ジャックとアルト
第四話
ジャックとアルト
わたしは、こう思いました。
世界には、いろんな人がいるもんだな~と。
「ねねね、君なんて言うの? ジャックの友達? 生き霊みたいだけど?!」
諦め顔で、ため息をつくジャック君。
その前では、緑がかった黒髪で灰色の瞳の少年がワクテカと私に質問をして来るのでした。
「私はキャンディーって言うの。ジャック君の保護者よ」
「なんでだ!!」
つっこんでくるジャック君は、もちろん無視。
もう、恥ずかしがり屋なんだから。
「そうか、ジャックの保護者だったのか~」
「おまえら……」
ジャック君を見ると、何やらあきれ顔で額に手をついていました。
「ボクは、アルト!」
「よろしく~」
「……なんで、オレの周りにゃ話を聞かんやつらが多いんだ」
しようです。
「くそっ」
「もう、怒ってばかりだと、玉砕クンみたいに将来ハゲ確定くんになっちゃうぞ!」
「まあ、大変! ところで、玉砕クンってだれですの?」
「玉砕クンは玉砕クン」
「まあ、そうなのですか」
「だ、ま、れ」
ジャック君は、友達が二人はいるようです。
毎日ひきこもり状態の自宅警備員だったのでとても心配だったのですが、心配なかったようですね。
「ところで、キャンディーはどうしてここにいんの?」
「はい。それは話すも涙、聞くも涙の大激闘の末――」
「嘘をでっちあげるな」
「はーい。ちょっと私、記憶喪失になってしまったのです」
「へー……」
なぜか、考え込むアルト君。
どうしたんでしょうか?
「キャンディーっていうんだよね」
「はい」
「そっか……」
「?」
「ちょっと、ジャック。かむかむ」
「は?」
なぜか、二人はひそひそ声でお話。
まあ、私は仲間外れ?
「ひどいわ」
もう、失礼しちゃう!
「おい、ジャック……気をつけろよ」
アルトは、キャンディーに聞こえないように小さな声で囁いた。
「は?」
意味がわからんと睨みつけると、アルトは真顔で言った。
「あの子……やばいぞ」
「お前、知ってんのか?」
「知ってる。てか、君、ボクの職業知らんでしょ」
「知るか」
「まあ、とりあえず、忠告はしとく。彼女は別に大丈夫。でも、後ろにいる奴らは強硬手段で来るかもしれんやつらばっかりだから……まあ、がんばれ」
「は?」
「じゃ、ボク帰るね~」
そんなジャックの言葉に応じることなく、アルトは少し離れた場所にいたキャンディーの元へ行ってしまう。
「は? ちょっとまてよ」
「お、おいっ、どういう意味か言って行け!!」
「ヤダ~。ばいばい、キャンディー! また、遊びに来るから」
「はい! さようならー」
「くんじゃねえよ! 迷惑だ!!」
アルト君はからからと笑うと、姿を消してしまいました。
それにしても、一体何を話していたのかしら。
「どうしたのです?」
「い、いや……」
おかしなジャック君。
なぜか顔をそむけて、そう言うと奥の部屋へと行ってしまいました。
「まあ……」
初めて、ジャック君が動きました。
はい、初めてです。
この部屋から一歩も動かなかったのに、びっくりです。
そう、快挙です。
でも一体どうしたんでしょうか?
「あ、入ってくんなよ」
「はい」
どさくさにまぎれて入ろうと思っていたのに、事前に気づかれました。
無念……。
でも、ほんとうにどうしたのでしょうか。
ちょっと、心配です。
そんな感じで、今日も平和に一日は終わりました。