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夜闇に咲く花  作者: のどか
和の国編
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第44話


 せっかくだから写真! 写真撮りましょう! という静奈さんの一言でなぜか私とフォンセとグレンの撮影会が開始された。

 おじ様たちも静奈さんとエアルさんにねだられて着せられた浴衣姿で何枚か写真を撮られていたけれど断然私たちのほうが多い。

 次の日の学校へ向かう車の中でお互いを労いあうくらいには疲れた。


「ジュリア嬢、誘うんだろ?」

「うん」

「ということは彼女も母さんたちの被害にあうのか」


 遠い目をしたフォンセの一言に私とグレンは思わず無言になる。

 けれどすぐに沈黙に耐えかねたグレンがひきつった笑顔を浮かべて口を開く。


「い、いくらお袋たちでも初対面の相手にそこまでは……」

「昨日のあのテンションを思い出せ」


 フォンセにバッサリと切り捨てられて車の中は再び沈黙が広がった。


「大丈夫だよきっと!

 いろんな浴衣が着られて楽しかったし、女の子はそういうの好きだもん!!」


 無言の二人の視線が痛い。

 だけどこればっかりはジュリアに耐えてもらうしかない。

 私たちじゃ暴走するエアルさんと静奈さんを止められない。


「……ひどけりゃ父さんたちが止めるだろ」

「だな。なんだかんだで親父たちの言うことなら聞くし」

「そうだね」


 おじ様たちがエアルさんたちのおねだりに負けない限り。

 面倒だ、嫌だと言いながらも最終的には浴衣に袖を通したおじ様たちを思い出す。

 お父さんが言った通りおじ様とアルセさんはエアルさんと静奈さんに甘い。

 それは反対になっても同じことが言えるのだけれど。


「なに笑ってんだ?」

「ううん。おじ様たちは本当に仲良しだなと思って」

「バカ夫婦だからな」

子供おれたちの前でいちゃつくのは勘弁してほしいけどな」


 声をそろえて呆れたようにそんなことを言うフォンセとグレンにまた小さく笑う。

 そうこうしている間に学校に着いた。

 いつものようにフォンセのエスコートで教室に送り届けられ、ジュリアとフォンセの保育士と保護者の会話が頭上で繰り広げられるのを聞きながらクラスメイト達に餌付けされる。

 この毎朝の風景に慣れてしまった自分がちょっと悲しい。


「ふふふ、なぁに拗ねてるの瑠璃ちゃん!!」


 むぎゅううっと私を抱きしめるジュリア。


「拗ねてないよ! というかどうしてそんなにご機嫌なの?」

「ご機嫌? 本当にそう見える?」

「じゅ、ジュリア……?」

「瑠璃ちゃん、フォンセ様たちの目をかいくぐって脱走したらしいわね?」

「ど、どうしてそれを……!!」

「ひ・み・つ! それより瑠璃、そこにお座んなさい」

「はいっ! ごめんなさいっ!!」


 まさかのここでもお説教!?

 ジュリアさん、右手が不穏な動きしてます!

 どうして剣に手が伸びてるんですか!?


「フォンセ様たちに頼れないなら私を連れていきなさい。きっと役に立つわ」


 そう言ってジュリアは私の手を握りしめた。

 真摯な瞳と言葉にうるっと来てしまってジュリアに抱き着く。


「デレた! 瑠璃がいいんちょにデレた!?」

「ふん、私を誰だと思ってるの?」

「ジュリア様降臨!!」

「おーい、お前らとっくにチャイム鳴ってんだけど」


 いつの間にか来ていた先生にさっさと席に着けーとだるそうに注意を促されて席に着く。

 どうやらジュリアのお説教中に来ていたけれどあまりの迫力に割り込めなかったらしい。

 それでいいの先生。と思わないでもないけれど剣に手が伸びたジュリアは本当に怖いから仕方ない。


「明後日から例のイベント開始だから。今回は宝探しらしいぞー。

 詳しいことは掲示板に張っとくから読め」


 帰り際にさらっとそんなことを言い残した先生のおかげで教室が沸く。


「はーくん! もんとヒントーーー!!」

「隼人様――――!! マジで頼んます!!」


 群がられる先生を横目にジュリアも気合を入れる。私もお祭りのために頑張ろうと改めて気合を入れた。


「瑠璃もやる気ね?」


 クスリと笑うジュリアにまぁねと笑う。


「絶対に授業免除ゲットしてお祭り行くんだ!」

「お祭り?」

「従弟が誘ってくれたの! それで、あの、よかったらジュリアもどうかな、なんて」


 おずおずと見上げた先には目を見開いて私を凝視するジュリアがいた。

 その反応にわたわたと慌てる私をぎゅうとジュリアが抱きしめる。


「頑張らないとね! 宝探し…!」

「うんっ!!」


 その答えに嬉しくてジュリアを抱きしめ返す。


「微笑ましい光景に割り込んで悪いけど」

「そう思うなら邪魔しないでください!」

「じゃあ模擬線の優秀選手に与えられるヒント、いらねぇんだな?」


ついさっきまでクラスメイトたちに群がられていた先生が意地悪く笑う。


「すみませんでしたー。さっさとください」

「欲しいです」


 棒読みで謝罪するジュリアに先生は何とも言えない顔をしながら私たちの手に何かを乗せた。


「へ?」

「これって」

「閃光弾。宝探しっつってもサバイバルだからな。

 今回のヒントつかご褒美は武器の支給でしたー」


じゃあ頑張れよー。とひらひらと手をふって言ってしまった先生を私とジュリアはポカーンとした表情で見送った。


というかこれ、当日支給でよくないですか?




今回もお付き合いくださりありがとうございます!

評価・お気に入り・拍手、励まされてます><


↓以下ついったーに投下した43話オマケ↓


静奈「ねぇ、アルセ」

エアル「イヴェールさん」

(それぞれお気に入りの浴衣を手にじっと旦那様を見つめる)

アルセ「やだ。着ないぞ」

イヴェール「めんどくせぇ」

静奈・エアル「「……」」(キラキラキラ)

アルセ「うぅ、わかったよ」

イヴェール「……はぁ。満足か」

静奈・エアル(満面の笑みで頷き)

龍哉「ホント嫁には甘いよね」


嫁に甘いイヴェールとアルセでした☆


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