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夜闇に咲く花  作者: のどか
藤の翁編
23/129

第23話

「あら、お菓子作りですか?」


 ひょっこり顔を出したエアルさんがふわりと笑う。

 その笑顔に釣られるように微笑みながらコクンと頷いた。


「友達とフォンセたちに」

「まぁ! それはフォンセたちも喜びますね」

「それであの、フォンセって甘いもの大丈夫ですか?」


 クッキーにしようと思うんですけど、と伺うようにエアルさんを見ると何故か口もとを白魚のような手で隠し何かに耐えるようにプルプルと震えている。


「っ、」

「エアルさん……?」

「っ瑠璃ちゃんがあまりに可愛いからっ!!

 フォンセくんの好みならママンが教えちゃいます! なんでも聞いてください!」

「へ? あの、エアルさん……?」


 とんでもない方向に暴走しかけたエアルさんにどうしようかと困っていると、何故かお父さんまでもがひょっこり顔をだした。普段近づきさえしない癖に一体どうしたんだろう。


「何か作るなら和菓子にしなよ。久しぶりに食べたい」

「龍哉くん、瑠璃ちゃんはフォンセたちに作ってくれるんですよ。

 龍哉くんの好みを言ってどうするんですか!」

「は? なにあのクソガキどもに作る気だったの?」


 一気に不機嫌になったお父さんにエアルさんが優しく微笑む。


「そうですよ。龍哉くんもいい加減、娘離れしましょうね」

「意味が分からないんだけど。

 ……生温かい目で見るのやめてくれない?」

「はいはい。邪魔はいけませんよ。私たちは温かい目で子どもたちを見守らないと!」

「ちょ、本当に意味が分からないんだけど! あの子に他意はないよ」

「……和菓子か。ジュリアには良いかもしれない」

「瑠璃ちゃん!?」


 あっさりお父さんに流されそうになっている私にエアルさんがギョッとして声をあげる。

 さっきまでエアルさんに翻弄されていたお父さんはちょっぴり勝ち誇った顔でエアルさんを見た。


「でも、フォンセとグレンがなぁ」

「そうですよ!

 あの子たちは瑠璃ちゃんが作ったものなら何でも喜んで食べますけど。

 なんかこう気持ちの問題が……!」

「和菓子が食べたい」


 一歩も引く気がないお父さんとエアルさんにヒクリと頬を引きつらせる。

 どうしてこうなったんだろう。ただ、いつものお礼と心配かけたお詫びとご褒美を兼ねてお菓子をつくろうと思っただけなのに。


「何してる?」


 珍しくバチバチしてるお父さんとエアルさんの姿を見て呆れたようなおじ様の声に自然と瞳が輝く。天の助けが来た!!

 でもおじ様は基本エアルさんの味方だからな。そう思っている間にもエアルさんがおじ様に事の次第を報告する。

 おじ様はものすごく呆れた顔でお父さんとエアルさんを見た後私を見た。


「チビ、俺はタルトが食いたい」

「え? お、おじ様……?」


 ……結局、和菓子とタルトは今度作ると約束してクッキーを焼くことにした。

 どうしてこんなことになったのか今でもサッパリ分からない。

 クッキーのあまりは当然のようにお父さんたちの手に渡り、最後までそれぞれの食べたいものがいいと言いながらも綺麗に全て平らげていた。

 本当に自由ですね。もう何も言わないよ、私。

 ジュリアには可愛いラッピングをして学校で渡せるように準備する。

 フォンセとグレンはどうしようかと迷ったけれど、どうせなら明日のお出かけの時に渡そうと思って二人のぶんもラッピングした。





 ……よく考えたら男の子と出かけるのなんてはじめてかもしれない。

 幼馴染をそのカウントに入れてもいいのか分からないけど。

 服、どうしよう。


 目が覚めて一番最初に思ったことはそれだった。

 何も考えてなかったけど、どんな格好すればいいのかサッパリ分からない。

 おしゃれしろよ、なんて笑ってたけど私にそんなこと求めないでほしい。

 どうせならいつもキャーキャー言ってる可愛い子か綺麗なお姉さんに言えば良いのに。


「うー、」

「朝から何、唸ってるの。怖いよ」


 サラリと失礼なことを言うお父さんをじとりと睨みながら溜息を吐く。

 もういっそお父さんに聞いてみる……?

 何でもいいんじゃない的な答えしか返ってこない気がする。どうしよう。

 そう言えば手ぶらでこっちに来たからエアルさんたちが用意してくれた服しかない気がする。

 今まではそれで全然よかったけど、今日もそれでもいい?

 そもそも量が多すぎて選ぼうと思っても選べない。

 いつもは適当にとって着てたけど、可愛い格好って何!? どうすればいいの!?


「お困りのようね!」

「私たちに任せてくださいな」


 お父さんの不審者を見る目に耐えながらウンウン唸っているとバンと大きな音を立てて静奈さんとエアルさんが入ってきた。

 嫌な予感しかしない……。

 顔を引きつらせた私に、心底同情するような視線を向けてさっさと逃げたお父さんが全てを物語っている。

 本当にどうしてこうなったんだろう……。




いつもお付き合いくださいりありがとうございます。


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