第46話
「……り…るり!瑠璃!!」
「んぅ、もうちょっと…」
「もう! フォンセ様の肩がそんなに寝心地いいの?」
「ぅん…? ジュリア??」
「おはよう。瑠璃」
「おはよ……うわぁ! ごめん!!」
「よく眠れたみたいだな?」
「うぅ、とっても気持ちよかったです」
クツクツと喉で笑うフォンセに体を小さくして答える。
まさか疲れてるフォンセに寄りかかって眠るなんて……。申し訳ない上に恥ずかしすぎる。
「はい! そこいちゃつかない!
たく、時間になっても来ないから来てみたら二人仲良く昼寝してるんだもんなー」
「時間!!」
「大丈夫よ。まだ余裕があるわ」
「へ?」
「いつもどっかでサボってるフォンセが寝過ごさないように前もって待ち合わせてるんだよ」
あくびを漏らすフォンセみてグレンが呆れたように息を吐く。
フォンセは気にしたそぶりもみせずにのそりと立ち上がって手を差し出す。
自然と差し出された手を取るとくいっとひっぱりあげられて私も立ち上がった。
「そろそろ行くぞ。ふたりとも気を引き締めてけよ」
「体育館までは最後の悪あがきとばかりに群がられるからな。離れるなよ」
ひくりと顔を引きつらせた私とジュリアは自然と自分の得物に手を伸ばす。
その様子をみてフォンセとグレンは口の端を釣り上げた。
ルーシーからお宝の入った箱を受け取って歩き出す。
森を抜けるまでは穏やかだったのに、抜けたとたんに群がられる。
フォンセ目当ての人もグレン目当ての人も私たちが目当ての人も混ぜこぜだから余計に怖い。
といっても私とジュリアはたまーーにフォンセたちをかいくぐった人たちの相手だけで済むから楽をさせてもらっている。
それも強い人は大体フォンセとグレンに挑むので私たちは二人が見逃したお宝目当て相手、私たちでも十分な相手だけだ。
「ねらい目は女子二人!」
「お姫様たちには悪いけど、相手してもらうよ」
そんな声が聞こえた瞬間今までよりも格段に重い一撃が襲う。なんとか凌いだものの、この人の相手はきつい、でもきっと楽しい。
私が戦闘モードに切り替わるのを遮るように今まで威嚇の意味以外では銃を使わずに肉弾戦をしていたフォンセが銃を放った。
「そんなに暇なら俺が相手してやるよ」
「俺たち、だろ??」
「フォンセ!」
「グレン様!!」
邪魔するな! という私とジュリアの声はあっさり切り捨てられる。
「お前らには荷が重い」
「ということで交代な」
確かにその通りだけど、でも!
「お祭り、行くんだろ?」
「模擬戦で挑め。お前らならすぐ上がってこれるだろ」
ポンと私とジュリアの頭を撫でて庇うように前に出るフォンセたちにそれ以上文句は言えなかった。
「言ってくれる」
「よっぽどそのお姫様たちを買ってるみたいだね」
面白くないなとその人が呟いたのを合図に激しい戦闘が始まる。
今まで群がっていた人たちもあまりの激しさに加わることもできずに呆然とその様を見つめることしかできないでいた。
それは私たちも同じで認めてもらって嬉しい気持ちと、やる気になってしまった戦闘よくとでもいうのかを持て余しながらもフォンセたちの戦闘に魅入る。
けれど、実力のあるものは我に返ると離れた位置でフォンセたちの戦闘を見守っている私たちに標的を定め始めた。
今、宝箱を持ってるの私とジュリアだし。
「ちょうどいいね」
「えぇ。貴方たちで我慢してあげるわ」
私たち、今、とってもやる気だからと笑うジュリアに負けないくらい私も今は強気な笑みを浮かべているんだろうと思う。
その笑みをみた人たちが攻撃を仕掛けるのをためらうくらいには。
ジュリアと背中を合わせてはるかに多い人数を相手にする。
フォンセたちのように綺麗には戦えないけれど、それでもはじめてにしては十分、息が合ってると思った。
それでも人数には勝てずにいい加減苦しくなってきたころようやくこのサバイバル宝探しの終わりを告げるチャイムが鳴った。
私たちに群がって来ていた人たちは肩を落として攻撃をやめたけれど、フォンセたちの方はすっかり熱くなっちゃって止まらなくなってるみたいだった。
「おい!チャイム鳴っただろ!!」
「えー?聞こえなーい!」
「っいい加減に、しやがれ!!」
「うわっ、今ちょっと本気だったよな?あっぶねー」
「グレン!」
「おう!! いつまでもお姫様たちをまたせらんねぇしな!!」
フォンセの合図にグレンが何かをしかける。
だけど、私たちには何をしたのかよくわからなくて、気が付けばフォンセの銃が、グレンのナイフが相手の首元に押し付けられていた。
「ちっ」
「また負けちゃったー。
チーム戦ならなんとかなるかなーと思ったのになー」
「ふざけんな」
「悪趣味」
「それはどっちだよ。偽の情報流して多くの生徒を混乱に陥れてるくせに」
「ホント、フォンセもグレンツェンも可愛くないよねー。ね、レオちゃん!」
「レオちゃん言うな。
……彼女たちはいいのか?絡まれてるぞ」
「はいはーい!はじめましてお姫様たち。
俺、エルビス・レドモンド!特別にエル先輩って呼んでもいいよ!!」
「いい加減にしろ」
「瑠璃、ジュリア、行くぞ。この人たちに関わってたら日が暮れる」
「俺も行こう」
「レオちゃん冷たい!!俺も行くー!!」
そんなこんなで元気でちょっと怖い先輩とその保護者な先輩の知り合いができました。
キャンキャンと仔犬のように絡んでくるエル先輩をガン無視するフォンセとグレン。
レオ先輩も顔を歪めながらも適当に聞き流している。
その後ろを私とジュリアは少し間をあけて歩いた。
「そういえば、グレンと何かあった?」
呼び方が変わっているというとジュリアは少しだけ困った顔をして少しお話しただけよ。
胡散臭い笑顔でジュリア嬢なんて呼ばれより、今のほうがいいでしょう?とのことだ。
「そういう瑠璃はどうだったのかしら?」
「うぅ、迷子になってたところを保護されてあの状態です」
「迷子!? ごめんね、私がはぐれたりしたからっ!!」
むぎゅううっと抱きしめられてぶんぶんと首を振る。
むしろはぐれたのは私だ。
だって気が付いたところが森……。
私こそごめんねとジュリアを抱きしめられたら久しぶりに気を失う直前まで強く抱きしめられた。
苦しいです。ジュリアさん。
「俺たちが最後みたいだな」
体育館につくとほかの生徒たちはすでにクラスごとに整列していた。
私たちも宝箱をゲットしたことを先生に報告して列にまぎれた。
「まさか、本当にゲットして帰ってくるとは」
「フォンセ様たちと一緒だったの?」
「あれだけ群がられてたのによく無事だったね」
などなどクラスメイト達から撫でられて抱きしめられて撫でられた。
ジュリアはよくも見捨ててくれたわねー!! とクラスメイトの胸ぐらをつかんでガクガクしている。
よっぽど始まりの合図と共に取り囲まれたのがきつかったみたいだ。
そうこうしている間に諸連絡が終わり、授業免除者の名前が読み上げられる。
無事、私とジュリアの名前もあってほっとした。
新キャラ登場です。
一応フォンセとグレンの先輩にあたります。
今回もお付き合いくださりありがとうございました!
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