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ヘンゼルと迷いみこ  作者: 絢無晴蘿
ジャック・オ・ランタン
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キャンディーは町で迷いました

第六話 キャンディーは町で迷いました



あらあら、私、今どこにいるのかしら?

角を曲がると、階段がありました。

そこを下りて進むと、噴水のある広場に出ます。

もちろん、ジャック君はいません。

それにしても面白いわ。

進むたびにどんどん道がわからなくなってくる。

「ジャック君はどこにいるのかしら。迷子になるなって自分で言ってたのに、迷子になっちゃって」

噴水の周りをぐるぐる回って、考え事。

「あら、でもこれって私の方が迷子になったのかしら?」

ぐるぐる回っていると……め、目が回ってきます。

「うぅ、気持ちわるい……」

とりあえず、回るのは危険だわ。

ジャック君にも今度言っておきましょう。

「ふう。そろそろ行きましょうか」

何処へ行けばいいのか分からないけど、とりあえずジャック君を探しましょう。

思い立ったら即実行!

噴水の広場から、戻ってみます。

日は少しずつ傾いています。

日が落ちてしまう前に、ジャック君を探さないと大変だわ。

歩いていくうちに、町の風景は変わっていきます。

先ほどまできれいだった町並みが、どこか寂れてきます。

ああ、きっとこちらは古い町並みなのね。

そう言えば、ジャック君のお家も古い方でした。

と、言う事は、このへんにジャック君のお家があるのかも。

「あら、でも無理だわ……」

そう言えば、どんな家だったのか、覚えてない……。

とりあえず、歩いていきましょう。

そのうち、さっきまで町中だったのに、原っぱに出ていました。

周りを見ると、そこでは子どもたちが遊んでいます。

かけっこやかくれんぼ、いろいろな遊びをしていました。

よく見ていると、ジャック君くらいの子も遊んでいます。

「まあ、私も入れてもらおうかしら」

でも、残念。

そう言えば私、生き霊だったわ。

あの子たちとお話もできない。

「あら?」

そんな彼らを、私と同じように見ている男の子がいました。

近くの木に登って、そこから見ています。

まあ、木登りなんて出来るのね、すごいわ。

私、木登りなんてしたことないもの。

あら?

私、木登りしたことが無かったのね。

そんな事を考えながらその子を見ていると、その木に登っていた子が何かに気づきました。

勢いよく木から飛び降ります。

痛くないのかしら?

無事着地すると、こちらに向かって走ってきます。

「おねえちゃん、あそぼ」

「わたし……ですか?」

あらら?

この子、私が見えるみたいです。

「そうだよ」

その子は、そう言って笑うと手を差し出しました。




「全然見つからねぇ……」

町の中心にある教会の横で、ジャックは呟いた。

「くそ、あのばか……どこに行きやがったんだよ」

そう毒づきながらも、さすがに心配になってくる。

なにしろ、キャンディーは記憶喪失なのだ。

加えてあの性格。

自分に関する以外の事はいろいろ覚えているみたいだが、シェイランドの事は知らなかったみたいだし。

「……あれ、使うか」

と、帰りかけて止まる。

そう言えば、この辺の道はいろいろ変わった。

昔はもっとごちゃごちゃしていたのだが、今はすっきりとしている。

知らない店が立ち並んでいる。

そう言えば、屋敷にこもってから数十年はこの辺まで来た事が無かった気もする。

「……いやいやいや、そりゃないだろ。まさか……オレ……」

迷った?

「……」

いろいろショックだ。

何十年も住んでる町で、迷うなんて……。

すでに、日は暮れ始めている。

とにかく、館に戻ろうと歩きはじめる。

「しょ、しょうがねえよな。だって、仕事だったんだし、外に出る機会も無かったし」

自分でもよく意味のわからない言い訳をしながら道を行く。

そのうち、知っている道にでた。

館はこの近く。

ほっとしたジャックの前に、家路につく子どもたちが走ってきた。


「ほら、くらくなる前に帰らないと」

「えー」

「かあさんが怒るぞ」

「この前夕食ぬきって言われた」

「うそ。ひどい!」

「くらくなるとお化けがでるから、早く帰ってこいって」

「お化け?」

「お化けなんていないよ!」

「ほら、いこっ」


夕日に背を向けて走っていく。

「……お化け、ね」

彼等は気づいているだろうか?

今、擦れ違ったジャックが、化物だってことに。

「……」

ジャックは、無言で足を止めた。

「そういえば、あの辺の原っぱは探してなかったな……」

そう言って、向かう先を少し変更した。









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