第92話
リア充爆発しろ!
いきなりすみません。
でもクラスメイトたちが浮かれすぎててイライラします。
なんでもサン・リリエール祭の最終日に行われるダンパのパートナーが決まったとか。
憧れの先輩にOKしてもらえたとか。
可愛い後輩にOKしてもらえたとか。
気になるあの人に申し込んでもらえたとか。
あわよくばこのままお付き合いに……!!とか。
知るか! というかみんないつの間にそんなに動いてたの!? 全然気づかなかったんだけど!!
……私と言えば、まだパートナーは決まっていません。
フォンセに俺以外からの申し込みは受けるなよ! と言われてるけど、そのフォンセからも申し込まれてないので、ぼっちです。
というかフォンセは相変わらず王女殿下に付きまとわれています。
遠目から見るとものすっごい無表情で怖いです。
言葉遣いはめちゃくちゃ丁寧で恭しいのに、それさえ彼女を近づけないための防御壁に思えてなりません。
というか、本当にパートナーどうしよう。
パートナーに困っているのはジュリアも同じようで、私の隣で荒んでいます。
「ねぇ、瑠璃。どうして観劇とかが自由参加なのにダンパだけ強制なのかしら。
間違ってるわ。世の中絶対に間違ってる!!」
「だよね。伝統だかなんだか知らないけど、間違ってる!!」
ブスリとした顔で叫ぶ私たちをクラスメイトたちはものすごーーーく生温い視線で見て来ます。憐みの篭った目で私たちを見るな!!
先生はその様子を心底愉しそうに眺めてたりします。
ジュリア、私も一緒に殺っちゃっていいかな?
「ちょ、瑠璃!? いつもの可愛い小動物なお前はどこ行った!? ぎゃああああ!!!」
先生に八つ当たって少しだけスッキリした気分でお昼休みを迎える。
お茶の残りが少ないことに気付いて教室を出た。
ジュリアがついて来てくれるって言ったけど、お茶を買うだけだから教室で待ってもらう。
けれど、すぐに後悔した。
声をかけてくれるのがお姉様方ならまだなんとかかろうじて笑って対応できたのだろうけど、見知らぬ男の先輩となると対応に困る。
それも廊下のど真ん中で呼び止められたりすると視線が一気に集まって……。
「よければ、俺とダンパに参加してくださいませんか!!」
緊張した面持ちで叫ぶようにそう言った恐らく先輩に私はヒクリと頬を引きつらせた。
こんな公衆の面前で公開告白みたいにダンパのパートナーって申し込むの!?
「えっと、ごめんなさい」
「やはり、もうフォンセから申し込まれているのか?」
「いえ、そうじゃなくて」
そう答えた瞬間廊下がざわついた。
諦めかけていた先輩の目が大きく見開かれて光が宿る。
「なら、理由を聞いても?」
「えと、」
フォンセにダメって言われてるから、って言うのは流石にダメだよね。
というか、フォンセに言われてるからって私がそれに従う理由もないよね?
エアルさんだっておじ様だって、上手に踊れてるって言ってくれたし。
私もパートナー探せばいいんだ!!
「先輩、ありがとうございます!
私、頑張ります!」
「は? え、ちょ、瑠璃さん!?」
にっこり笑って上機嫌で私は先輩のもとを去っていった。
目的だったお茶を忘れて帰った教室でジュリアがパチリと目を瞬く。
「瑠璃、何かいいことあった??」
「うん! 知らない先輩にダンパのパートナーの申し込みをされて気づいたの」
「な、何に?」
上機嫌な私はジュリアの顔が強張っているいることになんて気づいていない。
「フォンセの言葉に私が従う必要はないって!
エアルさんとおじ様に上手に踊れてるって言ってもらえたもん!
私だってパートナー探せばいいんだよ!
もし足踏んじゃっても許してくれるような優しい人探す!」
聞き耳を立てていたクラスメイトたちは目を丸くして、顔を引きつらせているジュリアにどうすんの? これという視線を投げかけた。
ジュリアは引きつった顔のまま固まり、ルンルンと上機嫌な瑠璃を呆然と見つめることしかできない。
「………とりあえず、ご飯、食べましょうか」
「うん!!」
ジュリアがこっそりグレンに連絡をいれていることに気付かずに私はニコニコと笑いながらお弁当をつついた。