表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜闇に咲く花  作者: のどか
藤の翁編
28/129

第28話

 ジュリアと遊んでから帰るとメッセージを送ると案の定過保護な返事が返ってきた。

 門限の話からはじまって最終的には帰りは迎えに行こうかとまで言って来たながーいグレンに対して、フォンセは気を付けろよ、知らないやつに着いて行くなよと簡潔さの中に過保護さをふんだんに押し込んだものだった。

 要するに二人とも過保護。

 というか二人の中で私は一体何歳いくつなのか切実に問い正したい。


「まぁまぁ、お二人とも瑠璃が心配でたまらないのよ」

「心配って言っても、これ、幼児にする心配じゃない?」

「それだけ瑠璃が可愛くて大切ということよ」


 膨れる私に苦笑いするジュリアと街を歩く。


 あの学校に通っているだけあってジュリアもお金持ちのお嬢様だけれど、幼いころからお転婆でよく家を抜け出していたらしい。

 そのせいか、街の中にも詳しいし護衛も少なくて済む。

 流石に全くなしというわけにはいかなくてそこが気にくわないらしいのだけれど、女の子の上に末っ子だから仕方ないとは思ってるらしい。

 護衛ゼロで出歩けるようになるのが目下の目標らしい。

 目が本気過ぎてご両親と兄弟の安心の為にやめてあげてとは言えなかった。

 本人曰く、フォンセやグレン程ではないけれどジュリアのお姉様やお兄様も過保護らしい。

 ジュリアが剣を扱うのも本当は反対で、説得するのにそれはもう苦労したみたいだ。


「あ、ここ。ディアナ様の絵が飾ってある教会」

「瑠璃はディアナ様が好きなの?」

「うん。やっぱりディアナ様って有名なの?」

「そりゃあね、建国の英雄のおひとりだし」

「じゃあジュリアも好き?」

「えぇ、剣を持つ者として憧れるし尊敬しているわ。だけど、」

「だけど?」

「私は、ニナ様の方が好き」

「ニナ様……?」


 聞き覚えのない名前に首を傾げると苦笑いが返ってくる。


「そうね、瑠璃はまだあまり侯爵家の方々に詳しくないのよね」

「ちょっとずつ教えてもらってはいるんだけどね」


 まだそれほど詳しくない。

 なんだかんだでフォンセたちも忙しいし、私もこっちの生活に慣れるのと学校の勉強の方で四苦八苦してたりする。

 あとはいつも通りそんな私にお構いなしのお父さんのわがままを叶えたり。

 おじ様に何度お父さんを甘やかすなと言われたことか。

 でもしょうがない。私の作った料理をおいしそうに食べるお父さんの姿は好きだもん。


「ニナ様はね、五代目の右腕の奥方よ。

 結婚するまでは五代目の下で、結婚されてからは五代目の奥方の護衛をされていたの」

「へぇ。とっても信頼されてた方なんだね。ニナ様も剣士?」

「ええ。女ながらに剣で身を立てたすごい方よ」

「すごいんだね」

「ディアナ様に憧れる人が多いけれど、私はニナ様の方が好き。

 私もニナ様のように強くなって自分で見つけた主の元で一生お仕えするの」


 キラキラと瞳を輝かせるジュリアは本当にニナ様を敬愛しているのだろう。

 そんなジュリアを見てニナ様に興味を持った私は帰ったら調べてみようと心に決めてうっとりとニナ様について話すジュリアの声に耳を傾けた。


「ふぅ、これだけ喋ると喉が渇くわね。何か買ってくるから待ってて」

「私も行くよ」

「クッキーのお礼よ。待ってて」

「じゃあお言葉に甘えて。ありがとね」


 飲み物を買いに行くジュリアを見送って近くのベンチに腰を下ろす。


 ニナ様か。

 ジュリアがあれだけうっとり話すんだからきっと素敵な女性ひとだったんだろうな。

 絵姿とか残ってないかな。

 おじ様に訊ねてみたら教えてくださるかな。


「お嬢さん、お隣よろしいかな?」


 ジュリアが残してくれた護衛の人が警戒するのに苦笑いを零しながら声をかけてきたお爺さんに返事をする。


「どうぞ」

「おお、ありがとう。その容姿……お嬢さんも和の国出身かい?」

「はい。お爺さんも?」

「あぁ。こちらには息子に会いにきたんだ」

「そうでしたか。息子さんはお仕事で?」

「いつまでたっても血の気の多い馬鹿息子でな。何年も前に家を飛び出しおった」

「まぁ」

「だが、風の噂で孫娘がいると聞いてな」

「それは、おめでとうございます」

「お嬢さんのような子ならいいんだが」

「ふふ、きっと私なんかより素敵なお孫さんですよ」

「ありがとう。お嬢さんのような娘を持つ親は幸せ者だ」

「ありがとうございます」

「それでは私はそろそろ行くかな。

 話相手になってくれてありがとう。優しいお嬢さん」

「いえ、私も楽しかったです。ありがとうございます。お爺さん」


 ちょうどジュリアがくるのが見えた頃、腰をあげたお爺さんを見送る。

 きっと息子さんとお孫さんに会いに行く決心がしたかったのだろう。

 なんとなくほっこりした気持ちでジュリアが来るのを待つ。


「知ってる人?」

「ううん、声をかけられたの」

「……やっぱり連れて行くんだった」


 呆れ顔のジュリアにいくら護衛がいるからって無防備にしすぎない! と叱られ、クレープを奢って機嫌をとる。


「ごめんって。クレープ奢るから機嫌直して。ね?」

「もう、ちっとも反省してないでしょう」


 今度は二人でクレープ屋さんの屋台に並ぶ。喋りながら歩いていたせいか、向かい側から足早に歩いてくる女性にぶつかってしまった。


「すみません!大丈夫ですか?」

「え、えぇ。ありがと……」


 転んでしまった女性に慌てて手を差し出す。顔をあげたその人は酷く驚いた顔で私を凝視した。


「……おじょうさま、」

「あの?」

「あ。あぁ、ごめんなさい。知り合いにとてもよく似ていたものだから」

「いえ、お怪我はありませんか?」

「えぇ、大丈夫よ。私の方こそごめんなさいね。急ぐから失礼するわ」

「お気を付けて」


 急いで走り去る女性を見送ってクレープの屋台の前に並ぶ。美味しいクレープで頭がいっぱいの私たちは走り去ったはずの女性が遠くの物影からこちらをじっと見つめていた事に気がつかなかった。




詰め込み過ぎた気がします^^;


ニナはまたまたブログで公開しているお話の登場キャラです。

ジュリアによってとんでもなく美化されてます(笑) 


今回もお付き合いくださりありがとうございました!

誤字脱字報告、感想などいただけるとものすごく喜びます!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ