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夜闇に咲く花  作者: のどか
和の国編
52/129

第51話


 昼間は龍成も学校があるのでガイドブックを見て自分たちで観光します。

 というかお父さんがいるから案内してもらってます。龍成の地元ってことはお父さんの地元でもあるしね。

 面倒そうにしててもしらない。というかこっちでのことを龍成に丸投げしようとしてたなんて! フォンセたちとの相性の悪さ見てまだ龍成任せにしようとしてたなんて!


「すごい……!」

「ジュリア可愛い!!」


 私が向こうを案内してもらった時に瞳をきらめかせたようにジュリアも和の国独特の風景をみて瞳を輝かせる。

 それはフォンセやグレンも同じようで、古都の街並みに感嘆の息を漏らしている。

 どうやらこの風景はお気に召したようだ。


「せっかくだからお茶でも飲んでいこうか」


 お父さんもこういう雰囲気は嫌いじゃないらしくそんなことを言い出した。


「お茶ってお抹茶ですか?」


 いち早く反応したのはジュリアだった。

 今までも十分輝いていたけどさらにキラキラした瞳でお父さんを見つめる。

 お父さんはゆったりと口元を緩めて頷いた。


「私、飲んでみたかったんです! あぁ、でも作法とか……」

「大丈夫。堅苦しいところにはいかないよ」


 そう言って歩き出したお父さんに連れてこられたのは一件のお茶屋さんだった。

 二階の個室を借りた。

 窓から下の通りを見渡せる。反対側の窓からは立派な日本庭園が見えた。


「僕たちしかいないから足も崩してていいよ」


 そう言われて私とジュリアは早々に正座を崩す。

 運ばれてきた和菓子とお抹茶を見てジュリアが残念そうにつぶやいた。


「淹れているところは見れないのね」

「見たいけりゃうちに来いよ。お袋がたしかてられたはずだ」

「僕も点てられるよ。お茶の味が気に入ったら点ててあげよう」

「本当ですか!?」


 喜ぶジュリアを横目に私は心底驚いた顔でお父さんを見ていた。

 ひとり静かにお茶を飲んでいたフォンセの袖をくいくいとひっぱる。


「お父さん、なんだかジュリアに甘くない??」


 あれ誰と聞きたい気持ちを必死に抑えて尋ねると近いと額を叩かれた。ひどい。


「妬きもちか?」

「ううん。割と本気で気味が悪いと思っただけ」

「……。気にいったんだろう。お前の友達だからってのもあるだろうけど」

「??」

「お前がこんなに親しくなるのなんて珍しいんじゃないか?」

「そうかな……そうかも」


 確かに今までこんなに仲良くなった友達はいなかったかも。遊びに行っても一緒に旅行なんてジュリアが初めてだし。

 そもそもお父さんに紹介したのジュリアが初めてかもしれない。

 勝手に自己紹介しに来た人はいたけど。


「お前の大事な人は龍哉にとっても大事なんだよ。お前だってそうだろ?」

「うん!」


 納得したと返事を返すとポンポンと頭を撫でられる。

 そのままフォンセの隣で私もお茶とお菓子をいただくことにした。

二人でまったりとくつろいでいると向こうで盛り上がっていたジュリアとグレンが寄ってきた。

 お父さんはそのまま向こう側の窓から下のお庭を眺めている。


「瑠璃もお茶をいただきに行くでしょう?」


 どうやらすごく楽しみにしているらしいジュリアに苦笑いで頷くと花のような笑みが返ってきた。


「ついでに静奈さんにお着物、着せてもらおうか」

「素敵!!」

「おいおい、またお袋が暴走してしらねぇぞ」


 苦笑いのグレンにフォンセが間違いなく暴走するだろと付け足す。


「その時は二人もちゃーんと巻き込んであげる。ね?」

「ふふ、そうね。お二人にも巻き込まれていただきましょうか」

「おい、アルセも巻き込むぞ」

「親父がいればなんとかなる、といいなぁ……」

「アルセさん静奈さんのおねだりに弱いもんねー」

「わかっててやるからタチ悪ぃんだよ。お袋たちは」

「?」


 きょとんと目を瞬くジュリアにフォンセがうちの母さんもだと付け足す。

 ジュリアはまたパチリと目を瞬いたあと苦笑いをこぼした。


「ふふ、お二人が瑠璃に甘いわけがなんとなくわかった気がします」

「甘いんじゃないよ! フォンセとグレンは過保護なの!!」

「そりゃまぁ、俺たちの大事な大事なお姫様ですから?」

「ちょ! 無視ですか!?」

「うるせぇ。お前は危なっかしいんだよ。」

「そうね。ちょっと目を離すと何をしでかすか」

「ジュリアまでひどい!」

「ふふ、好奇心旺盛な猫みたいだもの」

「そのくせ臆病な子猫みたいなとこもあるからなぁ」

「目が離せない」


 グレンにかきまぜられてぐちゃぐちゃになった髪を直すようにフォンセが手で梳く。

 その一言にとどめをさされた気がした。ドキリと脈打った心臓を誤魔化すように俯いてわざと拗ねた声を出す。


「そ、そんなことないもん」

「ああもう本当に可愛いんだから!」


 むぎゅううっとジュリアに抱きしめられる。むくれた顔のままジュリアの背に腕を回すとさらに強く抱きしめられた。


「ジュリア! 苦しい! ギブ! ギブ!!!!」

「あら、ごめんなさい。あんまり瑠璃が可愛いから」

「もうなんでもいいです。

 それより次はどこに行くの??」

「行きたいところはないのかい?」


 ゆったりと近づいてきたお父さんに4人でガイドブックを広げてここがいい。あそこに行きたいと盛り上がる。と言ってもフォンセとグレンは時々口をはさむくらいで私たちの好きにすればいいというスタンスで見守っていた。ので、もちろん遠慮なく好き勝手に決めさせていただいた。



お久しぶり(?)の更新です。

今回もお付き合いくださってありがとうございました!


次はいよいよお祭りの予定です

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