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残命数99/99:1

 「な・・・・・・な、なぁにこれぇ」

 わなわなと拳を震わせながら、私は呟く。だってしょうがないでしょ?いきなり目の前にドラゴン的なそれがいたら――え?このくだり前も見た?それは多分デジャヴだと思う。気にしない気にしない。

 まあまあ、それよりも聞いてくださいな。

 私、鈴代すずしろ ももと言います。立派な引きこもりのニートです。歳は十六。高校一年生。ただし学校には行っていない。人種は日本人で、自分で言うのもなんだけどとても可愛い方だと思う。トレードマークは小さなポニーテール。一瞬トレードマークの意味がわからなくなったが、まあいいか。

 そんな可愛い私はついさっき死んでしまったのです!

 意味わかんない?大丈夫。私も全くわからないから。

 シュウシュウいってるドラゴンを無視して経緯をお話ししようかな。あ、これ走馬燈ってやつ?

 そう、あれは私がトラックに撥ねられた後――




 「うん。君が鈴代 百ちゃんだね。ほいほい」

 ここは・・・・・・雲の上?いや、雲のようでもあり、しかし明らかに違う何かの上、としかわからない。

 気が付いたらそんなようなところにいた。しかし私は馬鹿ではないので自分が死んだことも理解している。トラックに全力で撥ねられて即死だっただろう。

 ・・・・・・え、本当に死んだの?嘘だよね?ドッキリだよね?すぐに「モニタリングさせていただきました」とか言ってくるよね?

 「百ちゃんは――うん、引きこもって学校も行かず、仕事もしてない親泣かせだね。はいはいギルティ、っと」

 本当に私が死んだのならきゃわいい女神が現れるはずなのだが・・・・・・なの、だが。

 「うーん、よし。丁度いいや、百ちゃんはオモルフォス行きにけってーい」

 本来であれば女神がいるはずの場所に、なんだかとてもうっざいジジイが鎮座ましましていた。

 ・・・・・・え、誰?何?変態さん?

 でも私は人間できているので、人が傷つくことは言わない。そういう感情は胸に秘めておくべきである。

 「へ、変態だぁぁぁぁああああっっ!!」

 だがそれにも限度というものがあると思う。致し方なし。許せ変態。それにこのじじ・・・・・・おじさんはどう見ても人間ではなかった。なぜなら身長が軽く五メートルは超えてるように見えるからだ。うなじ切り取っちゃおうかと思った。

 「ひどいねぇ百ちゃん。これでもワシ神よ?アイアムゴッド。でもゴッホよりもバッハが好き。わっははあ」

 「わっははあ。じゃないっ!なに近所のおじさんみたいな口調で話しかけてんの!?あんた馬鹿なんじゃないの!?あとキモい!!」

 「最後のはワシ、素で傷ついちゃう。傷物にされちゃった・・・・・・ぽ」

 「死に晒せっ!この駄神がぁぁぁああああっっっっ!!!!」

 こいつうざっ、キモっ、ださっ、あとキモい!!ついでにキモい!!

 普通死んだら女神が転生させてくれるものでしょ?女神転生はお約束でしょ?なんでクソじじいが現れてるの!?あ、クソじじいって言っちゃった。・・・・・・まあいっか。

 でかいジジイが人差し指で頭を掻きながら私を見ると、

 「百ちゃんはー、」

 「百ちゃん言うな!クソキモい!!」

 「し、しどい・・・・・・。百ちゃんはオモルフォスに転生ね」

 「はぁ?ふざけ・・・・・・あれ、転生?いいのん?」

 私がそう言うとじじいはこくこくと首を縦に振った。なんかとなく、赤ベコ──だったか、あれに似ていた。キモい。

 「百ちゃんは仕事もしてないし、なんか色々?学んでくるといいよー。あ、命の大切さとか」

 このじじい、思い付きで言ってる・・・・・・後先考えないとぼっちになるよ!ぐっふう、防弾ガラスがっ・・・・・・。

 しかし、異世界転生など願ったりだ。ついに私も異世界デビューをすることになるのか。

 「なら早く私にチートを!伝説の武器を!可愛いパーティメンバーを!!」

 ガバッと両手を差し出す私が見えていないのか、はたまた興味がないのか、ジジイは小指で鼻をほじりながら、

 「んじゃ、頑張ってね~」

 そう言って手をヒラヒラと振った。

 「え、は?武器は?チートは――?」

 そして私は、空から落ちた。




 で、今に至る、と。

 思い出せばあのジジイ、無責任にも程がある。あげく、死ぬ直前と同じ格好でドラゴンと遭遇。遭遇というより、空から落とされたら目の前にいきなり真っ赤なドラゴンがいたわけで、どちらかというと待ち伏せだった。この色合い、形・・・・・・り、リ◯レウスDA。

 大丈夫餅つけ私。いや落ち着け。まずは状況の確認をすべきだ。私の前にはレウ◯がいて、その口から煙がシュウシュウと音を立てている。ここは岩場らしく、剥き出しの硬い地面には雑草一本生えてはおらず、あちこちに様々な大きさと形状の岩がごろりと転がってる。私よりもはるかに巨大なものも少なくない。こんな場所の近くに人里があるとは到底思えず、助けは期待するだけ無駄というものだろう。

 つまり、私一人でなんとかしないといけないわけなんですねー。

 こんな時こそモ◯ハンで鍛えた回避能力を発揮するべきではないか。私ならできる。さあレ◯ス、いつでも撃ってくるがいい!フレーム回避で華麗に避けてぇぇええいやぁぁあああああ!!


 『あなたはしにました。はいはい乙乙』

 ・・・・・・何これ、うざい。

 『こんな序盤で死ぬとか馬鹿なの?死ぬの?あ、死んでるか』

 ・・・・・・うわぁ、すっごいうざぁい。いっそ死んでしまえ。や、というか、これはなんだ。

 『貴女の残命数は98です。ガンバ!ガンガンガンバ!』


 「さ、最後の戦い大渦巻きっ!?」

 わけのわからない状態のままいきなりクライマックスへ突入。私は最初から最後までクライマックスだZE☆

 なんてことを実際に声に出していたら、◯ウスが硬い鱗で覆われた尻尾を振り回してきた。

 もちろんか弱い乙女であるところの私の体はバキバキと音を立ててへしゃげる。即死である。


 『え、何?また死んだの?ええ~、早くない?雑魚くな~い?』

 この文字は何なんだッ!消えてよもう!説明求む!

 『何なの?そのうち天◯の黒ウサギにでもなるつもりなの?』

 ねえ文字がオタクなの?それともあのじじいの仕業なの?

 『貴女の残命数は97です。ふぁいとぉ、おぉ~』


 「気が抜けるってば!」

 と起き上がる私。その目の前にはレウスの顔があり、口は赤く染まっていて、なんかもう準備万端といった感じだった。

 「あ、えっと・・・・・・」

 どうしようどうしよう?こういう時は――

 「・・・・・・か、かっこいいお顔ですね」

 レウ◯にお世辞は通用しなかった。

 世知辛い、いや、世知熱い世の中だ。

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