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死んでも強くはなりません

 さて、いきなりですが問題です。私は今何をしているでしょう?

 制限時間は十秒。めんどいのでやっぱ省略!

 正解は――

 「もう無理っ!誰か助けてっ、助けてたもれぇぇえええ!!」

 真っ赤なドラゴンから全力で逃げている最中です。

 レウスがばさりと羽ばたいて空を飛ぶ。っていうかこのドラゴンなんて名称?私さっきからレウスって呼んじゃってるけど大丈夫なの?

 ビュウウと風を切ってレウスが近づいてくる。そのままカプリと大きなお口に銜えられた私はもちろん、あっけなく死んでしまう。


 『ふぁ~あ。・・・・・・ええ、また死んだの?』

 うるさい余計なお世話。

 『もういい加減にしてほしいんだけど』

 何で上から目線・・・・・・。

 『貴女の残命数は89です。ほんと調子のんな』


 「何様だぁぁぁああ!?」

 

 『え?』

 ・・・・・・え?

 『・・・・・・・・・・・・ええ?もう死んだの?』

 あ、私噛まれてるじゃん。・・・・・・そりゃ死ぬよ!

 『あーはいはい。貴女の残命数は88ですっと』


 「いやいやいや!?今はまず――」


 『お前マジでふざけんなよ!カップ麺伸びるだろうがっ』

 いや知らないよ!何食べてんの!?え?あんた食べれるの?

 『あーもう、残り87!はい!』


 「仕事しろぉぉぉおおおおお!?」

 私の叫びは途中で悲鳴に変わった。いや、だって空中で離されたんだし、誰も私を責めてはいけない。もっと優しくなろう。一生懸命竹になろうよ。

 「おち、落ちるっ!」

 肩どころか体全体で空気を切って落下する。むしろ私が風なんじゃない?違う?だよね、知ってた。

 どんどん地面が近づいてくる。紐なしバンジーなんてやりたくなかったのに。

 ドチャ、という効果音が響く。


 『・・・・・・もう、死ね』

 うんまあそうなるよね。あともう死んでます。

 『・・・・・・残り86、一気に全部使い果たせばいいのに』


 ・・・・・・あれ?全部使い終わったらどうなるんだろう?

 ってかそもそもあれ何。生き返ってるの?コンティニューしてるってこと?セーブポイントは随時更新で。

 ・・・・・・ええ、何それ。本当にいつ天みたいじゃん。いいの?こんなの。

 あれ、でも致命傷じゃなかったらどうなるんだろう。

 ・・・・・・まあ、死ぬまで治りませんよね、多分。

 何これ敵は全人類?今まさに人外にボロクソにされてるけど。

 グオオオオオオ!!とドラゴンの咆哮が響き渡る。

 「一ミリも勝てる気がしない・・・・・・元々戦う気もないけど」

 逃げても追いつかれるのは検証済み。役に立ちそうな物もなく――あ、スマホ。

 そうだ、これのフラッシュを閃光弾みたいに使ったらどうだろう?

 すっとポケットからスマホを取り出し、タッチしてカメラを呼び出す。カメラ、オン!

 「食らえ、文明の利器!スマートなフォンっ!!」

 レウスモドキにスマホのカメラを向け、カシャカシャカシャとフラッシュを焚く。某異世界転移もののラノベを読んでてよかった。

 ふっふっふっ、どうだレウスモドキ!とどや顔をキメた私は次の瞬間、怒り狂ったレウスモドキに突き飛ばされていた。


 『あと85』


 「はっや!死んで即戻されたんだけど!?」

 信長が死んだときの秀吉くらい早かったよ今の。

 目の前には最早お馴染みのドラゴンさんがこんにちはしてた。早くさよならしてくれないかなぁ・・・・・・。

 レウスモドキ(竜族)がカパァ、と口を大きく割いていく様はカルラを今まさに食べようとしている巨人を思い出させた。何て現実逃避してる場合じゃないよね、これ。

 ドラゴンの口が灼熱に染まったその瞬間、私の目は強い光で遮られていた。

 「え?何これ・・・・・・」

 「こっち」

 「うわぁ!?」

 不意に後ろから左手を掴まれた私は、躓きながら声の主に引かれるまま、盲目の状態で走るはめになった。

 異世界ファンタジー最高とか言ったの誰?私もう十四回死んでるんだけど?最低じゃん。




 体感で何キロか走ったと思った頃に、ようやく私の目はさっきの光を忘れたみたい。ってかあれ何?眩しすぎ。・・・・・・べ、別にリア充羨ましいとか思ってないんだからねっ!

 とにかく、誰かが助けてくれたんだよね。お礼を言わないと。

 私は自分の左手を握っている人を見た――ん、だけど。

 「大丈夫ですか?怪我とかは・・・・・・」

 ――何この娘すっごく可愛い。

 腰まで届く銀髪。真っ赤な瞳。細い鼻筋と、小さな口。私もそんなに背は高くないと思うけど、この娘はそれよりもさらに低い。

 服装からして冒険者?かな。なんかレザーっぽい服に所々鎧みたいなのがついてるし、腰のベルトに小物入れがあるし。何より背中に弓矢背負ってるし。

 うん、一部の隙もなく冒険者だった。天使って冒険者にも化けるんだなぁ。

 「あの。・・・・・・大丈夫ですか?」

 「たった今魔法をかけられてしまいました」

 「ええ!?た、大変です!すぐに解除をしないと」

 「この魔法は解けません。何故なら――」

 キリリとした表情と精一杯のイケメンボイス的な何かで、私は目の前の天使に言った。

 「魔法をかけたのは、あなたですから」

 「・・・・・・あ、頭を打ったんじゃ」

 確かに打ってた。というか死んでるし。でも心配してくれるなんて、この娘最高に天使!

 異世界ファンタジー最低って言ったの誰?早速ラブコメ展開なんて、最高じゃん。

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