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夜闇に咲く花  作者: のどか
和の国編
43/129

第42話


 勝手に抜け出して心配をかけたお詫びとしてタルトを焼いてます。

 いつかのおじ様のリクエストだったりします。


「どら焼きが食べたい」

「また今度ね」


 ぶーぶー言いながらなぜかキッチンに居座ってつまみ食いをしてるお父さんに呆れながら作業を続ける。

 今回はヨーグルトムースとフルーツのシンプルでサッパリしたものにしてみた。

 うん、おいしそう。


「終わった?」

「うん」

「はい」


 ひと段落ついたのを確認してお父さんが一通の手紙を差し出す。

 宛名を確認して私は目を丸くしてお父さんを見上げる。


「龍成から私に?」

「僕宛のもあったけどね。それは君のだ」

「ふぅん」


 封を切って読み進めること数行。


「これ、本当に龍成から?」

「どうして?」

「だって失礼じゃない。

 すっごくマトモだし、皮肉ってないし、素直だし!」

「……。手紙だと素直になれるのかもね」


 なら心底呆れた顔で私を見るのやめてください。

 お父さんの態度にちょっぴり拗ねつつ手紙に書かれた単語に瞳を輝かせた。


「お父さん! 里帰り! 里帰りしよう!!」

「はぁ?」

「龍成がお祭り誘ってくれた! 花火も上がるんだって!」

「へぇ。だけどあの辺の祭は学校とかぶるんじゃないの?」

「あ、お祭り……」

「たぶん、大丈夫だと思うぜ?」

「グレン!」

「いい匂いにつられて」

「それより大丈夫って本当?」

「特殊科でのみ開催されてるイベントをクリアしたらな!」


 ニカっと笑うグレンに模擬線の時にジュリアが言っていたことを思い出す。

 そういえばジュリアが学園側から夢のようなプレゼントがあるって言ってたな。

 確か、ある条件をクリアしたら授業を受けなくても単位がもらえるとか……。


「思い出した? 今回は3日後にあるみたいだぜ? 明日告知だ」

「そうなんだ。って、どうしてそんなに詳しいの?」

「イベントはもう始まってるんだよ。情報収集なら他の生徒もやってる」

「君ほど握ってはないだろうけどね。もう大体把握してるんだろう?」


 呆れ顔のお父さんにグレンは嬉しそうに龍に褒められた―! と笑った。

 褒めてないと否定するお父さんの声も届かずに笑うグレンを横目に私はお祭りに行くための計画をせっせと計画をたてる。

 まずはイベントの情報収集だよね。

 ヒントみたいなのを貰えるってジュリアが言ってたからそれも当てにして、フォンセとグレンからも仕入れられるだけ情報を仕入れよう。


「瑠璃、すっげー悪い顔になってるぞー?」

「ハッ!」

「クク、焦んなくてもお前にはちゃーんと情報流してやるって」

「嬉しいはずなのに素直に喜べない……。

 なんかすごく負けた気分」

「そんなことないさ。利用できるものは利用すればいい。

 彼らをそんな風に使えるのなんてきっと君だけなんだから」

「そうそ」

「うぅ、ぎりぎりまでグレンたちに頼らない! でも和の国には帰りたいから危なくなったら助けてほしい、な…?」

「あーあー、ずっりぃの。

 そんな可愛くお願いされたら聞かないわけにはいかねぇって。なぁ?」

「そうだな。お姫様のお望みのままに?」

「フォンセ! き、聞いてた…?」


 ククと喉で笑うフォンセに急に恥ずかしくなる。

 どんな顔をしていいかわからずに俯くと大きな手がくしゃりと順番に頭を撫でた。


「お姫様違うもん」


 私の小さな小さな抗議はフォンセとグレンの笑い声にかき消された。


「ねぇ、それよりそろそろ時間じゃないの?」


 ちょっぴり不機嫌になったお父さんの声に時計を見て慌ててお茶の準備をする。

 今日は忙しいおじ様も一緒だから遅れないようにしないと。

 それにタルトはおじ様のリクエストだし!


「タルト……」

「今日はおじ様のリクエストです!!」


 ドヤ顔の私に二人は微妙な顔をしてタルトを睨み付ける。

 それでもさりげなくお茶とタルトを乗せたカートを押す役目をかわってくれるから本当にできた幼馴染だと思う。彼女さんがいないのが不思議なくらいだ。

 お父さんなんてつまみ食いするだけで最初からなにも持つ気なんてなかったのに。


「あら、おいしそうですね!」

「イヴェールのリクエストって……ずるいわ」

「早い者勝ちだ」

「えー?じゃあ瑠璃今度はおじさんのリクエストで!」

「何勝手なこと言ってるわけ。次は僕だよ」


 楽しそうに次のリクエスト権を争奪するお父さんたちに目を瞬く。

 いつの間にかフォンセとグレンまでそこに交じっていて私は嬉しいやら恥ずかしいやらで色づいているだろう頬を隠すように給仕に集中することにした。


「さぁ、瑠璃ちゃんも座って」

「誰のリクエストを叶えるかは瑠璃次第ですものね!」


 エアルさんと静奈さんの言葉にお父さんたちの期待に満ちた視線が一斉に集まる。


「えっと、」

「チビの作りたいもんをつくりゃあいいだろ。」

「おじ様っ……!!」

「チビの料理は美味いからな」


 窮地を救ってくれたおじ様に私はきらきらした視線を向ける。

 それを微笑ましそうに見ていたのはエアルさんだけで、お父さんたちの何とも言えない視線におじ様が勝ち誇ったように笑ったことを私はしらない。

 そうしてお茶会は和やか(?)に始まった。




おはようございます!

今回もお付き合いくださりありがとうございます!

日常のお話にもどってきました

お茶会はもう少し続きます


次回もお付き合いいただけると幸いです^^*


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