屋敷の中に作ったアキラさん用の部屋で、私は盛大に溜め息を漏らした。


「あー、もー! 私の人生ちょっと激動に飲まれすぎじゃないですかぁ!? エンライさんに投げようとしても会議で全会一致で否決されちゃったし!」

「それは、ええ、ご主人様以外の人が務めるというのは無理というものです」

「それがおかしいんですよ!

 なんで私みたいな小娘に唯々諾々と従うんですか!」

「それはご主人様がご主人様だからとしか」

「はぁー、お金は増えるけど公爵様に帳簿見せてるから迂闊な使い方できないし、まずギルドだってまだまだ不安定だからプールしておかないと心配だし……」

「資産運用や資産のセキュリティをもっと考えるべき時かも知れませんね」

「それもそうですけど! 心配事が多すぎて学校行ってる暇が無いんです! 明日の宿題どうしようとか隣のクラスのイケメンに壁ドンされてドキドキするとか、そういう青春が吹っ飛んでる状況はどうかと思うんですよ!」

「ご主人様」

「なんですか!」

「学校に意中の人がいらっしゃるなら、現金マネーと権力パワーで……」

「やりませんよ! ていうかいませんよ!」


 そもそも学校に友達が居ないのだ。

 トラインさんとキトゥリスさんは一応学友なのだろうが、もう首までどっぷりノミ屋稼業仲間の方に染まっているので学生らしい付き合いは全く無い。というかあの二人はほぼほぼデキてるので間に入りにくい。


「まあご主人様、ご心配には及びません。ラーディ先生とジャメール公爵に話を通して、一年間休学ということにしています。有意義な学外活動ということで宿題やペナルティなどもありませんよ」

「え、マジですか? やったー!」

「ええ、これでギルド長としての業務に専念できますね」

「やだー!」


 く、くそう……なんて周到な執事なのだろう……。

 報酬らしい報酬を与えられてないのに有能すぎる。


「あ、そういえばアキラさん……ちょっと気になってることがあったんですが」

「なんでしょう?」

「金貨とか銀貨とか、あるいは何か金目の芸術品とか、アキラさんの報酬代わりになるものは割とあるんですが……本当にいらないんですか?」


 アキラさんへの報酬をどういう形にするか、実は私は何度か提案をしていた。

 だがその都度、「大丈夫です」といって首を横に振られていた。


「銀や金を頂いても、私の世界では換金が難しいんですよね。絵画や彫刻をもらっても鑑定しにくいでしょうから、これも持って帰る意味があまりないので……」

「でも……どうやってアキラさんは生活してるんです? 元からお金持ちなんですか?」

「いやまさか。私の向こうの世界での仕事は……」

「仕事は?」

「動画配信者です」


 どうがはいしんしゃ。


「……って、なんですか?」

「何度かスマホやカメラで撮影しているでしょう?

 あれをいろんな人に見せて稼いでいるというわけです」

「はぁ」


 そういえば競竜の動画などを色々と保存していた。

 あと、たまに私が魔法を使う姿や、何故か私がアキラさんの世界の料理を食べる姿などを撮影したこともあった。


「こちらの仕事も大変順調でして、マイリスト登録者数も着々と伸びています」

「はぁ……」

「定期的な収入となっているので大変助かっております」


 なんだかどういうものなのか今ひとつわからない。

 私の姿が異世界の人に見られるのはこそばゆい気もするが、それでアキラさんの報酬になるなら構わない。この人にはたくさん助けてもらっているのだから。


「すみません、アキラさん」

「はい」

「よくわからないんですが……。

 私の仕事が増えたり妙な事件やトラブルに巻き込まれたりとかは無いですよね?」

「ええ、それはもちろん」


 アキラさんは大変良い笑顔で頷いた。


「じゃあ、うん、良いです」

「ありがとうございます」


 アキラさんの世界は色々と複雑怪奇だ。

 美味しい物も珍しい機械もたくさんあって、ちょっと理解が追いつかないところがある。

 まあ、アキラさんのやってることだ、私に不利益はないだろう。

 たぶん。


 このしばらく後、私が地球の動画投稿サイトを閲覧して、アキラさんが「テレサちゃんの異世界チャンネル」という動画チャンネルを開設してマイリスト登録者数100万人以上を得ていることに気付くのだが……それはまた別のお話である。


 ともあれ、現時点の私はとにかく忙しくてそこに気を回す余裕は無かった。


「さて、ご主人様。そろそろおやつの時間にしましょうか」

「はい!」

「今日はプリンを買って参りました」

「やったぁ!」


 仕事の合間の甘いひとときを堪能しながら、私の独白をここで締めくくりたい。

 明日も平穏無事でありますように。

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