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夜闇に咲く花  作者: のどか
藤の翁編
18/129

第18話

 楽しかった模擬戦も今日で最終日。

 私もあとひとつ勝てばストレート勝ち……グループ内で1番になる。

 ちなみに昨日時点で優勝が決まったジュリアはご褒美に私とのデートを所望した。

 せっかくのご褒美がそんなことでいいのかわからないけど、お父さんとの放課後デートで満足する私が言える言葉じゃないので遊びに行ったついでに何かプレゼントしようと思う。

 楽しみの様な、ちょっと寂しいような気持ちで学校に行く準備をする。

 それでもやっぱりご褒美の効果が大きいのか、先に玄関に来ていたフォンセにニヤケすぎだと呆れられた。気を付けよう。

 珍しく見送りに来たお父さんが私の名前を呼ぶ。

 振り返った先には、むむむっと悔しそうな顔をするグレンと無言でお父さんを睨みつけているフォンセに、勝ち誇った顔をしてにっこりと微笑むお父さんがいた。


「終わったころに迎えに行くよ」


 お父さんの後ろではアルセさんが「うわっ大人気ねぇ……」と口を引きつらせ、おじ様が呆れ顔で溜息を吐いている。

 今日はアルセさんと静奈さんも朝から来ていて一緒に朝ごはんを食べた。 

 静奈さんが一緒でエアルさんもどこか嬉しそうだったから私も嬉しい。

 呆れているのはおじ様たちじゃなくて、毎朝見送ってくれるエアルさんも、まぁまぁなんて言いながら苦笑いしていて、その隣で静奈さんが相思相愛ねなんて口元を引きつらせている。

 けれど、お父さんと放課後デートの約束に舞い上がっている私はそれを華麗にスル―してお父さんに飛びついた。


「絶対だからね!」

「浮かれて余計な怪我をしないように」

「気を付けます!」


 元気よく返事をした私にお父さんはクスリと笑いながら私の背を押す。

 ちょっぴりご機嫌ななめになりながらも待ってくれているフォンセとグレンの元に戻って車に乗り込んだ。

 ムスッとした二人は、ご機嫌な私の様子に疲れたように溜息を吐いて困ったように笑う。

 しょうがないなとでも言いたげな笑みに、だって嬉しいんだもんと唇を尖らせるとグレンがいいことを思いつたと瞳を輝かせた。


「じゃあさ、俺たちにご褒美ちょうだい?」

「ご褒美?」

「お前は龍哉とデートするんだろ?だったら俺ともデートしろよ」

「俺たちとな。俺 た ち !」

「ちっ、」


 二人とデートかぁ。デート。うーん。

 ジュリアもそうだけどそれはご褒美にならない気がする。

 というか三人で出かける時点でデートじゃないよね。ただ遊びに行くだけだよね。


「ダメ……?」


 こてんと首を傾げながらお伺いを立てるグレンに苦笑いを零す。

 ゴールデンレトリバーに甘えられるとこんな気持ちになるのかな、なんて失礼な事を考えながら不安そうなグレンと無言で返事を待つフォンセを見つめ返す。


「ご褒美なのにそんなのでいいの?」

「いいの! そのかわりちゃーんとおしゃれするんだぞ?」

「龍哉とじゃねぇからって手ぇ抜くなよ?」


 ぱぁあと顔を輝かせたグレンとどことなく嬉しそうなフォンセにこくりと頷く。

 二人のご褒美というより私のご褒美になりそうな気しかしないのに、約束だけでこれだけ喜ばれるとなんだか申し訳ない。

 帰ったら久しぶりにクッキーでも焼こう。甘いのが苦手そうなフォンセのは甘さ控えめにして。














「キャーーーー! 瑠璃カッコイイ! 可愛いのにカッコイイ!!」


 何故か同性の私に黄色い悲鳴をあげるジュリアに応えるように刀を振るう。

 振り下ろされる棍を受け流して相手の懐に飛び込む。

 ハッと息を呑んだ相手の喉元へと刀を突きつけて判定を待った。


「センパイ詐欺っすね。その容姿でこの強さとかマジないわー」


 ドン引きッス。と悔しそうに顔を歪めながら拗ねたようにそう言われても反応に困る。

 すかさず飛びついて来たジュリアが相手の頭を叩いた。……叩いた?


「え? えぇええ!? ジュリア!?」

「悔しかったら精進なさい」

「……先輩、また手合わせしていただけますか?」


 ドヤ顔のジュリアをしれっとスルーした彼はそう言って右手を差し出す。

 私を抱きしめるジュリアの腕に力がこもった気がしたけど私も気付かなかったふりをして差し出された手を握った。


「うん。よろしくお願いします」

「瑠璃先輩って呼んでもいいっすか?」

「いいよ。えっと、」

劉昂明りゅうこうめいッス。昂明って呼んでください」

「昂明くんね」

「っと、いい加減殺されそうなんでこの辺で」

「それが正しい選択ね。昂明」

「うわっ、先輩に呼ばれるとなんか腹立つ。ってマジでヤバそうなんで失礼します」


 しっしと昂明くんを追い払うジュリアと逃げるように去っていく昂明くんに首を傾げる。

 溜息を吐いたジュリアに抗議しようと振り返って固まった。


 どす黒い。何がってフォンセの背負ってる空気が上手く言えないけどものすごくどす黒くて刺々しい。

 生徒たちが怯えてその周りには綺麗に人がいない。

 フォンセの側にいるグレンでさえ、目に見えて分かるくらいに顔を引きつらせてフォンセを宥めているように見える。


「なにあれ?」


 ジュリアにまた溜息を吐かれた。

 いつの間にかこちらに避難してきていた先生は肩を震わせて笑っている。


「なんでもいいからなんとかしてきなさい」

「え。無理」

「いいから」


 ぐいぐいと背中を押されてフォンセの方へと突き飛ばされる。


 ど、どうしろと!?

 そんなにあからさまに助かったって顔されても私、何にもできないよ!グレン!!


「えっと、最終戦、頑張ってね?」

「……」

「ご褒美楽しみにしてるって、私が楽しみにしてたらだめか」

「はぁ……。俺だけ見てろよ」

「うん?」


 ぽんと頭にのせられた大きな手にちゃんとフォンセの応援するよ!と伝えたら困ったように笑われた。

 よくわからないけど機嫌は直ったみたいだからよしとしよう。



新キャラ登場。

昂明くん。急に思い浮かんで急に登場したキャラ。

今後出てくるかは不明←

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