土精霊との契約とラピスラズリの加工
精霊の聖域へと辿り着いてすぐに光の精霊は離れていった。土の精霊を連れてきてくれる事になっていたのを思い出した俺はその場に座って待つことにした。ポケットから取り出したラピスラズリを見ながら俺は想いを馳せる。
思えば、打算的な付き合いから始まったルルリール様との付き合いだが徐々に惹かれていき、そして今では完全に好きだという想いが芽生えてしまった。自覚して以降、あの時の言葉が後悔となって押し寄せる。拒絶するかのような言葉を吐いてしまった俺に彼女を想う資格はないかもしれない。だが、それでも運命など関係なく、ただただ好きになってしまったことを伝えたいと思ってしまった。想えば、想うほどに溢れ出す気持ちが止まらない。女性は苦手どころか嫌いであったはずなのだがどうしてこうなってしまったのかと笑いたくなってしまう。
「本当に何があるか分からんな、人生ってのは」
(連れてきたよ)
(王よ、参りました)
「ああ、そうか。じゃあ始めようか。おまえの力を俺に貸してくれ」
ラピスラズリを握り締めて俺は目を瞑り、精神統一をする。それからしばらくして目を開けた俺は精霊の王のみが言の葉を口に出し始めた。
「ライナスの名において願う。土と鉱石を産み出し、加工する力を我に与えたまえ。汝の名はラピス・スピリッツ・ソイル。我のためにその力をこの手に」
(我が力を捧げましょう)
契約はすぐに終わる。光に包まれた土の精霊が目の前で形を取る。ドワーフのように小さい体を持って生まれた少女は裸の状態で目の前に立っていた。
「思ったんだが何で皆女の子なんだ?」
(そりゃあ君が男だからだよ?)
「まぁ俺に不利益はないからいいんだが。どうせ世界の摂理で説明は終わりだろうし」
(王よ、さっそく注文を)
「ああ、そうだったな。その前にお前の権能を教えてくれ」
(王が望まれた鉱石生成の力と土を弄る力、加工する力があります)
(鉱石生成は新しい権能だね。全く新しい権能ばかり増やされても困るんだけどね)
「仕方ないだろ。じゃあラピス。このラピスラズリを加工してネックレスにしてくれ」
(かしこまりました)
そう言ってラピスはラピスラズリを受け取ると作業を開始した。
待っている間は暇なのでウルの力を使って野菜を育てることにした。魔物が入ってこない場所なので存分に畑を広げて育てることができる。誰かに取られることもない最高の土地だ。
「ウル、加護をくれ。俺も一緒にやる」
(かしこまりました)
植物の精霊の加護を受け取った俺はさっそく栽培を開始した。促成栽培なのに美味しい野菜になるのは不条理だがそういうものだと理解するのを早々に諦めた。精霊の力を理解するにはまだまだ研鑽が足りないらしい。いや、そもそも科学で証明できる物ではないと光の精霊が言っていたはずだ。真の精霊の王になれば理解できるのかと問えば、そうだと言っていたのでそのうち理解できると思うことにしたのだ。
種子を生成して当たりへばらまいていく。土の精霊が集まってきて土に栄養を育ててくれるので後は植物の精霊であるウルに任せるだけだ。
「ウル、後は任せた」
(はい。お任せを)
(君って将来は暴君になりそうだね)
「やめてくれ。今だけだ。これが終わったら力を使うこともなくなるさ」
(それならいいけどね。精霊を便利道具扱いしてると痛い目見るよ)
光の精霊の言葉に苦笑しながら俺は絨毯へと乗って異能を使い、空を飛ぶ。ネックレスへの加工はまだしばらく掛かりそうなので後は待つだけだ。結果がどうなるせよ、伝えておいても損はない。フられたら溜め込んだ金で隠居をしよう。子供ながらに隠居とは洒落にはならない話だが。
家に帰った後、スケルトンとの戦いのせいもあり、すぐに眠りについたのだった。




