表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

意味がわかると怖い話もどき3

作者: 愛犬家

自己満足品質です。

温かい目で見てやってください。

私はしがない会社員(♀)である。

突然だが私にはここ最近悩みがある。

数日前、日課として寝る前に携帯電話で新着のメールを確認したところ一件のおかしなメールが送られてきていたのだ。

全く知らないアドレスから送られてきており、内容は私の事が好きだというものだった。私は内心訝しく思い、そのメールを削除してその日は床に就いたのだが、翌日の同刻にまたあのアドレスから着信があったのだ。

内容はこれまた私への愛の言葉だった。ここにきて私は、これはいわゆるストーカーというやつかと思い至った(メールが送られてきただけでストーカーと言えるのかは怪しいが)。警察へ相談に行こうかと思ったが、テレビなんかで、直接的な被害に遭っていない限り警察はストーカーに対して働きかけられないというのを見たことがあったのでそれも憚られた。

そこで私は取り敢えずメールを返し、なんとかストーカー行為をやめるよう説得してみて、無理なようであれば、ダメ元々でスマートフォンを持って警察へ行こうと決めた。


『誰ですか?』


と私が送信すると1分と経たず返信が来た。


『返信有難うございます。僕あなたを街中で見かけて一目惚れをしてしまいました。好きです。いえ愛しています。付き合ってほしいだなんて無理は言いませんのでメールのやり取りだけでもしていただけないでしょうかお願いします。』


見知らぬ男とメル友に、というのも十分に無理な話だろうと思うと同時に、これは早めに諦めさせなければ、そのうち家にでも押しかけてくるのではという恐怖が私の中に芽生えた。と言うのもら私は徒歩通勤をしており、会社が終わるとまっすぐに家に帰るので、この修也という男が『街中で見かけ』たのは通勤時か帰宅時の私ということである。ということは、どちらにしてもこの男は近所に住んでいる可能性が高いのである。


『質問に答えて下さい。』


『修也といいます。』


『修也さん。申し訳ないのですが、私はメールのやりとりもするつもりはありません。もうメールを送ってこないで下さい。』


『気を悪くされましたか。ごめんなさい。本当に突然ですみません。でも僕は本当にあなたが好きなんです。どうかわかって下さいませんか?。』


この男はなんなのだろう。私を気遣うようなことを言っておきながらめちゃくちゃな理屈で自分の意見を通そうとしている。


『本当にすまないと思っているのなら諦めてください。』


『そんな。僕はただあなたのことが好きなだけなんです。』


『しつこいです。これ以上メールを送ってくるようであれば然るべき対応をさせていただきます。では。』


そう送った後でこれは少しまずかったかと思った。もしこの男が街中で見かけたというのが帰宅時の私だったとすると、私の家まで尾行されていたかもしれないのだ。方法はわからないが私のメールアドレスをどこかから手に入れてきたのだ、その可能性は低くないように思える。しかし今更訂正すると相手に付け入る隙を与えてしまうのでやめておくことにした。返信を待たず私は床に就いたが、目が冴えてなかなか寝付けなかった。


朝目が覚めると頭がぼんやりとしていた。

あまり眠れなかったのが原因だ。いつもの癖でメールを確認しようとし、慌てて手を引っ込めた。今日も仕事だ。もしメールが届いていたら、そのことで仕事に手がつかなくなる恐れがある。そうでなくても寝不足で参っているのだ。これ以上悩みの種を増やしてはいけない。メールの件は昨日で終わったのだと自分に言い聞かせ、味のしない食パンを無理やり牛乳で胃に流し込んだ。その後着替えを済ませ、歯磨きをし、荷物を持って玄関へ向かい、靴を履いてドアの鍵を開け、部屋を出た。会社へ向かう途中何度も後ろを振り向いてみたが、後をついてくるような者は見当たらなかった。


会社が終わり、帰路に着いた。ここでも私は何度も後ろを振り向いてみたが、結果は今朝と同じだった。重い足を引きずりながら、なんとか自宅の玄関にたどり着き、ドアを開け、靴を脱ぎ、その足で風呂に向かった。風呂をはる気力も湧かなかったのでシャワーだけで済ませた。風呂から上がると、冷蔵庫から寝酒にと梅酒を取り出し、ソファーに腰掛ける。あまり気が進まなかったが、メールの確認をすることにした。友人たちからのメールを無視しておくのはあまり良くないと思ったからだ。また、心のどこかではあのアドレスからの着信がないことを確認して早く安心したいという気持ちもあったのかもしれない。新着メールを確認すると同時に背中に寒いものを感じた。あのアドレスからの着信があったのである。件名は『最後のチャンスをください』だった。恐る恐る開いてみると内容は次のようなものだった。


『僕はただ、本当にただあなたのことが好きなだけで、僕の気持ちをそのまま伝えたかっただけなのですが、それは独りよがりな行動だったのかもしれません。考えてみれば、顔も知らない男からのメールなんて怪しく感じて当然ですよね。あなたのことで頭がいっぱいだった僕はそんなことに気づくことさえできなかったのです。ごめんなさい。あなたにいくら拒絶されても僕の気持ちが全く変わらないのです。身勝手なお願いだとは重々承知の上でお願いです。一度だけお会いしていただけませんか。会話もして下さらなくて結構です。ただ一度だけあなたの顔をまっすぐに見てみたいのです。それからはメールも送りません。居を移し、金輪際あなたの近くにも寄り付きません。どうかお願いします。』


この男は本当に何を考えているのだろう。私はこのメールを見てつくづく呆れた。泣き落としでどうにかなる問題ではないし、要求もメル友になることから実際に会うことにステップアップしている。メールでやりとりするのと実際に会うのとでは危険度がまるで違うではないか。一度顔を見るだけでいいと言いつつ、危害を加えられないと誰が言えよう。

私はふつふつと沸き起こる怒りを抑えつつメールの返信を書いた。これに応えないと結局今まで通りになってしまうと思ったからだ。


『まず、あなたとは会いません。危害を加えられないとは言い切れないからです。メールももう送ってこないでください。このメールに対しての了解のメールもです。以前言った通りこれ以上メールをしてくるようであれば警察に届け出ます。さようなら。』


私はそれを送信し終えると携帯電話をテーブルに放り、梅酒を煽った。20秒程して返事があった。


「わかりました」





解説(作者の中での正解)


文中ではメールの内容は『』で囲まれている。なので最後の「わかりました」はメールの内容ではなく人の発した言葉であることがわかる。そしてその人というのはストーカーの修也である。

Q.何故修也が家にいるのか?

A.寝不足の主人公は家から出る際、鍵を開け、そのまま出て行っている、つまり鍵をかけていないので主人公が外出している間は出入りし放題だった。

Q.何故修也は主人公の家を知っていた?

A.修也は主人公の予想通り、街中で主人公を見つけた日に家まで尾行しており、主人公の家を知っていた。




余談。

前書きにもあるこの物語を書くきっかけとなった作品というのは、歌野正午さんの「Dの殺人事件まことにおそろしきは」に収録されている「椅子?人間!」です。

この作品を書く間に読了したのですが、大変面白かったです。僕は歌野正午さん、綾辻行人さん、乙一さんの作品を主に読んでいます。3名とも素晴らしい作家さんですが僕が独断と偏見でおすすめの本を書く一冊ずつ紹介したいと思います。

まず歌野正午さんですが、「死体を買う男」が個人的には好きです。まずタイトルからそそるものがあり、タイトル買いする方もいると思います。中身もタイトルから高まる期待を軽々と飛び越えていくほど素晴らしいです。トリックが読めたと思いきやひらりとかわされ、逆にフックでトドメを刺される感じでした。読み終えた後は、心の中で「(すげー!おもしれー!)」と言いながら小躍りしたものです。

次に綾辻行人さんですが「十角館の殺人」が僕のお気に入りです。これは言わずと知れた名作なので、既に読まれた方もおられると思います。この作品に関しては僕から言うことはないです。読んでください。

最後に乙一さんです。実を言うとこの3名の中では僅差ですが一番好きだったりします。「失はれる物語」、「箱庭図書館」などの短編集も素晴らしい乙一さんですが、「暗いところで待ち合わせ」が、個人的には一番好きです。ミステリー要素も交えた心温まるお話です。ふとした時に読み返したくなる一冊です。

以上3冊が特におすすめの本です。他にも素晴らしい作品がたくさんありますのでぜひ読んでみてください。長々と書いて申し訳ないです。ここまで読んでくださりありがとうございました。あと、僕ごときが本の紹介をしてしまってすみません。しかし僕ごときが読んでいてもこの3名の素晴らしさは変わりません。

見直しは一応してありますが見落としがないとも限りません。予めごめんなさいと言っておきます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ