1.bygone days
ここはどこなのだろう。建物も人もいない。ただ続いていく1本の黒き道。
もう諦めかけたとき、とてつもない頭痛に襲わた。ああ、もうダメなのか。
そこで意識は途切れた。
目が覚めた。目の前にはいつもの風景が広がっている。保健室の天井だ。
「あら、起きたの。どこも痛くない?貴方、体育の時間にボールを頭にぶつけたみたいよ」
「大丈夫です。今何時ですか? 」
「もう3時よ。お昼食べてないでしょ、私のあげるから食べなさい」
そう言って、サンドイッチを差し出された。
「ありがとうございます」
体育は3時間目だったから、3.4時間は寝てたのか。
そういえばさっきまで夢みてたけどどんな夢だったかな。
「先生、私何か寝言言ってませんでしたか? 」
「特になんにも。だけど水雲さん、うなされてたわよ」
「そうですか。そろそろ教室に戻りますね」
サンドイッチを食べ終えたのでそう告げて戻ろうとしたら、
「水雲さん、何かあったらいつでも来なさいよ」
寂しげな顔をしながら先生は言った。
「毎日来てるじゃないですか、それでは」
その言葉がどう言う意味かこのときはまだわからなかった。
「覇涙! 大丈夫だった?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとうね、花草」
「親友なんだから心配して当たり前でしょ! そうそう、ボールぶつけた隣のクラスの子がごめんなさいって言ってたよ」
「うん、でも誰がぶつけたのか覚えてないから別にどうでもいいや」
本当に思い出せないや。
「なにそれ、まあ覇涙っぽい」
「だってあたしだもん」
「紅葉なら絶対仕返しするよ!」
仕返しか、少ししてみたいかも。
そして授業も終わり、帰宅していると、
「雨だ。傘持って来てないや」
「紅葉2つ持ってるよ! はい」
この子は本当に女子力高いな。
「うん、ありがとう」
傘を受け取ろうとしたとき、近くの公園の木に雷が落ちた。
「これ、やばいよね」
「何処か建物にはいるよ、走れる?」
花草は返事の代わりにうなずいた。
運良く近くにドラッグストアがあったのでそこに入った。
「あのままだったらいつ雷が落ちるかわかんなかったね。はい、タオル」
だから、この子はどこまで準備が良いのか。渡されたタオルでからだをふいた。
「止むかな?この雨」
「どうだろう」
次に発した言葉はこの世に落ちたことのない程大きな雷によってかき消された。
いや、雷が落ちた瞬間この世は''この世''ではなくなった。
「な、なにこれ……」
目の前には、得体の知れない生物と戦う人々がいた。この世界は異世界へと変わったのであった。