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三匹の不審者

 ルーフェが渡してくれた袋みたいな水筒の水をちょろちょろと出しながら右手を洗う。血は落ちたけど、まだかなり獣臭い。・・・・・・獣、臭い。

 「本当にありがとうございました」

 「え?全然いいよ!美少女が襲われそうだったら助けないとね!そんでイチャイチャらびゅらびゅなイベントが・・・・・・えへへ」

 さっきも抱きつかれちゃったし?もうこれエンディングでいいんじゃないの?私がタキシードでルーフェは真っ白いドレスで赤い絨毯の上を歩くのです!ブーケはくれてやる!私はそれ以上の宝物を貰っておりますのでね!ルーフェかあぅわうぃー!!

 「私の方がレベル上なのに・・・・・・足を引っ張っちゃって」

 申し訳なさそうに謝るルーフェ。いくら死んだはずの人間が目の前で生き返ったからといって、パニックに陥ってしまったことに責任を感じているのだろう。

 ふむう?なんだかルーフェが思いつめた顔をしている・・・・・・。

 むー、こんな時は・・・・・・あれ?どうすればいいのん?選択肢どこに出てるの?

 「・・・・・・てい」

 「うわぁ!?」

 仕方がないので、私はルーフェの足を引っ張った。物理的な意味で。

 「私もルーフェの足引っ張っちゃったなー。うん、これでお相子ってことで」

 どう?今の切り替えし、どう?え?どこかで見たことある?ききき、気のせいだす!です!

 ってかルーフェの肌って本当すべすべどうやって体洗ってるんだろう。

 「で、でも、私がしっかりしないといけないのにっ」

 「いやいや、狼はルーフェが全部倒しちゃったし。どっちかっていうと役立たずは私の方じゃない?」

 「でもさっきの、ブラッドベアーは結局モモさんが・・・・・・」

 ・・・・・・ブラッドベリ?SF作家だっけ?なんか、南斗の一人みたいな名前の。ああそう、レイ・ブラッドベリ?読んだことないけど。

 「ブラッド?」

 「さっきの熊型の魔物です。星四クラスなんです」

 おおう、また知らない言葉が出てきちゃった。星クラスって何?はなぐみとかと同じ?幼稚園か。それとも女性だけの歌劇団?星組って。

 「レベル四なら最低でも二人以上はいないと倒せない強敵で・・・・・・こんなところには滅多にいないんですけど・・・・・・」

 そんなに強い奴なの?って思ったけど私何回も死んでた。そりゃ強いよ。

 ってか、ブラッドベアー?ダークウルフといいキリングウルフといい・・・・・・ネーミング、安易すぎない?誰が付けたの?この名前。

 「とりあえず一件落着ってことでいいんじゃない?」

 もう帰りたい。ルーフェが泊まってる旅館に行きたい。クエストに出る前外から見たけど、綺麗な建物だったなー。ルーフェが私の服とか置いといてくれたのです。何この娘人間できすぎじゃない?あ、女神だった。

 「まあ、話は帰ってからで。できればシャワーを浴びてから!」

 店員さん!ベッドは一つで構わないよ。どうせ一つしか使わないからね。え、何?元々一人部屋だって?HAHAHAHA!オーケーオーケー。それじゃあそろそろ休ませてもらうよ。もちろん、ご休憩的な意味でね!

 「わぁ!?モモさん鼻血出てますよ!?」

 おおっといけない私としたことがこんな屋外で発情してしまうなんて。あれ?屋外、屋外・・・・・・ぶはぁ!

 「も、モモさーん!」

 気を失う直前、ルーフェの可愛い声が聞こえた。




 ようやく帰れる。・・・・・・そんな風に考えてた時期が、私にもありました。

 まだ親玉倒してないじゃん。

 私たちはブラッドベアーの爪を剥ぎ取り(持ってくとそこそこの値で売れるんだって)、山の麓の洞窟があるという場所まで行く。

 正直もうクエストとか忘れてた。だっていきなり熊が襲ってきたんだよ?そりゃ忘れるよ。

 「えっと、この辺りのはずなんですけど・・・・・・」

 ううーん、なんか嫌な予感がするのは私だけ?どこかでなんかのフラグ立ってない?平気?問題ないかな?親玉レベル大量発生とかない?

 「お?ルーフェ、あれじゃない?」

 木が生えてない、ぽっかりとした場所があった。恐らく崖の下なのだろう。土が壁のようにになっていた。

 その下──私達の目の前に洞窟があった。それはもう見間違えようのない、完璧なまでの洞窟だった。

 「あの中に・・・・・・いるといいんですけど」

 全面的に同感だった。できれば寝ててほしい。爆殺で終わらせたい。楽をしたい。もう帰りたい(本音)。

 私とルーフェは顔を見合わせるとナイフと弓を構え、ゆっくりと洞窟の中に足を踏み入れる。

 「・・・・・・む?」

 「・・・・・・え?」

 「・・・・・・は?」

 おかしい。

 いやさ?私は「は?」って言って、ルーフェが「え?」って言ったんだけど。

 何でもう一人分が聞こえてくるの?「む?」って何?

 まあ、その声の主は目の前にいるんですけどね。──右手に真っ赤な返り血らしきもので濡らした剣を持って。

 ・・・・・・ふ、不審者だー!

 あれ?でも私もルーフェも思いっきり怪しいじゃん!ナイフとか弓とか持ってるし!全力で不審者だ!

 「・・・・・・ルーフェルか?」

 「か、カレン!?どうしてここに!?」

 ・・・・・・あれあれ?

 え?お知り合い?ええ~?あれぇ~?

 「る、ルーフェ?どなた・・・・・・?」

 ガクガクと震えながらルーフェに質問する。「私の大事な人です」とか言われたら自殺しようかな・・・・・・。

 「えっと、カレンは昔一緒のパーティーでクエストをしていた仲間です。カレン、この人はモモさんといって、今一緒にクエストをしてます」

 「ふむ。わたしはカレン・ロゥ。見ての通り冒険者だ。よろしくな」

 すっと差し出された手を握る。え?私お払い箱?というか久しぶりの再会っぽいのにこの冷静さは何だ。

 手に全力で力を入れても、このカレンとかいう剣士っぽいのは微動だにしなかった。泣きたい。

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