表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜闇に咲く花  作者: のどか
再会編
3/129

第3話

 まだお仕事の話があるらしいおじ様とお父さんを残して、私はエアルさんにお屋敷の中を案内してもらう。

 私が使わせてもらう部屋はどうやらエアルさんの趣味ではないらしく、今度可愛い家具や雑貨を見に行きましょうねといってくれた。

 話を聞く限りものすごく少女趣味な部屋になるところだったのを、おじ様と息子のフォンセが止めてくれたらしい。あとでお礼を言おうと決めた。


 フォンセとの記憶はあまりない。というか小さい頃は今以上にお父さんにベッタリだったからフォンセともう一人の幼馴染であるグレンは貴重な存在だったはずなのだけれど、このお屋敷での記憶はやっぱりお父さんにベッタリとくっついているのがほとんどだ。

 おじ様やエアルさんをしっかり覚えているのだって、誕生日やクリスマスなどの行事の度にプレゼントを贈ってくれたり、お仕事で和の国に来たついでに会いに来てくれていたからだ。

 フォンセが黒髪でエアルさんと同じ翡翠の綺麗な瞳をしていたことと、グレンが金髪で可愛い顔をしていたのは覚えている。

 逆に言うならそれ以外覚えていない。あぁ、お父さんが無駄に二人―――特にフォンセを邪険に扱っていたのも覚えている。おじ様たちがよく呆れた顔で私を保護してくれていたから。


「そろそろフォンセたちが帰ってきますね」

「フォンセたちは学校ですか?」

「えぇ。瑠璃ちゃんも同じ学校に行くことになるのでお話を聞くといいですよ」


 自然と零れ落ちた爆弾に私はひくりと頬を引きつらせた。


 フォンセと同じ学校って言った!? 今、エアルさんフォンセと同じ学校って……!!

 嘘でしょ! 私、和の国では普通の公立中学校に行ってたんですけど!

 フォンセと同じってことはお金持ちのお坊ちゃんお嬢さんが通う学校ですよね?

 毎年届くプレゼントから分かるように金銭感覚がぶっ飛んだ人たちが通う学校ですよね?

 ちなみにお父さんもぶっ飛んでるけど、キッチンを私の領域(テリトリー)にしてからは私が家計を握っているので、我が家はごく普通の一般家庭です。

 お父さんの我が儘に対応できるのだって私だけなのでお手伝いさん的な人も雇っていません。雇ったらきっと一日と持たずにやめて行くと思うし。そんな勿体ないことしません!

 誰が何と言おうと、うちはただちょっとお家が大きくて純和風な雰囲気が漂ってるだけの普通の一般家庭だと言い張ります!


「瑠璃ーーーっ!!」


 トリップしていた思考を呼びもどすように明るい声に名前を呼ばれる。

 目を丸くするとエアルさんがクスリと笑った。


「ふふ、帰って来たみたいですね。

 おかえりなさい。フォンセ、グレンくん」

「……ただいま」

「お邪魔してます!」


 柔らかく微笑むエアルさんの視線の先には、黒髪の男の子と金髪の男の子。

 フォンセとグレンだった。


「瑠璃、久しぶりだな。元気にしてたか?」


 金髪の男の子、グレンがニコニコ笑いながら声をかけてくる。

 父親であるアルセさんによく似た王子様フェイスに成長したグレンの輝く様な笑顔が眩しい。

 会っていなかった時間なんて感じさせない笑顔と声に戸惑いながらコクリと頷く。


「……元気、だったよ」

「あ、そっか。瑠璃はまだ小さかったもんな。俺たちのことあんまり覚えてない?」


 しゅんと眉を下げてじっと見つめてくるグレンに胸がチクリと痛む。

 なんだかものすごく悪いことをした気がして仕方ない。


「……気にしなくていい。これからここに住むんだろ?」

「うん、ありがとうフォンセ」


 落ち込んでいるグレンとは対照的にフォンセは静かな声でそう言った。

 その落ち着いた態度に安心して小さく笑うとフォンセが目を見開いて驚いた顔をした。


 私の笑顔はそんなに見るに耐えませんか。

 そりゃ、おじ様たちに似てイケメンに成長した二人からしたら綺麗なものではないかもしれないけど、でも、そこまで酷くないと思うんだ。

 私は美人でも可愛くもないけど普通だよ。たぶん。


「はいはい、ストーップ! 帰って来いフォンセ。

 瑠璃、俺にも可愛い笑顔見せてくれよ」

「………グレンはアルセさんに似たんだね」

「え? どうして急に親父?」

「グレンも天然タラシなんでしょう? 近寄らないで」

「嘘!? 瑠璃ちゃん!? 嘘ーーーっ!?」

「冗談だよ」


 グレンのお父さんであるアルセさんも似たようなリップサービスをよく言ってくれる。

 可愛いとか綺麗だとか、彼氏ができたらお父さんが発狂するだとか。

 本気じゃないと分かっていても私も女の子だからそう言われると嬉しい。

 でも、年が近いグレンに言われるのはちょっと違うというか、これもお国柄なのかもしれない。

 いやでもおじ様もフォンセもそういうこと言わないな。うーん。


「冗談……。

 焦らせんなよ、瑠璃」

「ごめん」

「ふふ、すっかり仲良しですね。

 ここから先はフォンセとグレンくんに任せようかしら」


 微笑ましそうに私たちのやりとりを見ていたエアルさんがそう言ってにっこりと笑う。

 グレンは嬉しそうに任せてくれと笑って、フォンセも無言で頷いた。


 その日は二人にお屋敷の案内の続きをしてもらったり、学校の事を聞いたり、二人がお休みの日に街に連れて行って貰う約束もした。

 喋っていたのはほとんど私とグレンだったけれど、話をふればフォンセも答えてくれたし遊びに行く約束はフォンセからしてくれた。

 新しい生活は思ったよりずっと楽しいものになりそうだ。

 ちなみに二人と出かける話をしたらお父さんの機嫌は最悪になった。

 どうしてだろう……。



娘(瑠璃)に近づく男はもれなく敵認定されます。

上司の息子だろうが幼馴染だろうが関係ありません(笑)


お付き合いくださりありがとうございました^^*

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ