ラザニアまん
俺はどこにでもいる中年オヤジだ。三流大学をでて三流企業に入った。家庭を持ち二人の子供もいる。平凡を地で書いたような人生を歩いてきた。でもこの年になるとな家庭では俺は邪魔もの扱いさ、娘にはゴミと呼ばれている…ふっ…でも構わないさ俺には居場所があるからな。
コンビニ…俺の心の休まる場所さ、若い女と会話のできる場所、ここで俺の事をゴミという奴はいない。コンビニこそが俺の第二のふるさとなんだ……
でも俺は今、非常に悩ましい問題に陥っている。もう涙が出そうだ…
俺はねラザニアまんが好きなんだ、でも今温めている途中らしい。次に好きなのが餃子まんなんだ、こちらはすでに温まっている…
『どう思う?』
今すぐ餃子まんを食べるか、少し待って一番好きなラザニアまんを食べるか、非常に悩むところだ…どうするのが一番よいか…難しい所だ…
おっと店員が舌打ちした…ちょっと待ってくれ。時間をくれ。
後これは重要な事なんだがラザニアまんは180円、餃子まんは150円、30円の誤算があるんだ。結構大きな問題だぜ…十日で三百円、百日で三千円だ。塵も積もれば山となるってやつだな。
かれこれ悩み始めて三十分…店員も歯軋りして鬼の形相で見てるよ…可愛い顔が台無しだぜ。でも怒ってる顔も可愛いぜ!
「お客さん、いい加減決めてもらえませんか?」
ふっ…怒りっぽい孃ちゃんだな。客に選ばせる権利はないのか?
俺にとってラザニアまんは特別な存在なんだ。妻との初デートの時に二人で食べたんだ。嬉しかったな。俺は今でもラザニアまんを食べると妻の可愛かった頃を思い出すんだ…今はイベリコ豚のように太りやがって。家では俺のことを虫けらって呼びやがって…
「おい!オッサン!早くしろよ!」
おっと、客がキレたな…日本人はせっかちでいかんな。お前にラザニアまんに対する俺の気持ちはわからない。
「あの、すいません行列になってるんですけど」
店員までキレてる…ちょっと待て。あと三十分程時間をくれ。
本当の事言うとね…俺は昔の可愛かった頃の妻に戻って欲しいんだよ…あの頃は楽しかったな…娘も可愛いかった頃に戻って欲しい。そういう意味も込めて俺はラザニアまんを食べたいんだ。
「お客さん、ラザニアまんもう温まってますけど………」
そうか…温まったか…じゃあラザニアまんを貰おう。ラザニアまんを買ったら今日の予定は終わったな。家に帰るとしよう……
コンビニ…明日もまたこよう…
『完』