裏―話 1と三番目の話
昔の話。
それは、今よりずっと昔の話。
童話の名前を語る兄妹は、優しい魔法使いの家に住むことになりました。
本当に魔法使いは優しかったのですが、昔、絶対に叶わない願いを叶えるために、大きな間違いを犯した魔法使いでした。
そこに悪い人達が現れて、こううそぶきます。
「禁断の術、黄泉還りの研究者殿。いまさら可哀想な兄妹をそだててどうする?
君が殺した人々の数は、百を超える。
君がばらした子どもの数は、百を超える。
それでも、たった一人の女性を生き返らせることの出来なかった愚かな魔法使い。
いまさら、何をしているんだ?」
魔法使いは答えません。
そう、過去に魔法使いはとても大切な人がいました。
しかし、その人は大切な宝物と一緒に遠い場所に逝ってしまいました。
どうにか呼び戻そうとしましたが、でも、どうしても呼び戻す事はできませんでした。
しかし、悪い人は言葉巧みに魔法使いに言い寄ります。
魔法使いの大切な人を、生き返らせてあげようかと。
失った命を、取り戻して上げようかと。
魔法使いは答えません。
おこった悪い人達は、兄妹を殺してしまいました。
「……それにしても酔狂な人ね。まさか、敵である私と情報交換をするなんて……幻の三番目は突拍子もない事をするのね」
「それは、お互い様だと思うが? アイン」
談笑する二人の客。
長い茶髪の女性。そして、白い仮面、性別不明の人間。
どう見ても、可笑しな二人組。
そして、事情を知っている者からすれば、あまりにも怖ろしい組み合わせ。
それを、ため息をつきながら眺めるのは、その店の店主であるレガート・レントだった。
「あの……旦那……?」
白い仮面の人物に向かって、おそるおそる声をかける。
つい先日に殺し合っていた敵同士が、どうしてここにいるのか。しかも、ふつうに話しこんで。
そんな思いを知っているにもかかわらず、白い仮面をつけたその『旦那』とやらは普通に返す。
「……なんだ?」
「なんで……その……いや、なんでもないです。席をはずしときます」
白い仮面に睨まれ……いや、睨まれているのか解らないが視線を向けられて、レガート・レントはその場から引き下がる。
そして、二人だけになった。
「それで、アイン。取引内容を訂正するということだが?」
「えぇ……ちょっと、考えることがあってね。それにしても、なぜ私やフィアではなく、わざわざツェーンなんかの事を調べているの」
「こちらの意地だ」
「そう。本当に、おかしな人ね」
「こちらから言えば、そちらも相当なものだと思うが」
アインと呼ばれる女性は立ちあがると、店から出ようとする。
「……ただ、一つ不可解な事があるのだが」
「なにかしら」
「お前は誰だ?」
可笑しな会話。
今まで名前を知らずに会話をしていたのか。しかし、先ほどから彼は確かに女性を『アイン』と呼んでいた。
「私はアイン……あなただってそう呼んでいたじゃない」
「異端の魔術師ハンス・ロッドの助手であり、妻であったイライザか。それとも――」
「グレーテル。アインと呼ばれる前は、グレーテルと名乗っていたわ」
えっと、超展開です。
すみません。
白い仮面の人物=レガート・レントいわく『旦那』=三番目
アイン=グレーテル(?)




