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夜闇に咲く花  作者: のどか
和の国編
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第48話

「おしゃべりもとっても楽しいけど、そろそろ浴衣をみないとね」

「そうですね。ジュリアちゃんは美人さんだから似合いそうな浴衣がたくさんありますよ」


 ずらりと並べられた浴衣にジュリアが目を瞬いて確認を取るように私を見る。

 私が苦笑いで頷くとジュリアの顔が引きつった。


「瑠璃、あんたももう一回あわせましょ?」

「え!?」

「さぁさ、着替えましょうね」


 笑顔のお二人に勝てるわけもなく私とジュリアは着せ替え人形になりました。


「大人っぽい黒や紺もいいけど、清楚に白もいいわね」

「サクラ柄も綺麗ですけどアサガオやボタンもいいですね」


 迷うー!きゃっきゃと浴衣を選ぶお二人にジュリアと顔を見合わせて苦笑いをこぼす。

 ひとりで着せ替え人形になるよりもずっと楽しかった。

 私たちの好みも取り入れてああじゃない、こうじゃないと言いながら浴衣を選ぶ。

 2着まで絞ったところから事態は膠着状態に突入した。


「うーん、どっちも捨てがたい」

「悩みますね」

「そうですね」

「どっちも素敵ですもんね」


 うーんと悩んでいると静奈さんが何かをひらめいた。

 それと同時にどこかに電話をかけ始める。それを見たエアルさんも何かに気が付いたように電話し始めた。

 わたしとジュリアは用件だけ言ってあっさり電話を切ってしまったお二人の笑顔になんだか良くないものを感じて顔を見合わせる。


「し、静奈様…?」

「やぁね、ジュリアちゃん、様なんてつけなくて静奈って呼んでちょうだい?もしくはお義母さんでもいいわよ」

「私もエアルって呼んでください」


 パチンとジュリアにウィンクした静奈さんとにっこりと笑うエアルさんにジュリアはどう反応していいのか困った顔で私をみたあと、小さく私とおなじように静奈さん、エアルさん、と呼んだ。

 満足した静奈さんが笑顔でジュリアの頭を撫でる。浴衣を選んでる途中に弄った髪型を崩さないようにそっと。

 それを見ていたエアルさんが何かを考えながらじっと私を見た。


「エアルさん?」

「瑠璃ちゃんも私のことママンって呼んでもいいんですよ?」

「え? あ、あの……?」


 そんな期待に満ちた目で見られても。


「瑠璃をこまらせるな」

「あら、早かったですね」


 呆れた声がエアルさんをたしなめる。

 けれどエアルさんは全く動じずに声のした方を振り向いてにっこりと微笑んだ。

 声のした方、部屋の入り口には呆れた顔のフォンセとグレンが入口に立って私たちを見ていた。


「緊急事態っていうから飛んで帰ってきたのに、」


 なにやってんだよ、とグレンが静奈さんを睨む。

 静奈さんもやっぱり涼しい顔でそれを受け流す。


「緊急事態よ! だから手伝いなさい」

「はぁ?」

「手伝うってなにを?」

「ここまでは絞ったんですけど、ここから決まらないんです」

「だから瑠璃とジュリアちゃんをエスコートするあんたたちに選ばせてあげようってわけ」


 喜びなさいと笑う静奈さんにふたりの顔が引きつる。

 帰ってくるんじゃなかったとありありと書いてある顔に静奈さんとエアルさんは笑顔で圧力をかける。


「……俺たちが選んでいいのか?」


 先に諦めたのはフォンセだった。

 浅く息を吐きながら私たちにそう確認を取る。

 私もジュリアも自分じゃ選べないからもちろんと頷く。

 フォンセとグレンは困ったように顔を見合わせて出された浴衣を見る。


「そんなんじゃわからないでしょ」

「もう一度着てみましょうか」

 

 そうして私たちはまた着せ替え人形になる。

 真剣な顔のグレンとフォンセの前に出るのはなんだかとっても恥ずかしかったけど、二人ともそれだけ真剣に選んでくれてるんだと思うと何も言えない。


「髪、弄ってもいい?」


 そう言ってジュリアに近づいてきたグレンはそっとジュリアの髪に触れた。

 隣にいるジュリアの緊張が伝わってくる。ぴしりと固まって動けない気持ちがよくわかる。

 って、フォンセさん?

 どうして近づいてくるんですか。ちょ、私も!?


「ふふ、い光景ね! エアル」

「そうですね!」


 にやにや……否、にこにこと見守る静奈さんとエアルさんに気付かないくらいには私たちは頭の中が真っ白になっていた。


「ん、こんなもんかな」

「こっちの方が映える」


 髪型を変えてしまったグレンと飾りだけ取り換えたフォンセ。

 確かに鏡に映る自分はさっきまでとまた雰囲気が違う気がする。


「ジュリア綺麗!」

「瑠璃も可愛い!」

「お気に召したようで何より」


 きゃっきゃっと喜ぶ私たちにそうおどけて見せたグレンにジュリアは嬉しそうにふわりと微笑んだ。私も緩んだ顔のままフォンセにお礼を言う。


「グレン様、ありがとうございます」

「フォンセもありがとう」


 けれど、何故か二人は目を見開いて固まった。

 不思議そうに首をかしげる私とジュリアにぎこちなく苦笑いをこぼすと困ったような声が小さく何かを呟いた。


「……。これはまた、」

「想像以上にくる、な……」

「ふふふ、ママンに感謝する気になった?」


 悪い顔の静奈さんが二人に絡む。

 エアルさんはにこにこ笑顔でせっかくだから写真を撮りましょうとカメラを構えた。

 どうやら静奈さんにからかわれているらしいふたりを横目にジュリアと一緒に写真を撮ってもらう。

 それにしても異国の民族衣装をこうも着こなすジュリアたちって……。




浴衣選び編でしたー!

次はどうしようかな。


今回もお付き合いくださりありがとうございました!

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