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法螺

作者: 伊坂倉葉

Loading……


 彼は大変な発明家だ。


 色々なものを発明しては、色々な国に売り込んでいる。


 彼によると、まず、戦車を設計したのは彼だそうだ。

 原子爆弾も、原案は彼。改良を加えたのは他人らしいが。

 超電磁砲も彼で、大陸間弾道ミサイルも彼が考えたそうだ。

 勿論、銃や剣といった初歩的なものも全て彼だ。


 身近なもので行けば、まず、鉛筆を作り出したのは彼だそうだ。

 で、それを使うにあたって、みんなが『消せない』と言ってくるから、消しゴムを作ったそうだ。

 ボールペンは、インクをいちいちつける従来のペンの欠点を改善するべく設計したそうだ。

 辞書において文字を『辞書順に並べる』ということを思い付いたのも彼。

 紙は、昔から使われていた羊皮紙等が書きづらいというので、植物の繊維から作り出すことを思い付いた。


 『音楽』という楽しみとその楽しみに必要な器具も全て開発して、更に、それに続けて『動画』というものを開発。やはり器具も開発。


 こうして挙げていけばキリがないが、面白くもないだろう。話を進めよう。

 実に彼が作り出したものは1991111511個に上る。全く、些か作りすぎだとは思う。

 お陰で、今の自分達生活が極端に便利になったということは否めないが。


 そんな彼が、今まさにはまっているのは、『創り出す』ことだ。


 ただ『作る』のとは訳が違う。


 命有るものを創り出すことを行っているのだ。


 彼には莫大な資産と、権力がある。それを使えば、『創り出す』ことも実に容易で、実際、もう既に新たな数千億種の命と彼等の住処を創り出すことに成功している。

 ああ、さっきの1991111511にこれを足すのを忘れていた。私としたことが、失敗した。

 しかし全く、本当にその技術と頭脳には頭が下がる。

 今、彼は、その『数千億種』の極々一部にずば抜けた知能を持たせて、自分が産み出した技術を少しずつ与えている。

 そしてその極々一部の種に、環境の統治を任せている。


 環境を創り出し、命を創り出し、技術と知識を徐々に与える。


 一部のずば抜けた知能を持つ種に実質的な統治は任せ、自分は外からじっと見守る。


 いわば……『神』。


 そう、神のような存在に彼は今なっている。


 さて、ここまで書けば、何がどうなっているかお分かりだろう。


 環境が宇宙。


 命が生物。


 『一部のずば抜けた知能を持つ種』こそ、地球やその他の星々の人類。


 ビッグバン等、彼が宇宙を誕生させた瞬間に過ぎず、今、人類が持つ技術も、全て彼が授けたモノに過ぎない。

 つまり、貴方が生きる世界が、彼に創り出されたもの。


 彼の気分ひとつで表情を変える、法螺の塊。


 『戦』と、『平和』。


 『勝利』ことと、『敗北』こと。


 『衰退』ことと、『繁栄』こと。


 『終わる悲しみ』と『始まりの喜び』。

 更には、


 『破壊』と『再生』。


 『死』と『生』。


 『光』と『影』。


 そして、それらの最後に待つ、永遠の『闇』。


 表と裏は、常に彼によって与えられてきた。

 そしてそれらは常に、最終的に何らかの形で、裏のみになるように仕組まれている。

 彼が創り出した生命は、常にそれに振り回されてきた。


 理不尽だと思うか?有り得ないと思うか?


 だがしかし、そんな貴方の思考回路も、貴方が持つ友情は勿論、愛情も、喜怒哀楽も、そしてそれを感じる貴方すらも、彼に創り出された、一時的なモノに過ぎない。


 つまり、貴方が、法螺の塊。


 さて……


 この事実を知った上で貴方は、どうする?


Fin.

八作目です。

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