第53話
「あれ? おちびじゃん。どうしたの?」
どうしようと辺りを見渡しているともぐもぐとフライドポテトを食べてるイケメンに声をかけられました。
「っ、カイチョー??」
声をかけてきたのはこっちの中学に通っていた時の生徒会長だった。
こっちの事情なんて当然知らない会長はやっほーなんて言いながらひらひら手を振っている。
「会長さんだよーってお前、なんでこんなとこいるの? たしか外国いったんじゃなかったけ??」
「里帰りしてるんですよぅ! 従弟と友達とお祭り来たんですけど気づいたらぼっちになってましたぁ」
半泣きで事の次第を説明すると心底憐れんだ目を向けられた。
「わわ、泣くなって。つかその年で迷子……」
「迷子ちがう!」
「あぁわかったわかった。龍哉さんに会えるんだな。こんなとこまで来たかいがあった!
あ、その前に茜待ってるから来るまで待てな」
「デートだから今日は男装なんですね」
だからわざわざこんな遠くまで来てたんだ。
というかお父さん目当て!? 確かに自分から自己紹介しに来てひたすらお父さんに絡んでたけど。彼女さんと一緒にお父さんの追っかけと化してたけど。
迷子の後輩より後輩の父親ですか!?
「男装ってなに。俺、正真正銘男なんだけど」
「カイチョーは性別不明でしょ。女子の方のミスコンで優勝してたじゃないですか」
「当然だろ? 俺の美貌の前にひれ伏せ愚民!」
「海斗、何やってるの? 恥ずかしい。瑠璃ちゃん、他人のふりしなさい。他人のふり」
「茜ちゃんひどい! 俺は迷子の後輩を保護しただけなのに……!!」
「じゃあ龍哉さんに会えるのね!」
この先輩たちは……!! どこまでも自分の欲望に忠実なんだから。
お父さんが好きなの知ってるけど、お父さんの追っかけみたいになりかけてたのもしってるけど、でもせめてお父さん探せばいいんだなとかもうちょっと言い方ってもんがあるんじゃないですか。
そんな瞳キラキラさせてよく迷子になったな、なんて言わないでください。
なりたくてなったわけじゃないです。
「というかお父さん一緒じゃないです」
「なんだとぉ!?」
「なんですって!?」
だから、あからさまに絶望した顔しないでください。
本気で泣きそうです。
「瑠璃ッ!!!」
「おっと、オニーさん。このおちびちゃんと知り合い?」
ぐいっと腕を引かれて会長の背中に隠される。おお、なんかちゃんと先輩っぽいって、フォンセの顔が! オーラが!
「そうだが。アンタは?」
「わぁ! フォンセ待って! この人先輩! 知り合い!!」
「あら、イケメン! 瑠璃ちゃんも隅に置けないわね」
「茜!? 浮気ダメ絶対!」
「うふふ、心配しなくてもあたしは海ちゃん一筋よ」
「ああああ、茜すき! 愛してる!」
「カイチョー。私たちのこと忘れてませんか? というかマジで爆発しろよ」
本気で爆発してほしい。さっきまでのかっこいい会長どこ行った。
というかよくこんな人が多いところで抱き合えるな。
若干すさんだ心で茜さんを抱きしめる会長に冷えた視線を送る。
「んだよ。さっきまで半べそかいてたくせに可愛くないぞ!」
「泣いたのか?」
「泣いてないです! 泣いてないからそんな心配そうな顔しないで」
「だめだよ彼氏さん、ちょーっと目を離すとおちびはトラブルに巻き込まれるんだから」
「どーゆー意味ですか!? トラブルのほとんどはカイチョーが持ってきたものじゃないですか!! というか彼氏じゃないです!」
「はぁ、龍哉さんに会えねぇなら俺たち行くわ。今度は彼氏さんとはぐれんなよ」
「瑠璃ちゃんのことお願いしますね。彼氏さん」
「だから彼氏さんちがう!! フォンセに失礼でしょ!」
はいはいと完全に子ども扱いで私の主張を流した後カイチョーたちは本当にあっさりと去っていた。リア充全開で。爆発しろ!
「瑠璃」
「ごめん、みんなは?」
「9時に広場集合ってことでお前を探してる」
「そんな、」
「安心しろ、ジュリア嬢たちは店を回るついでにお前を探すだけだ。
連絡は入れとくから心配しなくていい」
「ありがとう」
ぎゅっとフォンセの浴衣の袖を握ってお礼を言う。
そのまま頭を引き寄せられてこつんとフォンセの肩におでこがぶつかる。
「無事でよかった」
「フォンセ、」
「さぁ、俺たちも回るぞ。お前のが詳しいんだから案内しろよ」
「うん!」
今度はしっかり手をつないで夜店を回る。
途中で私を探してくれたらしい龍成にも出会ってしっかり怒られて呆れられた。
その後もりんご飴を食べたり、射的屋さんで見かけたぬいぐるみにうっかり可愛いと言ったらフォンセと龍成がとってくれたり、張り合うふたりのせいで射的屋のおじさんが半泣きになったり、ちょっとした人盛りになったところでジュリアとグレンに発見されたりした。
その後、射的にグレンまで参加して私とジュリアはすごいと思うより先に呆れてしまった。
だけど、普段より少しはしゃいで見える姿を見ると誘って良かったなって思う。
おじ様たちのお仕事を手伝っていて私よりもずっと大人びて見えるフォンセたちの年相応に見える姿なんて貴重だもん。
そんなこんなで結局みんな集まったので花火は龍成のとっておきの場所でゆっくりまったり見て帰った。
会長さん、気に入ってます。
女装癖があるわけじゃなくて、似合うから着てるだけだと言い張る
というか単にノリがいいだけ。
ということで今回もお付き合いくださり、ありがとうございました!
次回もよろしくお願いします♪