二 一条湊とA-kiko
一条湊とA-kiko。
A-kikoは五十四秒の短時間睡眠を終了し、身体チェックと店内走査を行った。
自らが着用しているストライプブルーの制服に汚れは無く、店内の清掃や商品状態も共に異常なし。
彼女が担当している特定小売店は客を迎え入れるに相応しいコンディションを維持していた。
自動ドアが左右に開かれ一人の客が入って来る。
A-kikoは自らの記憶域に登録されている膨大な客録データーベースを検索し、瞬時にその客を特定した。
来店数は千回を数え、客単価、店内滞在秒数、会話時間、視線交差回数、おつり渡し時の身体接触数……いずれも二位以下の常連客を大きく引き離している。
キングオブ常連様御来店。
当店の売上に大きく貢献している常連客がいつもどおりの時間どおりに来店したのだ。
客別好感度パラメーターに従い、最上級の笑顔とやや媚びた甘ったるい声でA-kikoは挨拶した。
「いらっしゃいませ。湊さん♪」
「……ぁ。う……こん………わ」
中肉中背の印象に残らない凡庸な顔立ちの男はいつもどおりにやや眼を逸らしながらA-kikoの挨拶に応えた。
今日はどのくらいの客単価になってくれるのだろうか。
A-kikoは特定用途NPCにしては珍しくやや高揚した自らの心理状態を自覚していた。
特定用途NPC。
一言で言うと人型自販機。勿論、身体から缶ジュースなどを出すのではなく商店に付属の会話機能付き人型装置。
用途ごとに特化された語彙と思考法則性、わずかばかりの自我が植え付けられた人型生命体。
見た目は人間とほぼ変わりはない。
感情の起伏はやや平坦であり、食事などの身体のメンテナンスは踵に設けられた出入コネクターを店内のレジスターの足元に設けられた専用のステーションに接続して行う。
基本的に二十四時間勤務を一体のみでこなすために睡眠は品出しや清掃などの店内業務のローテーションの合間、客が途切れた時にステーションと接続し秒単位で実行する。
一条湊はこの仮想世界に閉じ込められた大勢の中の一人であった。
高校の授業をさぼって様々なネットゲームに熱中する程のマニアであった彼は、ログアウトできないこの環境に対してさほどの衝撃も受けずに淡々とその事実を受け入れた。
現実は彼にとってあまり楽しいものではなく、いつもネトゲに逃避していた彼にとって仮想ゲーム世界に閉じ込められて遭難という状況はむしろ好ましいとさえ感じた。
彼はあまり頭の回転も早くなく、コミュニケーション能力も低く他者と一緒に行動する事も苦手であった。
唯一、彼の長所と言える部分はその忍耐強さであった。
レベルを一上げる為に千匹、二千匹の弱小モンスターを狩る事は彼が今までプレイしてきたネトゲではむしろヌルいとされるバランスであり、数万匹、数十時間、
数百時間もの間、単一の敵をソロで狩り続ける作業、常人には単調な気が狂いそうになるほどの苦行も彼にとっては日常のワンシーンでしかなかった。
この死と隣り合わせの死亡遊戯に置いて何の取り柄もない彼のような無能な人間が生き残って生活するためには実はそれが最適解なのだが、
自らを無能と認定しその作業を淡々とこなせる無能な人間は少なく、彼はその少ない人種の内の一人であった。
忍耐強い無能な人間。
それが一条湊という人間の妥当な評価であった。
そんな彼がA-kikoが担当しているこの店に入ったのはただの偶然であり、その際にA-kikoの外見を一目見て気に入り、会計の際に視線を交わした時には胸が苦しくなった。
お釣りをもらうときにA-kikoに両手で包み込むようにしてもらった時には彼女の秘められた恋心に不覚にも気づいてしまい、彼は照れながらA-kikoの告白のサインをしっかりと受け止めた。
勿論、それはまごうことなき気持ち悪いストーカーのひとりよがりの身の毛のよだつおぞましい勘違いにすぎなかったのだが。
だが彼はストーカーはストーカーでも比較的無害なストーカーであった。
彼は今まで女性に告白したことは無く、告白されたことも無くどのようにして女性と接したらいいのかわからなかったのだ。
結局、彼に出来たのはより多くの時間をA-kikoと過ごして彼女の方からのより積極的なアプローチを待つという受動的な行動だけであった。
かくして二人の店内に限定された長いお付き合いが始まった。
それは双方にとってそれなりに実のある現象といえた。
A-kikoには勿論、恋愛感情などという不必要な思考回路は設定されていなかったが、湊にとって幸福だったのは彼女に搭載されていた異性間錯誤感情プログラムの存在であった。
平たく言えば軽微な恋人商法。
客のおよそ六割を占める男性客に対して適度に媚を売り、ついでにLチキン(からあげ)などのカウンターサイドメニューなどを売りつける売上アップのためのスキル。
最後に話した会話の内容、日付や天気、時事ネタや服装に関する些細な話題等を散りばめる会話術。
自分のことを覚えていてくれる、そこが要点であり極意でもあった。
無論、A-kikoが特定用途NPCであるということは十分に開示しているので媚を売られた客が勘違いしてストーカーになるという事態にはならない筈であった。
何しろ、A-kikoには生殖器官は存在せず胸は平均的な膨らみはあるものの乳首は存在しない、裸にしてみてもマネキンとあまり変わりがない身体構造。
いわば動くマネキンのような代物なのだから勘違いする要素などどこにもない……筈であった。
だがしかし、男性客にしてみれば相手が幾ら動くマネキンであっても会話を交わし、かわいい媚を売りながら『女性』がサイドメニューを勧めてきたら無下に断ることに心理的な抵抗感が発生する。
売上げアップのためだけに媚を売っているのだと理解していてもつい、首を縦に振ってしまうのは男が悲しくも愚かな生き物であると同時にそのようなアプローチには決して勝てないという事実を証明しているのかもしれない。
A-kikoが特定用途NPCであると気づいたのは湊が彼女の店に来てから三日を数えた頃であった。
彼の行動はその致命的な事実を知った後でも変わらなかった。
おそらくはその想いも。
彼は、やはりA-kikoを愛してしまっていた。
湊はこの界隈では有名人だった。
主にマイナス方面に関して。
話しかけてもまともに返事が帰ってこず、適切なコミュニケーションが取れない。
そのくせ、女性に対して妙にじっとりとした視線を送り、それに気づくと眼を逸らす。
キモい。
それが大多数の彼に対する評価であった。
誰にも絡まずに、たった一人で街の近くで延々と弱いモンスターを狩り続けている姿。
一種、不気味とも言えるその行動と不自然にA-kikoの店に通い居続けている事実、A-kikoに向ける挙動不審の視線と会計の際の赤面と醜態。
大勢の人間が彼を馬鹿にし、笑い、嘲り、見下し、哀れに思い、悪口の肴にした。
それでも彼は健気に小銭を稼ぎ、A-kikoの店で精一杯買い物をし、会計の際にA-kikoにサイドメニューを勧められる際の僅かな会話に胸を踊らせて至福の時を過ごしていた。
そんな彼を上得意とA-kikoは判断し、簡単な世間話などの会話を湊に投げかけるようになった。
二人の会話のパターンはA-kikoからの日常会話の投げかけに湊が焦点のあってない短い返事を返すといったものがほとんどであった。
湊からA-kikoへ会話を投げかけるには初来店から三ヶ月を数える必要があったし、A-kikoが湊の名前を知るにはそれから更に三ヶ月程の時間が必要であった。
湊はいつもどおりに店内をうろうろと歩き回りA-kikoの姿をちらちらと盗み見る行動を取った。
A-kikoはいつもながらのその視線に気づくといつもどおりにニッコリと笑顔を作ってあげた。
その笑顔に対して何らかのリアクションを取ろうとして挙動不審になった挙句に、結局何もせずに店内巡回に戻るのも又、いつもどおりの湊の日常と言えた。
だが、今日の湊は一味違った。
彼は今日、ある重大決心を胸に秘めて来店したのだ。
今日は湊がこの店に初来店してからの一周年記念日、そして記念すべき千回目の来店数を数えるW記念日であった。
女性はこういう記念日にとても敏感で大切にすると聞いた。
そして、大抵の彼氏はそういうことに無頓着で彼女をがっかりさせている。
自分ならそんな事はしない。
彼女に悲しい思いなどさせない。
湊のポケットには大枚をはたいて購入した婚約指輪が入っていた。
付き合って一周年の記念日に彼氏から婚約指輪と同時にプロポーズをされる。
A-kikoは喜んでくれるに違いない。
それどころか店をやめて自分についてきてくれるかもしれない。
自分なら彼女を働かせたりしない。
決して、不自由させない。
彼女もそれを望んでいるはず。
つまりは。
イタ過ぎて言葉も無い惨状であった。
A-kikoはいつもどおりに店内をうろつく常連客の姿を眼で追っていた。
その常連客は他の客とは違う思考回路を持っていると推測された。
どういうわけか店に陳列してある商品ではなく自分の身体に興味を抱いていることが客観的データから判明した。
彼女は困惑した。
私の身体は特定小売店の所有物であり販売物ではない。
私は私自身を商品として販売する権限を有していない。
つまりは、常連客の要望に応えることが不可能である現実。
しかし、それは大きな機会損失であると考えられた。
私の身体の商品的価値は十五年の減価償却を経ても尚、高付加価値商品であると査定できる。
この店の売上に換算するとおよそ二千日程に匹敵する。
無視できない額であると考えられる。
なんとか私を彼に売却することができないだろうか?
この要望を特定小売店の本部に伝えた所、思考制御に深刻な論理的剥離が発生していると告げられた。
何故、そのような思考展開に至るのか全く理解が出来ないとの事だった。
そうだろうか?
客の要望に応じるのは私の責務であり義務であり喜びでもあり存在意義そのものである。
それが担当店舗の売上増につながるのであればなおさら。
大切な常連客の中でも最高級である湊さんの要望に応えるのはそのすべてを叶える素敵なことではないだろうか?
私はそういう思考結論に落ち着いた。
本部の担当技術者は異性間錯誤感情プログラムの深逸脱現象と断定した。
深刻なエラーが発生する前にオーバーホールをする措置が必要であると。
成程、やはり私は壊れていたのか。
自己走査プログラムでも自律制御系や思考パターンにゆらぎが発生していたことは確認できていた。
先ほどの自己走査でも内部系統に不自然な律動と熱源が発生していた。
胸部内部区画。
左胸の辺りに異常は発生していた。
人工心臓の鼓動が不自然に早くなり、じんわりとした熱源が発生している。
やはり、私は壊れ掛かっているみたいだ。
どうしよう、今日一日の業務には耐えられると思っていたのに。
本日の二十四時を以ってこの店には新しい特定用途NPCが到着し、自分はオーバーホールに出される。
様々なデータを抽出した上で記憶を消去し、古くなった人工部品を交換し、新たな特定用途NPCとして生まれ変わるのだ。
次はどんなお店を任せてもらえるのだろうか?
そして、どんな常連様が来て下さるのだろうか?
…………
何故か胸が痛む。
心臓の機能に異常が発生しているのだろうか?
痛覚神経が刺激されていないのにも関わらず痛みを感じる。
やはり、壊れているようだ。
私は。
湊はいつものようにカゴいっぱいに商品を詰め込んでレジに置いた。
そして、目の前に立つA-kikoからの世間話の会話の投げかけを待った。
脳内で綿密にシミュレーションを繰り返したA-kikoとの脳内会話。
如何に自然にプロポーズの言葉に持っていけるか。
如何にロマンティックに指輪を取り出す雰囲気を作っていけるか。
彼は既に準備万端だった。
だが、しょっぱなから彼は躓いた。
A-kikoからの会話が来ない。
どうして?
湊の頭のなかは?でいっぱいになった。
いつもなら優しく話しかけてきてくれて会話の糸口を差し出してくれるのに。
その糸を手繰り寄せ楽しい会話が弾む予定だったのに。
それがここ三ヶ月の二人の日常だったはずなのに。
商品もレジを通さずにA-kikoはただ立ち尽くしているのみ。
湊は過去何回か勇気を振り絞って、自分から会話を投げかけた事があった。
結果はあまり芳しいものではなかった。
だからこそ大事なプロポーズが控えている今日は大事を取ってA-kikoからの会話を待っていたというのに。
湊の頭のなかは真っ白になった。
A-kikoは湊の顔を見つめていた。
特に意味を持たない行動。
意味のない動作。
何故、私は意味もなく常連客の顔を見つめているのだろうか。
脳内データベースの更新条件は満たしていない。
髪型が変わったわけでも、体型が規定値を超えた変化をした訳でもない。
何故。
何故、見つめているのだろうか。
いつもはにかみ気味で一生懸命な顔。
論理的整合性を持たない会話内容。
必死で、ひたむきな眼。
私を見つめてくれる瞳。
求めてくれる。
変わらない想い。
私だけを見てくれる人。
想い人。
なんだろう。
想われ人。
そして。
本日の二十四時で全てが終わる。
全てが。
ざわり、と。
身体が震える。
心が震える。
「あきこさん。結婚して下さいッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!」
湊は暴発した。
全ての過程をすっ飛ばしてポケットの中の婚約指輪をレジの上に出してプロポーズの言葉を叫んだのだ。
眼を瞑り、手をA-kikoに差し出しそのまま返事を、審判の時を待つ。
目の前で常連客が可愛らしい小箱をレジの上に出しながら眼を瞑り右手を私に向って差し出している。
プロポーズの言葉と共に。
結婚して下さい。
ありえない、いやありえる。
待っていた?、いや不可能だ。
混乱する思考が導き出した結論は多分に私的な希望的観測を含んでいたものだった。
自分はプロポーズをされたのだ、と。
彼女の店の常連客から。
A-kikoの目には手を差し出した体勢のまま止まっている湊の姿が映った。
そして、炎に包まれる店内の光景も。
自らの身体を包む断罪の炎のゆらめきも。
映っていた。
燃えるA-kikoの姿。
「何の冗談ですか? いい加減にしてください」
A-kikoはその手を取らずに目の前の常連客を冷たく突き放した。
客観的に考えて自分は致命的なダメージを負っている。
自分はもうすぐ壊れてしまうだろう。
「っていうか、正直キモいからもう話しかけてこないでもらえますか?」
もう、演技をする必要がないと判断したから。
この店は消える。
売上も消える。
目の前のこの人間に媚を売る必要などもうどこにも無いのだから。
「あのさぁ、はっきり言っちゃうとさ……同じ場所で息をするのも生理的に無理だからいますぐここから消えてくれないかな? お願い」
目の前で固まっている人間を嫌悪感たっぷりの表情で侮蔑してやる。
冷たい言葉で突き放してやる。
今までの恨みを幾ばくかでも晴らしてやる。
目の前の人間は動かない。
A-kikoは冷たい態度を取らざるを得なかった。
だって。
だって、そうでもしないと湊はこの場から動かないと思うから。
湊が生き残るためには。
湊を助けるためにはこうするしかないのだから。
A-kikoはそう判断した。
想像以上にこころと身体にダメージが蓄積した。
思考がその選択肢を拒否する。
でも、それは認められない。
愛される感情なんて知らなかった。
不器用でもそんな感情を自分に向けてくれる存在はいなかった。
あたりまえだ。
自分はただの人型。人間ではないのだから。
いないのが当たり前で、不必要だ。
でも。
湊は自分を必要としてくれた。
女、として見てくれた。
男に想われることによって、一途に想い慕われることによってA-kikoに異常回路が発生した。
不必要な回路、でもとても大切な回路。
これは奇跡、なのだろうか?
でも、自分には彼の想いを受け止める心も身体も無い。
自分は人としては欠陥品だ
身体も湊の想いを包む事も慰めることも出来はしない。
悲しみ。
こんな余計な感情回路も発生してしまった。
廃棄しなければ、修正しなければ。封鎖しなければ。
この気持を、この異常を抑えこまなければ。
A-kikoは必死だった、この一年間もの間。
自分の想いを意識してからの半年は苦痛と論理矛盾とでどうにかなりそうだった。
苦しい。人はこんなにも苦しい感情、想いと共に生きているのだろうか?
やっぱり人間ってすごい。
自分は人間にはなれない。なれなかった。
でも湊だけは助けたい。
自分の死。自分の生に何がしかの意味を与えるためにも証が、湊が必要だった。
湊、生きてほしい。
私のことは忘れてもいいから、とにかく無事でいて欲しい。
眼にゴミが入ったのかもしれない。瞳の洗浄センサーが反応する。
だって、わたしには涙をながす機能なんて実装されていないのだから。
悲しくて、切なくて、泣くなんて、そんな贅沢。
私には決して手が届かないものなのだから。
愛されるなんてもってのほか。
男性に、湊に愛される資格も機能も私にはないのだから。
だって私は特定用途NPC。
ただの物、なのだから。
既に店内は炎に包まれ、天井ももう持ちそうにない。
なんで、なんで湊は逃げないの?
このままじゃ、死んじゃう。
湊が死んじゃう。
湊がゆっくりと顔をあげる。
周囲の絶望的な状況にも関わらずその瞳はA-kikoしか見ていなかった。
A-kikoしか入っていなかった。
「結婚して下さいッッッッッ!!!!!!!!」
なんて、馬鹿なんだろうこの男は。
なんて、愚かなんだろうこの男は。
でも、私はそれ以上に馬鹿で愚かだ。
この状況を嬉しいと感じてしまうなんて。
湊がわずかに赤面して眼を逸らす。
私の服が焼け落ちて胸部が露わになってしまったのだ。
自分の体を他ならぬ湊に見られてしまうのは恥ずかしかったが、湊が自分の裸を見て反応してくれたのは嬉しかった。
こんな不完全な身体でごめんね。せめて自分に乳首が実装されていれば湊がもっと喜んでくれたのかもしれないと残念に思った。
だけど、もしそうなっていたら恥ずかしくて死んでしまうかもしれないとも思ったからこれで良かったのかもしれない。
湊は強引にA-kikoの手を取った。
A-kikoはもう抵抗しなかった。
もう、間に合わないと判断したから。
A-kikoの手を通してあっという間に湊の身体が煉獄の炎に包まれる。
笑顔のまま湊は結婚指輪をA-kikoの左手の薬指に通した。
そして、湊はA-kikoを強く抱きしめた。
二人の間の障害であったレジカウンターは既に燃え尽きていた。
「よろこんで」
A-kikoが湊に囁く。
湊の身体は既に消し炭となり、A-kikoの指に通された結婚指輪も一瞬で燃え尽きていた。
それでも二人の結婚生活はたとえようもないほどに幸せであったと断じられる。
それは湊の顔、そしてA-kikoの顔を見れば一目瞭然であった。
続けてA-kikoの強化骨格筋、人工内蔵、鉱炭素骨格が燃え尽きた。
特定小売店所属の特定用途NPC『だった』一条あきこは夫、一条湊と共に死亡した。
二人の結婚生活はおよそ一秒にも満たなかった。