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夜闇に咲く花  作者: のどか
再会編
8/129

第8話 

 泣いたらしい瑠璃をフォンセから預かってお袋たちのところに連れて行く。

 驚いた親父たちの視線に怯えて俺の腕にしがみついてきた瑠璃は可愛かった。

 なんというか庇護欲を煽る小動物みたいな? 兎に角とにかく俺としてはものすごく癒された。

 お袋の呆れた視線なんて知らない。親父のちょっとうらやましそうな視線なんて知らない。

 可愛い瑠璃に心の中で悶えながら、何か言いたげな親父たちをなだめてフォンセが呼んでいることを告げる。

 親父たちからの探るような視線に気づかないふりをしながら、瑠璃をお袋たちに預けてフォンセの待つ控室へと戻った。

 廊下に出てはじめて俺は分かる範囲で親父たちに詳しい説明をする。

 フォンセがキレていて龍の機嫌も最悪だって話をすると親父はあからさまに顔を顰めた。


「あの子爵の名前がある時点で俺、ものすごーーく嫌な予感しかしないんだけど。

 つか龍哉の機嫌最悪ってなんだよ。どんなフラグだよ」

「……チビをひとりにするんじゃなかったな。

 これだけ人が集まれば顔を合わすことなんてないと思っていたが」


 険しい顔をする二人と俺も同じ表情をしていると思う。

 あの子爵は女好きで有名だ。しかも守備範囲が異様に広い。

 可愛い可愛い瑠璃があんなのと同じ部屋にいたらどうなるかくらい簡単に想像できる。

 だが、瑠璃はそれまでずっと俺たちと一緒にいた。あの子爵でも瑠璃が俺たちの特別―――夜の闇(俺たち)の庇護を受けるものだということくらい分かるだろう。

 瑠璃が向けられる視線に居心地が悪そうにしていたことに気がついても側に居続けたのは、瑠璃が俺たちの庇護を受けるものだと知らしめるためだ。それに気付かない者などこの場に呼ばれている人間にいないはず。その為に開かれた夜会なのだから。

 そう思うも嫌な想像を止めることができないまま、ギャーギャー喚く子爵を回収してフォンセたちが待つ部屋へと急いだ。


「遅ぇ」

「殺してもいいかい?」


 不機嫌マックス。殺気さえ振りまいている二人に迎えられて俺は顔を引きつらせた。

 瑠璃がいなくなった途端これかよ。本当に分かりやすいな。お前ら。

 いや、俺たちが来るまでよく大人しくしていたと思うべきなのか?

 ここは褒めるべきなのか?

 マジギレしているらしい龍哉とフォンセの前で呆れた顔ができるのは親父たちくらいなもので、連行された子爵は顔を真っ青にさせてガタガタ震えている。


「あなたが汚い手で触れようとしたのは僕の大事な娘なんだよ。

 死ぬ覚悟、できてるよね?」


 子爵を見る龍哉の目は冷え切っていて、その視線を向けられているわけでもないのに俺まで恐怖を感じる。もちろんその隣で子爵を睨みつけているフォンセの眼光も負けていない。

 どうやら俺たちの嫌な予感は見事に当たったらしい。


「詳しい話を伺いましょうか。子爵」


 低いイヴェールさんの声に子爵は気絶寸前だ。親父もいつもの人あたりのいい笑みを消し去って子爵をソファーへと促している。

 もちろん、それに俺も加わる。

 大事なお姫様に手を出されたとあっては黙ってられない。

 つかマジで死ぬ覚悟できてんだろうなこのオッサン。楽には死なせてやらねぇぞ。

 そんな俺とフォンセの考えが顔に出ていたのか大人同士の話し合い、ってことで俺たちはすぐに追い出されたんだけどな。あー腹立つ!!

 でもまぁ、親父たちも可愛がってる瑠璃のことになると容赦ないからそこらへんは安心だけど。


 それにしても。


「フォンセ、よく耐えたな」


 俺はしみじみと呟いた。それにフォンセの顔が歪もうと気にしない。


「……うるせぇ」

「そうだよな。瑠璃まで怖がらせてまた接近禁止令なんてだされたらたまったもんじゃねぇもんな。

 瑠璃は今ココにいるんだし。すぐ近くにいるのに会えないなんて耐えられねぇもんな」

「……」


 無言で睨まれてもやめてやらない。

 誰のせいで俺まで瑠璃から引き離されて接近禁止令が出されたと思ってんだ。

 お前がヤンデレよろしく瑠璃に執着しすぎるからだろ。龍哉と張り合ってんじゃねぇよ。

 瑠璃がいない上にお前のお守をして過ごした幼少期は本っ当に長かったんだからな。

 まぁ嫌だったわけじゃないけど。


「瑠璃、また一段と可愛くなったよな」

「……瑠璃はもとから可愛い」

「害虫駆除が大変になるな」

「他の男なんて近づけさせるかよ」

「またお前はそうやってヤンデレを発揮しようとする。次は付き合ってやらねぇからな」


 フォンセの瞳に灯った危ない光にグレンは溜息を吐く。

 お前のその独占欲のせいで瑠璃の交友関係が狭くなるって引き離されたのを忘れたのか。

 ただでさえ龍哉しか目に入ってなくて狭いのにこれ以上は流石に洒落しゃれにならないだろう。

 和の国で普通の学校に行くことによって多少改善されたみたいだけどな。ちゃんと友達もできたみたいだってお袋が言ってたし。


「でも本当によかったな。また一緒にいれるようになって」


 瑠璃は俺たちと一緒に過ごした時間を覚えてない。瑠璃の頭は出会ったころからずっと龍哉で一杯だったから。

 今だって瑠璃の一番は龍哉だろう。だけど、今ならあの夜空の瞳に映ることができる。

 それは俺たちにとって何よりも嬉しいことだ。



 ……だから頼むからこのまま瑠璃の前だけでもそのヤンデレ具合を隠し通してくれよ。

 また巻き添えくらって俺まで瑠璃に接近禁止令を出されたら堪らない。




実は保護者たちから瑠璃に接近禁止令を出されていたふたりです(笑)

グレンはフォンセに巻き込まれたとかいってますけどたぶん違いますw


今回もお付き合いくださりありがとうございました!

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