第17話
模擬戦の観戦はすっごく楽しかった。
お父さんに遊ばれる時も体術を織り交ぜたり、近くにあるあれやこれを武器にするけれど、ココはその比じゃない。剣から、槍、ナイフ、針、銃、いろんな武器が見れる。使い手によっては予想もしなかった攻撃パターンが見れてとても勉強になった。殺さなければなんでもありというルールも嬉しい。お父さんに付き合わされる時もそのルールだし、これなら参加してもなんとかなると思う。
「瑠璃、大丈夫か?」
「はい!!」
「さっそく明日から混ざってもらうことになるんだが……」
心配そうな顔で声をかけてきた先生に元気よく答える。むしろちょっと楽しみなくらいだ。
笑顔で頷いた私にまだどこか心配そうな顔をして私の頭を撫でた。
「最初は1年に混ざってEからのスタートになる。……無理はするなよ」
素直に頷いてみたものの、不安な気持ちはそんなになかった。
フォンセやグレンたちのいるSグループに振り分けられたら流石に死ぬと思うけどちらっと見た限りEグループならどうにでもなる。
思った通り次の日、私は勝ち星を挙げた。
それは心配したクラスメイトや先生がポカーンとした顔で固まってしまうくらいにあっさりと。
ジュリアは勝負がついた瞬間乱入してきて私をぎゅうううと抱きしめながら、こんなにか弱い小動物なのに、守ってあげたくなるくらいに可愛いのに、強いなんて! 刀を握った瞬間顔つきが変わるだなんて! なんっっておいしいのっ!!! 凛々しい瑠璃も素敵! 大好きっ! 愛してるっ!! って叫んでいた。恥ずかしい。
遠くからちょっと羨ましそうな顔でこっちを見るのヤメテください。グレンさん。
フォンセも口角あげて笑うのやめよう! かっこいいけどなんか怖いから! なんかよくないこと考えてるの丸分かりだから! 新しい玩具をみつけたみたいな顔してもダメだから! 手合わせなんて死んでもしないからね!
「「瑠璃」」
だから揃って名前を呼ぶんじゃない!!
「よくやった」
「頑張ったな」
ジュリアたちも生温かい目で見守るのヤメテ! タスケテ!!
「ご褒美は何がいい?」
蕩けるような甘い笑みを浮かべて私をみないでください。グレンさん。
背後で上がっている黄色い悲鳴が聞こえませんか?
そういうことは今にも倒れそうな向こうのお嬢さん方に言って差し上げてください。
というかご褒美ってまだ一つ勝っただけなんだけど。
どれだけ弱いと思われてるの私。どれだけ闘えないと思われてるの私。
私もこんなにあっさり勝てるとは思ってなかったけど。
嘘です。
昨日ちらっと見ただけでちょっと余裕がありました。
だってとってもいい笑顔を浮かべたお父さんの相手とじゃ比べ物にならない。
護身術だよ、とか言ってたけどただ私で遊びたいだけだよね。いざやり始めると楽しくなっちゃって私の為に稽古つけてるというよりもお父さんの娯楽だよね。絶対。
「瑠璃?」
「ご褒美はお父さんとデートするからいらないよ?」
催促するように名前を呼ばれたから素直に答えると辺りがしーんと静まりかえりました。
え? どうして? 私なにか可笑しなこと言った?
笑顔のままピシリと固まってしまったグレンから目を逸らして、助けを求めるようにフォンセを見ると大きな溜息を吐かれた。
だからどうして!?
先生はどうしてプルプル震えながら爆笑してるの!? それで笑いを堪えてるつもりなの!?
ジュリアたちもそのものすごく残念な子を見る視線を向けるのやめませんか!?
私、変なこと言ってないよね!? 聞かれたから素直に答えただけだよね!?
「……予想はしてたけどな。
お前にとって龍哉と過ごす時間以上のご褒美なんてないんだろう」
フォンセの呆れた声に首を傾げながらも頷けば更に溜息を吐かれた。
珍しくフォンセが遠い目をしてる。
「龍の馬鹿ーーーっ! 大人気ないぞーーーーっ!!」
突然雄たけびを上げたグレンには同情の視線が集まっていた。
私に向けられていた刺刺しい視線もいつのまにか可哀相な子を見る目に変わっていて、喜んでいいのか悲しんでいいのか分からないままその日は過ぎて行った。
相思相愛親子。
龍哉さんはきっと確信犯です(笑)
今回もお付き合いくださってありがとうございました!