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魔力なし少年の転生譚  作者: 炎の人
ゴブリンエンペラー編
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無双する魔力なし少年2

「グラァァァァァァァァァア!」


 ゴブリンエンペラーが咆哮をあげる。俺はそれに対して保持していた剣を全てゴブリンエンペラーへと投げつけた。異能によりそれなりの速度で迫る剣や棍棒をゴブリンエンペラーは全て腕で弾き壊すのを見て俺の頬は思わず、引きつる。一薙ぎで全て壊されたからだ。ボロボロであったとはいえ、その肌には傷一つない。

 ゴブリンエンペラーとは皇帝種と呼ばれるゴブリンの最終進化先と言われている。ゴブリンとオークのみに存在する皇帝種だがその力は並みのゴブリンを優に上回り、ゴブリンキングより力を凌駕し、その巨体は何人の攻撃すらも弾くと本に書いてあったのを思い出す。ゴブリンエンペラーはまさに鉄壁と言っていい程に体が固いのだ。


「火の精霊よ、燃やし尽くせ」


 先程の父上の火の魔法で集まってきた火の精霊に命令を出す。ゴブリンに目掛けて火が降りかかる。流石のゴブリンエンペラーも熱いのは苦手のようで嫌がるよう火を振り払う。俺はその隙を突くように槍で攻撃を始めた。異能で加速した俺の突きがゴブリンエンペラーの脇腹に突き刺さる。左腕が使えないのは不便だがそれでも少しだけ刺さった。


(回復してあげるよ)


 光の精霊が俺の体を癒やす。それはゴブリンエンペラーが全身から魔力を噴出させながら風の魔法を放つのと同時であった。吹き荒ぶ風に抗わないように体を宙に浮かされて、うまいこと地面へと着地する。風の鎧を纏い始めたゴブリンエンペラーは俺に向けて拳を振りかぶった。その意味に気付かず、俺は意味を考えていると突然何かに殴られたかのような衝撃が腹へと突き刺さった。


「ぐはっ」


 それはソニックブームとも言うべき攻撃ではあったが音速を超えていなかったのが幸いし、俺の体は五体満足だった。攻撃をくらってから、気付いたが風の拳が俺に当たった魔法だろうと推測した。まさかそこまでゴブリンエンペラーが魔法を使いこなすとは思っておらず、油断していた。だが、もう当たることはない。一度見れば分かる。つい先ほど風の精霊がここにたどり着いた。彼らが俺に助言をくれるだろう。風と共にある風の精霊達が風を読み間違えることはない。風の精霊は風読みのプロフェッショナルであるからだ。

 癒えた左腕で槍を支え、構えをとる。ゴブリンエンペラーは風の拳で再び攻撃してくる。いつの間にか肩に乗った風の精霊が俺を導いてくれる。


(左に避けて)


(分かった)


 くるりと体を回転させて風を避ける。何度も何度も来る風の拳を全て避けていく。避ける度に俺は風の読み方を理解していくのが分かる。これはきっと精霊の王であるという俺の力だ。遂にゴブリンエンペラーへと迫った俺は槍を繰り出す。


(力を貸してあげるよ、精霊の王)


 風の精霊がそう呟くと同時に俺の槍に風の力が纏わり付くのが分かった。勢いのままに俺はそのまま槍を突き出した。


「おおおおおおおおおおお!!」


「ガァァァァァァァア!」


 俺の声とゴブリンエンペラーの悲鳴が重なり合う。腹を貫いた槍がめり込んでいく。風がゴブリンエンペラーの腹を抉り取っていき、血を吹き出させる。ゴブリンエンペラーはあまりの痛さに暴れ出した。その余波を受けて俺は腕が当たり、吹き飛ばされる。親父にもぶたれたことがないのに、を地でいく所行だった。


「ぺっ、骨が折れてしまったか」


 脇腹をクリーンヒットしたせいか骨が何本か持って行かれてしまった。ゴブリンエンペラーの風が更に強くなるのを感じて、危機感が勝る。口の中に感じる血が広がっていく感覚に不快感を覚える。ゴブリンエンペラーは全力でこちらに風魔法を放ってきた。感覚で扱える魔物の魔法は本当に厄介だ。土煙を巻き込みながら向かってくる風球に俺はどうするか考えていると肩に乗っていた風の精霊が言ってくる。


(僕が止めてあげるよ)


 そう言って俺から離れると風の精霊は周りにいた風の精霊と力を合わせて風の障壁を展開する。ぶつかり合う風と風。辺りへ風をまき散らしながら衝突する。そうして押し勝ったのは風の障壁の方だった。風球が弾け、突風を巻き起こす。その突風は風の障壁がそれを防いでくれた。ゴブリンエンペラーが体勢を崩しているのが見えた。


((今だよ))


 風の精霊と光の精霊が同時に言った。俺に風の加護と光の加護を施してくれる。俺は風に乗ってゴブリンエンペラーへと近付き、体勢を崩した所に槍を突く。風の力を纏った槍がゴブリンエンペラーの槍を今度こそ貫通させた。ゴブリンエンペラーの絶叫の声が鳴り響く。やがて、その声は小さくなっていき、どしん、どしん、と二度に渡って音がなるのが聞こえてきた。それはゴブリンエンペラーが膝を突く音と地面へと倒れ伏す音であった。

 周りにいたゴブリン達がたちまち混乱に陥って大森林の方へと逃げ帰っていく。当分はここにはこれないだろう。俺は勝利の余韻に浸りながらその光景を見ていた。


「勝てたな。危なかったけど」


(加護がなければ負けていたかもね)


 光の精霊が俺の頭に乗りながらそう答える。加護とは通常の力よりも強い力のことを指す。これを使うと精霊はしばらく力を使えなくなるのだと聞いた。それだけ強大な力であるのだ。風の加護は速さと風を纏う力を、光の加護は癒やしの力が与えられる。これらを使った時の代償は使用者にも与えられる。


「若様ぁ~!」


 後ろから聞こえる伝令の兵士の声を聞いてから俺は意識が遠のくのを感じた。


(お疲れ様です、我が王よ)


 そんな声を最後に俺の意識は途絶えた。

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