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魔力なし少年の転生譚  作者: 炎の人
ゴブリンエンペラー編
8/23

招かれた城での出会い

「うぐ、ここは?」


 何かにつつかれるような感覚に俺は目を覚ました。知らない天井、知らない部屋、そして知らない幼女の姿があった。俺は混乱の極みにいながらも幼女へと声を掛けた。


「君は、誰だ?」


「我が王よ、私は剣の精霊」


「剣の精霊? というか、普通に話せてるな」


「私達剣の精霊の権能は顕現や実体化。自身をこの世に実体化させただけ」


「なるほど、これからよろしくお願いするよ。でも、あんまり剣の扱いはうまくないんだけど」


「大丈夫、私達は武器全般を担っているから」


「そっか」


「もう元に戻る」


 そう言うと剣の精霊は元に戻った。それと同時に部屋が開き、父上と共に見知らぬ人が二人入ってきた。慌てて起きあがろうとするも父上が手で止めてきた。


「大丈夫か、ライナス」


「はい。どうやら気絶してしまったようですね。あの後はどうなったので?」


「お前を運んだ後に私も目が覚めてな」


 父上が目覚めてからゴブリンの死体の処理をした後、報告のために王都へと向かったそうだ。その時に俺も一緒に連れてこられたようで王都にいる回復魔法が得意な魔術師に回復魔法を掛けられていたそうだ。あれから一四日が経ったようで全く目覚めない俺に大層心配していたようだ。

 加護を使った代償はなかなかに重たかったようだ。初めてであったのもあるのだろうが二つも同時に掛けられたのだ。負担が掛かっても文句は言えない。今は生きている事に感謝しよう。俺はそこでふと二人の人物がいるのに気付き慌てて頭を下げた。


「申し訳ありません。起きたばかりで混乱していたようです」


「よい。メナード辺境伯、紹介してくれるな?」


「はっ、我が息子のライナスです。ライナス、こちらは国王陛下とそのご息女であられるルルリール様だ」


「メナード辺境伯嫡子、ライナスです。ベッドの上から申し訳ありません」


「うむ。そなたがゴブリンエンペラーを倒したという奴だな。王城内は騒がしくなっているぞ。そなたの噂で持ちきりだ。魔力なしが倒したというのはどうやら本当のようだが」


 面白そうな玩具を手に入れた子供のような笑みを浮かべる国王陛下に俺は思わず、顔をひきつらせる。そう言えば、力を全力で使ったせいで俺が何らかの力が使えることがばれているのだったと思い出したからだ。追求されるのかと思っていると国王陛下は不意に王女殿下に顔を向ける。王女殿下は俺の方を見つめて不思議そうな顔をしていた。


「どうしたルルリール」


「い、いえ。何でもありません。ルルリール・ブラッド・ライクスです。以後お見知りおきください、ライナス様」


「こちらこそ、王女殿下」


(いたよ、伴侶、伴侶)


(マジか……)


 俺の心の声は光の精霊にダダ漏れだったようで思わず笑われてしまった。ということは、この人も魔力がないということなのだろう。俺と違って大変なことだなと他人事のように思うのだった。


「それにしてもお前に似ず、随分と顔がいいな」


「陛下、それは言わないでください。私とて気にしているのですから」


「はっはっは。済まぬな。さて、ライナスよ」


「は、はい!」


「この後、謁見の間に来てもらうがいいかな?」


「へ?」


 それは否が応でも従うしかない王命であった。



「面をあげよ」


 そんな声と共に俺は顔を上げる。父上と共に正式な謁見へとやってきたのだ。あの後、断ることもできるはずもなく、はいと答えてこうしてやってくることになったのだ。周りの貴族たちが俺に魔力がないことを知り、怪訝そうな顔を浮かべていく。そんな慣れた者を見た俺は溜め息を吐きそうになった。


「そなたがライナスだな。此度は大儀であった。なんでもゴブリンエンペラーを倒したとか」


「は、はい。うちの腰抜け共は父上にしか従わないようでしたので仕方なく私が行くことになりました」


「はっはっは。辺境伯よ、お主の子供はこう言っておるが?」


「誠のことでございます」


「そうかそうか。それで、どのようにゴブリンエンペラーを倒したのだ? 魔力がないお主が倒せるはずがないとここにいる者、皆が思っているのだがそこのところはどうだ?」


 やはり、この質問がきたかと思って俺は思わず唸る。別に力について話すのはいいのだが如何せん人が多すぎる。この中には精霊を信仰する人もいるだろうから精霊を使役してますなんて答えたら一発でお陀仏だ。ここは力を隠す方針で行こう。父上には申し訳ないがこれも俺のためだ。異能くらいは晒してもいいがどちらにせよ説明が面倒だ。


「申し訳ありませんが私が力を説明することはありません。こう言っては何ですが誰が倒したかなど些細なことではありませんか?」


「お主の言うことも尤もだがそれでは小奴らが納得せんのだ。どうにかできんか?」


「それであれば我が家へお越しください。例え、王命であろうとも私は自分の力を安易に晒す気はありません。今回も父上が倒れたからこそ力を使ったまで。後悔するようでは力を持っている意味はありませんから」


「それではそなたの危機であれば使うのだな?」


 ああ、やってしまった。これは衛兵をけしかけるパターンだ。あの面白い玩具を見つけたような顔を見るのは二度目だ。俺が苦虫を噛み潰したような顔をしていると隣から王女殿下の声が聞こえてくる。


「お父様、そこまでにしてください」


「ぬぅ、しかしだなルルリール。皆も小奴の能力を見たそうにしているのだ。国王としても知らないでは済まされないし、簡単にやめる訳には」


 陛下はそこまで言って王女殿下が立つのを見て押し黙る。王女殿下はそのまま俺の方へやってきて俺の前で膝をついた。起き抜けの時はあまり見ていなかったが綺麗な青い髪が輝いて見える。白磁を思わせる肌、触れれば折れそうな体、儚げな雰囲気に思わず唾を飲み込む。白いドレスを来た王女殿下はそのまま俺の耳へ手を当てるとその可愛い声で囁いてきた。


「私にあなたの力を教えてください」


「……誰にでも使えるものではありませんよ? 恐らく今後一切私だけが使えるものです」


「それでも知りたいのです。私に任せてください」


 鈴のような可愛いが俺の耳元で聞こえるのに思わず緊張してしまう。それに何だか女性特有のいい匂いがしてくるのだ。体が強ばるのも無理はないかもしれない。俺はどうしようか迷ったがこの人を信じてみることにした。この人がここに来た意味を理解したから。


「物を自在に操る力と精霊を使役する力です。更に精霊を見る眼があります」


「ありがとう。お父様がごめんなさい」


 そう言って王女殿下は立ち上がった。


「お父様、彼は力を知られるのを恐れているようです。私だけが知っていれば問題ないでしょう?」


「う、む。そうだな。小奴の力に問題はないのだな」


「ええ。何も問題はありませんよ。むしろ、何故倒せたのかが理解できました」


「と、言うわけだ。皆の者、後は各自で判断するがよい」


「陛下、しかし」


 陛下の言葉に貴族達が待ったを掛ける。不満げな貴族達はこぞって反対意見を申し出てくるが国王陛下は次の言葉で貴族達を黙らせた。


「何、辺境伯の家へ行けば教えてくれるというではないか。そなたら自身で行けばいい。それとも辺境伯の家へと行けぬ理由でもあるのか?」


「い、いえ」


「では、良いな。ライナス、そなたに褒美をやろう。後ほど使いをやるから何でも言うといい」


「有り難き幸せ」


 こうして謁見が終わった。周りの貴族たちの不満そうな顔に少しばかり気が晴れた気分だ。王女殿下に力を晒す羽目になったがあの人なら無闇矢鱈に話すこともないはずだ。少しばかり策士な所があるが信頼はできる。信用ができるかはまだ分からないが少し話せば分かるだろう。そんな機会があればいいのだが、そう思うのであった。


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