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ヘンゼルと迷いみこ  作者: 絢無晴蘿
ジャック・オ・ランタン
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キャンディーは町で遊びました

第七話

キャンディーは町で遊びました。



木登りにおいかけっこ、かくれんぼに石けり……。

「ストップ! だ、だめです。私、体力がありませんでした!!」

あまりにもはしゃぎすぎて、根を上げてしまいました。

それにしても、子どもってどれだけ元気があるんでしょうか?

もう、私はへとへとで……。

「えー、じゃあ、おみせやさんごっこしよー」

「ちがうよ、こんどはおはなしききたい」

「じゃあ、追いかけっこしようよ」

「さっきしたじゃん!」

「あらあら……」

いつの間にか、遊んでいた子達の数が増えてます。

どうしてかしら?

まあ、楽しそうだしいいかしら。

「でも、もう夕方ですよ? みなさん、帰る時間では?」

空は、綺麗なオレンジ色に変わってました。

明日は晴れかしら?

「まだ、あそぶ!」

「そうだよ、まだ一緒にいようよ」

「でも、暗くなっちゃうわ」

それに、よく考えたら私、ジャック君を探している途中でした。

「だめだよ」

最初に出会った子が、ギュッと袖をひっぱりました。

「だめ、ですか?」

「ずっと、いっしょにあそぼうよ」

「ずっとは無理ですよ。だって、暗くなったら家に帰らなきゃ」

「かえるところなんて、ない」

「え……?」

あたりの空気が変わった気がしました。

どこか暗く、黒く、息苦しい。

「キャンディー!! お前、何やってんだっ!!」

「あ、ジャック君」

町と原っぱの境界に、ジャック君は立っていたました。

怒ってるかしら?

でも、どうやらどこか違うようです。

なぜか、怒っているというより驚いているようでした。

「は、早く離れろ!!」

「え? なにからです?」

「そいつらからだ!!」

「そいつら?」

周りを見ると、一緒に遊んでいた子達が私の周りに集まってジャック君を睨んでました。

誰かが服を引っ張ってます。

「そいつらは、悪霊だ!!」

「え?」

ジャック君が、一瞬真っ白で大きな鎌を出したように見えました。

その鎌は、一瞬のうちに短剣に変わります。

まあ、魔法みたい。

それに気づいた子が数人、抱きついてきました。

まあ、ジャック君ったら、どうしたのかしら?」

「だめ、まだあそぶ」

誰かが、言いました。

「ずっと、ずぅっと……」

「だって、まだたりない」

「だから、おねえちゃん。いっしょにあそぼ」

無邪気な瞳で、彼等は聞いてきます。

誰かが、また服を引っ張りました。

遠くで、ジャック君がなにやら叫んでいます。

「もう、みなさんダメですよ。暗くなったらお家に帰らないと」

「かえるばしょなんてないよ」

いつの間にか、動けなくなっていました。

さっきまでいなかった子たちが何人も増えています。

そして、私の周りを囲んでいました。

「それでも、きっとみなさんのお母さんやお父さんが心配してますよ?」

「おとうさんもおかあさんも、もういないよ」

「だれも、しんぱいなんてしない」

「だから、ずっとあそんでいられる」

いつの間にか、黒い影が辺り一面に広がっていました。

「キャンディー!」

ジャック君がどこか遠くで叫んでいます。

その姿は、いつの間にか視えません。

あら、何時の間に消えちゃったのかしら?

でも声はきこえる。

不思議だわ。

どうしてかしら?

「ねえ、ずっとあそぼう」

みんなが、私の事を見ていました。

「ダメですよ。心配する人がいないとしたら、私が心配します」

「……え?」

「私が、あなた達を心配します。暗くなって小さい子だけで遊ぶなんて、危険です。だから、今日はもうお開きにして、また明日、外が明るくなったら遊びましょう? 明日も明後日も、日は昇るんですから」

「ほんとに?」

「本当です」

「うそじゃない?」

「私、嘘だけはつきませんよ」

「あしたもあそんでくれる?」

「えぇ」

「じゃあ、また、あそんでね」

「ぜったいだよ」

「とおくにいっても」

「わすれないでね」

「やくそくだよ」

「えぇ。約束です。だから、今日はさようなら」



気づくと、原っぱにいました。

隣で、ジャック君がため息をついています。

あら?

みんなはどこ行っちゃったのかしら?

まさか、瞬間移動?!

す、すごいわ……最近の子は、瞬間移動なんて出来るのね。

「バカかお前」

「まあ、ジャック君! バカって言ったら、言った人がバカなんですよ!!」

「あー、はいはい。……とりあえず、無事でよかった」

「……あの子たちは、何処に行ってしまったのですか?」

「逝ったよ」

「……なんでですか?」

「あいつらは死者で、この世に留まる無念が無くなったから」

「……」

……ほんとうは、わかっていました。

あの子たちは、もう死んでいるという事に。

「……じゃあ、あの子たちの無念は、遊びたかったっていう事ですか?」

「ただ、遊びたい。死んでるとか関わらず、みんなと遊んでいたい」

私は、明日も明後日も遊ぼうと約束しました。

だから、みんな満足して逝ってしまったのでしょうか。

また、明日も明後日も遊べるから。

そう、私が約束したから。

「帰るぞ」

「はい……」










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